駆除はしたが、護送をね。いや、狩りがしたいって、アータさぁ。
斥候として現れた狩人に女性達の護送を頼まれ、仕方ないように承諾しているな。
「構わぬが、駆除でなく狩りがしたかったのだが。
おそらくは獣が寄ってこよう。
俺にも残しておいてくれぬか?」
そんなん言ってますが?
「出たよ、この狩りバカがっ!
良いか、ダリルさんよぉ。
俺達は里の収穫物を搬送してんだよ。
狩った獲物を含めてなっ!
襲われたから賊を討伐したが、本来は不要な仕事だ。
さらに、何故ココで狩りをせねばならん?
賊に絡まれて、移動が遅れてんだ、余計なことはせんで貰えぬかねぇ?」
そう言われて、ダリルさんが憮然とな。
「それは、そうなのだがな。
おそらくは、この辺りの獣は人肉の味を覚えておるぞ。
討伐するに、越したことはないのでは?」
そう返す。
したらな、不思議そうに狩人が。
「なぜ、そんなことが分かるのかね?」っと。
したらダリルさんが、ため息を吐いてな。
「なぜ、分からん?」っと。
「?」
首を傾げる狩人へ、ダリルさんが呆れたように。
「今から護送する女人達は、当然、1人旅にて襲われた訳ではない。
洞窟内には、被害者の死体は無かった。
そうなると、その被害者はどうなった?
このゴミ屑どもが、穴を掘って埋めるとでも?
行商人に商隊の者として扱えと告げ、理由を告げられ断られておるのに、理解しないようなバカだぞ?
放置したとしか思えんのだが?」
ダリルさんが告げると、狩人の顔が青褪める。
「人肉の味を知った獣は、人を躊躇なく襲う。
その場合の手強さは、通常よりもヤバい。
だから、人を襲った獣は早めに狩るのが定石となるな。
ココは街道からも、さほど離れてはおらん。
早めに狩らぬと被害がでるかもしれん訳か」
「まぁ、そう言うことだな」
へー、人の肉を食った獣って、そんなにヤバいんだね。
『マスターの世界でも、人喰いクマや人喰い虎が問題視されたことがあるハズです。
私は食べれないですし、食べれても食べる気は無いですが、雑食で様々な栄養を得て育つ人は、獣には美味しく感じられるのでは?』
いや、知りたく無い情報なんだが?
で、ダリルさんは諦めて、女性達の護送をな。
一方、ダリルさんに指摘を受けた狩人は、仲間へ状況を説明。
洞窟内の探索を始めたようだ。
なにせ賊の死体がゴロゴロしている。
放っておくと獣が死体に惹かれて入り込み、獣の巣となるだろう。
出来たら埋める方が良いが、最奥には様々な物資が貯められていたそうだ。
破棄するには、余りにも惜しい。
何せ里は深層に近い場所に存在するせいで、物質に乏しい。
最近は行商の者が現れなかったため、色々と不足気味となっていた。
賊が溜め込んでいた物は、討伐者の物となる。
当然、ダリルさんに所有権がある訳だ。
だが、これを搬送した者にも、当然分前が与えられる。
しかもダリルさんは物に固執しないことで知られている。
そのため里長から、ダリルさんから物資を買い取るための金子がリーダーへ預けられていたりする。
まぁ、里長がダリルさんへ交渉済みで、市価の5分の1にて引き取る話しとなっているみたいだが。
ダリルさんとしては、旅立つのに余分な荷は増やしたくない。
だが、金子に対しては余裕を持ちたい所だ。
里としては、金子よりは物質不足を解消することが急務。
この度、村への搬送にて得た金子を含め、物資調達が輸送隊の任命なのだが、市価の5分の1にて物質が調達できれば、購入費も抑えられ、里的には潤う訳だ。
まぁ、賊が物資を溜め込んでいることが前提となるが、キャツらが奪った代物を現金化する術を得ているハズがない。
なにせ、各里で食えなくなった半端者の集まりだ。
伝手を得られるハズがないではないか。
しかも、行商人が現れないと言うことは、十中八九、賊に襲われたに相違ない。
ならば、その荷は?
ゆえに、物資が里へ届くことを、里長は疑ってないみたいだった。




