今宵の宿を決めよう。あ、堅苦しいのは無しで!
戸惑う狩人からサーマさんがね。
「待ちなよ。
アタイ達は連れて来ただけさね。
賊を全員討伐したのも、彼女達を救ったのも、このダリルさね。
感謝するなら、コイツにおし!」
あ、売ったの。
『売りましたね』
そんなサーマさんに苦笑しながら、ダリルさんがな。
「賊駆除中に見掛けたゆえ助けただけだ。
大した労力を払った訳でもない。
ゆえに礼は不用。
それよりも、今宵の宿を取りたいゆえ、通して貰えぬかね?」
その様にな。
いや、クール過ぎんかね?
「なら、ウチの宿はどうかね?
娘を救ってくれたんだ。
お代は要らないよ」
そう肥えた女性がな。
「バカ言っちゃぁいけないよ。
ウチの娘だって、助けて貰ってんだ!
ウチに泊まって貰うに決まってんだろ!」
あー、四人の女性が言い争っておるのだが。
「うぉほん!
この方は深層狩人様である!
国から持て成すよう通達が来ておるゆえ、町長たる私の館へ」
「いや、その様な堅苦しい場は勘弁願おう。
それと、宿代は普通に払わせて貰いたい。
宿は、そうだな。
この辺りでは知られておらぬ料理を出す宿はあるかね?
後学ために食してみたいのだがね」
ダリルさんが、そう告げるとな。
「うーん。
この町で一番珍しいのは、麺料理なんだがねぇ。
肝心な麺を作れる人が居なくなっちまったんだよ。
パルマが居たらねぇ」
そう嘆息するのでな。
「ほぅ。
パルマ殿が居れば良いのかね?」っと。
「ん?
アンタ、パルマを知ってんのかい?」
思わず、っと言う感じでな。
「いや、知るも何も、ほれ、そこに居るではないか」
ダリルさんが親指で軽く指し示す。
「はい?
あ、本当にパルマだよぉぅ」
そう告げると、その女性がパルマさんへ駆け寄る。
「パルマぁ!
アンタ、どこ行ってたんだいっ!
っか、旦那も居なくなったって、騒ぎになってたんだよ!」
「あー、カーナさん。
お久しぶり!
いやね。
旦那が行商隊に参加できることになったってね。
商隊が町から出る直前だったらしくてさぁ、急遽参加することになったんだよ。
だから支度して直ぐに出たから、挨拶もできなくて、ごめんね。
なにせ、私の麺を売り込んだみたいでねぇ。
私が行かないと話しにならないでしょ。
販路を広げる機会って、張り切って参加したんだけどさぁ。
まさか行商隊が賊に襲われるとは思わないじゃない。
行商隊は壊滅するし、旦那は死ぬし。
散々だよ」
いや、そんな呆気らからん、っと言われてもなぁ。
「大変だったんだねぇ。
でも、帰って来れて良かったよ」
そう告げる女性へな。
「実はさ、助けてくれた方々の里へ移住することにしたんだぁ。
旦那も死んだしねぇ。
そこで、心機一転ガンバルつもりさ」
パルマさんが、そう告げると。
「いやいや、それは困るよ!
アンタの麺を待ってる人は多いんだからね!」
そう難色を。
「お待ちでないかい。
パルマを引き止めるのは良いけど、彼女の処遇はどうなるね?
アンタが支援するのかい?」
そうサーマさんが。
「いや、そ、それは・・・」
いくら麺が人気でも、それを扱う店は限られている。
数も、それ程、捌ける訳でもない。
パルマの生活が安定するには、時間が掛かるだろう。
「麺だけどねぇ。
アタイ達の里で作って、それを売りに来る。
それで、どうだい?
パルマには麺を作って貰い、里の食事を豊かにして貰いたいのさね。
里は閉鎖された場所だからねぇ。
どうしても似た感じの食事になるんだよ。
だから麺料理を里で食べられるようにしたい訳さね」
サーマさんの説明を聞き、女性は諦めたみたいだ。
まぁ、里経由ではあるが、麺が入手可能と知ったからだろうが。
「なら決まりさね。
まだ麺は残っているから、それを振る舞おうじゅないかい」
そう告げる女性へダリルさんがな。
「いや、パルマ殿には、麺の作り方を教わる話しになっている。
ゆえに場を貸して貰えぬか?
出来た麺を提供するゆえ」
そのようにな。
確かに以前、そのような事を言っておったな。
本気じゃったのか。




