あるぅ日、森の中、鎧纏ったクマと出会ったぁ、ぎゃぁ!
何が根拠か分からないが、ダリルさんは肉食獣が賊アジト付近へ潜んでいると確信している模様。
そして、それを聞いたリーダーがな。
「ふむ。
ダリルが、そう言うのであれば、そうなのだろう。
で、アチラへ向かわせた連中で大丈夫かね?」っと。
「それは、分からんな。
浅層奥から現れておれば、ちと厳しいやもしれん。
ザーハントの所為で生態系が狂ったみたいなのでな、なんとも言えんのだよ」
あー、あの浅層の森へ肥料を撒いて、植生を改変したヤツね。
アレはなぁ。
俺が聞いたら、良い案だと賛同するだろうし。
だって、森が豊かになれば、皆も潤うって思うじゃん。
まぁ、それは人間の勝手な視線での考えであり、現に自然から手痛いシッペ返しを食らってるんだがな。
「まぁ、中層組ばかりばから遅れは取るまいが、何が現れるか分からんからな。
とりあえずは行って来る」
そう告げた後、荷駄へと。
己の背嚢へ引っ掛けてあった矢筒を外し、持っていた矢筒と交換だな。
「ふむ。
矢を回収してくれたのか。
助かる」
そう告げるとな。
「まぁ、賊が潜んでいた辺りのヤツだけだがな。
しかし、その矢は良いな。
篦の部分が真っ直ぐで安定しそうだ。
何処で?」
「これは師匠からの贈り物でな、おそらくは街の工房作だろう。
街へ行ったら寄る予定ではあるが、この辺りでは手に入らんだろう」
そのようにダリルさんが告げると、リーダーがガッカリしたようにな。
「そうかぁ。
良い品ゆえ、手に入れば、っと思ったのだがな。
流石に街までは行けん。
行商人の品で見掛けたことも無いゆえ、容易くは得られんのだろうなぁ」
実に残念そうだ。
「まぁ、一見さんお断りみたいな工房らしい。
俺は師匠の紹介状を持っているが、普通の行商人では相手にされんだろう。
さて、俺は行くぞ?」
矢筒の交換にて、リーダーと話し込んでしまったダリルさんが告げる。
「おぅ。
引き止める形になって済まなんだな。
では頼む」
そう告げられたダリルさんが走りだした。
いや、物音しないんですが?
っか、森に入ったら見失ったし。
アドバイザーさんが、何時ものサポートを。
赤い光にて輪郭を擬えられたダリルさんの姿が、森に浮き上がる。
これ、アドバイザーさん補助なしでは、全く分からんからなぁ。
しかも速い!
って、をい!
途中から木の上へと。
木と木の間、枝から枝へと飛び移りながら。
いや、飛び移るっうか、普通に走ってる!?
実は狩人ではなく忍者だろっ!
アッと言う間にアジト付近へと。
「ふむ。
やはり出たか。
まぁ、倒せたみたいだが、この辺りのヤツか?」
この辺りってコトは、浅層よりは弱い獣なんだったけ?
えーっと、何処だ?
『コレですね』
アドバイザーさんが、狩られた獲物の輪郭を光で擬ってくれる。
それで、ようやく俺にも視認できたのだがな。
いや、これってさぁ、クマ?
デカくね?
グリズリーやホッキョクグマを動物園で見たことはある。
うん、あの倍はあるんですが?
え?
この巨大なクマが弱い部類なの?
は?
こんなん現れたら、日本なら大パニックだぞ?
そんな獲物付近に狩人の姿はない。
いや、せっかく狩った獲物を放置して、何しとんの?
「ふむ、劣勢か。
加勢した方が良かろうな」
唐突にダリルさんが。
えっとぉ、なに?
『どうやら狩人達が戦っているみたいですね。
相手はクマ?みたいです。
アレが浅層の獣なのでしょうか?』
そう告げたアドバイザーさんが、映像を。
げっ!
なんだぁ、アレ!
クマ?
頭に兜みたいな甲殻が付いており、その甲殻から複数の角が。
腹にも甲殻が有り、腹を守っている。
腕にも甲殻?
手甲やんね。
つか、爪長っ!
へっ?
爪を引っ込めたり伸ばしたりできるんかい!
猫かっ!
足も具足みたいな甲殻が。
まるで簡易鎧を纏ったクマだなっ!
『鎧クマの劣化種ですね。
鎧クマならば、さらに甲殻へ覆われた箇所が増します。
また、深層には、アーマードベアなる種もおり、全身が強固な甲殻に覆われているのだとか』
この世界のクマは化け物かぁっ!?
マジ、コエっーわっ!




