早く着き過ぎてしもうたわえ。どう時間を潰すかのう。
どうやって時間を潰そうかと思案しておったら、喫茶店近くへスーツ姿の女性がイライラとな。
で、前を通り過ぎようとしたら、俺が居る気配を感じたのか、チラッとコチラをの。
まぁ、誰でもする行為なので、そのまま通り過ぎようと思ったのだが。
急に俺の顔とスマフォを見比べ始めたんじゃが、ハテ?
明らかに挙動不審になったでな、コチラもギョっと。
したらの。
「失礼ですが、多羅 総司さんでしょうか?」
そう尋ねて来た。
はて?
こんな美人さんに知り合いはおらんのじゃが?
「はいぃ?
だ、誰じゃな?
確かに、俺は多羅じゃが?」
何者じゃっ!
「あ、会社の指示を受け、資料をお持ちしました。
しかし、随分と早いですね?」
ああ、アドバイザーさんが告げておったスタッフさんかぇ。
しかし、こんなに早くかえ?
「いやはや、こがぁに早うから悪いのぅ。
しかし、喫茶店で受け取る話しになっておったハズじゃが?」
そうじゃったよな?
「会社オフィスが近いんです。
夜勤でしたので、私がお持ちしました」
いやいや。
「明らかに、喫茶店が開く一時間前なんじゃが?
早過ぎぬかえ?」
じゃから、喫茶店が開くまで暇を潰そうかと思案しておったのじゃしな。
「それがですね。
会社から、この時間にココへ行くように指示がありまして。
最初は喫茶店での待ち合わせと、なっておりましたのに、急に変更されたんです」
ああ、それでイライラしてたのか。
そらぁ、俺でもイラ付くわ。
「なるほど。
しかし、俺的には助かったかな?
どうやって時間を潰すか、考えておったでなぁ」
そう告げるとな。
「なら、喫茶店が開くまで、ウチのオフィスへ来られますか?
多羅さんは入社が確定していると聞きます。
しかも幹部待遇らしいですよ。
ですから、弊社オフィスの休憩スペースなら立ち入れるかと」
ふむ。
一時間以上、ここら辺で暇を潰すよりはマシかのぅ。
「では、お言葉に甘えますかな」
そう言うことで、彼女が勤める会社へと。
地下鉄に乗り、一駅戻る。
駅から出て、さほど歩かぬ距離にオフィスが入ったビルが。
表側の入り口は、まだ解放されとらんな。
裏口からビル内へと。
エレベーターにて最上階へ。
25階ビルの最上階へと上がると、廊下を移動。
カードにてロックを外した彼女に誘われ、部屋の中へと。
あー
いや、完全に喫茶店じゃね?
まぁ、店員は居らんし、全てが自販機じゃがな。
っか、奥の方には、閉まっておるが店舗らしき場所が。
シャッターが降りておるが、オフィス内の休憩スペースに店舗?
マジか!
「ココは全てがタダですから。
まぁ、社員限定ですが、社員しか入れませんので。
私なんか、3食がココですね」
いや、それは流石に身体的に悪くないかえ?
その後は、彼女。
紫藤 沙織さんと雑談を。
仕事に戻らんで良いのか、気になったのじゃが、俺の相手をするのも仕事とのこと。
実際に上司から指示があったそうな。
会社の規模は日本のみで、ここを本社に支店が複数あるらしい。
ただ、海外にも委託店舗が存在し、海外との対応を行うため、夜勤にて対応が必要なんじゃと。
まぁ、エンドユーザーは限られており、アクセスは予約制ゆえ、拘束時間は短いらしい。
仮眠も十分にとれるため、結構楽な仕事らしいわえ。
まぁ、幻想機に付随する端末が操れることが、採用の必須条件であり、適応者が少ないのが悩みの種らしい。
たまに、端末オペレーターから幻想機への適合者が現れるらしい。
そうなると、給料は上がるし、待遇も良くなるのだとか。
「多羅さんは、幻想機の適合者なんですよね?
羨ましいです。
そんなに、お若いのに、凄いです」
そんなことをな。
おや?
コチラの年齢を知らんのかや?
「いやいや。
若うはないぞえ。
五十九歳じゃし、もう直ぐ定年じゃったゆえな。
まぁ、定年前に退職となってしもうたがな」
そう告げると、驚愕顔でみられてしもうた。
照れるのぅ。




