ダリルさんが町から立つようじゃな。騎士殿?ご愁傷様じゃてな。
憤慨するサーマさんを不思議そうに見ながらの。
「何か変かね?
あの程度の地形を踏破できねば、深層で活動などできぬらしいのだが。
まぁ、師匠に聞いた内容ゆえ、大丈夫かは分からん。
分からんが、聞いた内容だと、深層よりはカナリ緩い場だと思えるのだがね」
うわぁー
皆んな引いておるな。
「ふぅ。
これだから、深層組は。
アタイらの常識なんざぁ、通用しないわさ」
そうサーマさんが告げるとな。
「それは、アタシらの方さね。
アンタも十分、アチラ側だよ」っと、給仕のおばさんに突っ込まれておるな。
まぁ、狩人達も、十分人外じゃてな。
して、食事を終えたダリルさんは、身支度を素早く終えて宿を立つ。
ちなみに兵士は、この町の者達ゆえ、元々、この地にて別れるつもりであった。
じゃが、騎士達は、ダリルさんに同行するつもりであったようじゃな。
なのに町長宅へ泊まったのは、何故じゃ?
まぁ、ダリルさん達が泊まった宿は、狩人達で満室となっておったでのぅ。
同じ宿は無理じゃったじゃろうて。
じゃが、近場の宿へ泊まらぬか?
ダリルさんの動向が分からぬじゃろうにのぅ。
『おそらく、貴族である見栄から、庶民が泊まる宿が耐えられなかったのでしょう』
いやいや、そがぁな些細なことで、ダリルさんとの同行許可も取らずにかえ?
国から命じられとるのでは、ないんかいな?
『貴族ですからねぇ。
ダリルさんが、彼らへ合わせるのが当然と考えてますよ』
はぁ?
昨日の移動で分からなんだのかえ?
完全に無視して移動しておったよな?
『まぁ、女性達を送るために急いだとの認識ですね。
なかなか紳士的な行いだと感心していましたが?』
はい?
頭、大丈夫なのかえ?
沸いとらんかいのぅ?
で、当然、ダリルさんは騎士達に頓着せずに町を立つ訳じゃな。
っか、普通に歩いとるのじゃが、異様に速くないかね?
普通に馬車を追い抜き、騎馬の横を通り過ぎておる。
皆、魔物でも見たような顔をしとるぞえ。
っか、のぅ。
あれ、時速何キロくらい出ておるのじゃ?
車やバイク並みなのじゃが?
『軽く時速60キロですかね?』
はい?
いや、歩いておるのじゃが?
人が出せる速度では無いぞ!
『まぁ、人造種ですからねぇ。
それもダリル殿は、ハイブリッドタイプです。
ハッキリ言って、人とは別種ですから』
おっと。
しばらくは、道なりに進んでおったダリルさんが、道から逸れたの。
っか、曲がらずに真っ直ぐ進んでおる。
先に川が在るのじゃが?
『川幅が結構あり流れも急であるため、流れが緩やかな場所へ橋を架けているみたいです。
道は、そちらへ向かうように曲がっていますね』
なるほどのぅ。
人が渡るには厳しいじゃろうからな。
っと、は?
いや、軽く川を飛び越えたのじゃが?
いや、跳んでとどく距離ではあるまいに、なんと言う身体能力なのじゃ!
『まぁ、ダリル殿ですから。
あれ、あの里の狩人達でも大半は出来ませんから。
深層へ至れる者の力量を、片鱗なりとも見た気分ですね』
人外と思っておったが、ココまでとはのぅ。
ビックリじゃて。
っか、ダリルさんは、脳筋さん?
本当に真っ直ぐ進んでおるのじゃが。
林があろうが、ガレ場であろうが、段差だって関係ない。
いや、段差?
完全に崖なのじゃが?
鏢じゃったか?
いや、縄鏢か。
アレを駆使して、崖や林、森を抜けておるな。
武器というよりは、補助具あつかいか?
で、遠目に見えておった山へとの。
さほど大きな山ではない。
じゃが、山と評される程度にはデカい。
その山は周囲が切り立った崖となっておるのじゃが、これ、掘削されとらんかえ?
『おそらく、過去の文明にと採掘がなされた後かと。
完全に削り取られていますね』
そうじゃよな。
ここまで揃った感じで削られた垂直な崖じゃからのぅ。
っと、ダリルさん?
山を迂回せんのかい?
マシラの如く崖を登らんで貰えんか?
『いえ。
お猿さんでも、アレは無理かと』
そう言う問題かぁっ!?




