打った麺を試食せねばっ!っか、なんじゃっ!?この麺はっ!
俺も映像を食べてみたのじゃが、確かに同じ意見とな。
っか、映像を食べる、って、なんたるパワーワードじゃ?
己がことじゃが、訳が分からんて。
しかし、ダリルさんが三割のマル芋粉を混ぜ合わせ打った麺は凄かった。
モチモチ、シコシコ、プルプルでな。
啜ると、滑らかでシナヤカな麺が口内へ。
まるで踊るように分け行って来る。
で、思わず噛むと、直ぐには噛み切れず、歯に抵抗して来よるのじゃ。
で、じゃな。
その弾力に抵抗しつつ嚙み進めるとのぅ。
プツリ。
そう、プツリっと。
その潔く噛み切れた時の快感ときたら、のぅ。
思わず更に噛むと、連鎖した様に麺がプツリ、プツリっと。
それが続くとモチモチ、シコシコっと。
口の中がカーニバル状態に。
最早、噛むのが止められぬ状態に。
恐るべし、ダリル麺!
「い、いや、その。
なんなの、この麺。
反則じゃない?」
パルマさんが、思わずの。
したらダリルさんがの。
「おそらくだが、マル芋粉は雷晶石が発する雷との相性が良いのだろう。
だから、放術師であるパルマさんや俺が練る場合は有用だ。
だが、放術師でなないカーナさんが麺を打つさいには不用な品だ。
逆に味を落とす要因になっているな。
また、マル芋粉の比率を増した場合、麺打ちの際に空気を含ませると味が良くなるみたいだ。
マル芋粉を練り込むと粘りにて固まり易くなる傾向がある。
だが、空気を含ませる事で、程良い弾力となったな」
そう教えるのだが。
「いやいや。
簡単に空気を含ませる、って言ってるけどね。
そんなことが可能なのは、アナタだけですから」
「いや、何事も精進だぞ。
やらぬ間に諦めるのは、如何かと?」
そうダリルさんが告げるのだがな。
『アレ、種族特性だと思われます。
体内雷晶石の質や形状に大きさが、普通とは違う可能性が。
ゆえに、放出できる雷の質や量が違うのでしょう。
パルマさんには無理かと』
だよねー
スーパーハイスペックなダリルさんと、一緒にするのは、如何なものかと。
ん?
これが本当のスパダリ、か?
これで麺はできたゆえ、調理かと思ったのじゃがな。
「一つ、確認したい事がある」
そうダリルさんがな。
「また、なによ?」
パルマさんが、呆れたように。
「うむ。
根菜と肉を、ちと湯へ潜らせいだけだ」
「ああ、煮汁で煮るのね?」
パルマさんは、合点が入ったようだが、カーナさんは意味が分からずクビを捻る。
「そんな物を煮て、どうするのよ?」
呆れたように問う彼女の前で、ダリルさんが同量の食材を三つの釜それぞれへと。
すると、変化は直ぐに現れる。
カーナさんの打った麺を湯がいた釜は、特段変化は現れないのだが、パルマさんが麺を湯がいた釜では、大量の灰汁が。
それだけでも驚きに値するのだが、ダリルさんが麺を湯がいた釜では、灰汁が溢れ出てしまっておる。
いや、灰汁が出すぎではないかえ?
そんな灰汁を除去し食材を取り出すと、ダリルさんの食材からは、なんとも良い香りがのぅ。
まだ調理しとらんのに、実に美味そうじゃっ!
「やはり、マル芋を入れた麺、しかも雷晶石から放った雷に影響された物の煮汁が有効か。
では、コレの灰汁抜きは、どうかな?」
そう告げたダリルさんが、懐から何かを取り出した。
「それは?」
パルマさんが、興味深そうに。
「トチナの実だ」
そう告げるとな、パルマさんが不審気に。
「そんな物、どうするのよ?」っと。
したらな。
「当然、灰汁抜き出来るか確認するのだが?」
そう返されてな。
「えぇっ!」
思わず声を上げておる。
「あのね、トチナって、煮ても焼いても食えない、って言われている代物よ。
本気?」
そうカーナさんがの。
「うむ。
灰汁を抜かねば、そうであろうな。
だが、灰汁を抜けば、優れた食材となる」
「そうなの?」
「うむ。
このトチナの実を粉にし、他の食材と合わせ丸めた兵糧丸は、飲めば三日は食わぬとも活動可能だ。
深層探索には必須な代物なのだよ」
その様な代物もあるのじゃなぁ。
流石は異世界じゃ!




