カリンちゃん、ちと、付与術を使って貰えぬかのう。
カリンちゃんの言葉にダリルさんがの。
「確かに、教わった訳ではなく、自然に出来るようになったのであれば、人に教えるのは難しいか。
ふむ。
カリン。
空晶石は持ってるかね?」
「ん?
たまに付与するから持ってるよ。
でも、どうしてさ?」
不思議そうにの。
したらな。
「いや、付与を見せて貰えぬかとな」
ダリルさんが、そんなことを。
「んん?
見て、どうすんのさ?」
そう応えるカリンちゃんへロゼッタ嬢がの。
「そいやぁ、アタイも見たこと無かったねぇ。
どんな風にしてんだい?
興味あるわね」
「ほっ!
そいっぁ、オレも興味あんぜぇい。
どんな感じでしてんのか、見てみてぇなぁ」
ハゲルさんも同意して告げる。
「え?
単に晶石へ付与補充するだけだよ?
見ても面白くないと思うんだけど?」
カリンちゃんが不思議そうにな。
したらな。
「そりゃぁ、付与が出来るカリンからしたらさ、珍しくないかもしれないよ。
けどさぁ、アタシ達からしたら珍しいんだよ」
「だよなぁ。
ボクも見てみたいかも」
ファマルとガンレートも同意し、シムエルもコクコクと頷いておるな。
「ふーん、そんなもんかなぁ。
まぁ、そう言うことなら、ちょいと付与してみるね。
オッチャン。
そこの樽に溜まってる水、使って良い?」
カリンが、店主のドトマさんへとな。
「ん?
ソイツぁ、色々と処理した後の汚水だぞ。
とても飲用には耐えない代物だ。
別のにしたらどうだね?」
ドトマさんが、困ったようにの。
したらな。
「大丈夫だって。
さっき言ったじゃん。
水を濾過して付与できんだよ。
だから樽には、水分が抜けたゴミが残るだけなんだ。
水気が抜けたら軽くなるからさ。
捨てるのも楽になると思うよ」
「本当かぁ?
まぁ、それなら助かるんだが?」
「オッチャン、信じてねーなぁ」
ジト目でドトマさんを見た後でな。
「まぁ、良いや」
そう言うと、懐から何かをのう。
革袋かや?
開くと、クリスタル状の石をの。
『空晶石と呼ばれる物ですね』
おや?
儂が今迄に見た晶石は、全てが色付きであったが?
『力が抜けた晶石は、全て透明になりますから』
そうなのじゃなぁ。
で、そんな空晶石の一つを袋から取り出しての。
それを掴んだ腕を前へと。
ふへぇ!?
なんじゃっ!??
樽から綺麗な水が、紐のようになりながら立ち上がる。
蛇?ミミズ?いや、チンナゴか?
それが纏まり、ロープのように。
して、それがスルスルと樽から伸びて、カリンちゃんの拳へと。
あれ、晶石へ吸い込まれておらぬか?
うわぁー
これ、魔法か?
『いえ、晶石付与と呼ばれる技術ですね。
カリンさんから雷が放たれ、それに沿うように、水が晶石へ導かれています。
そして、その侭、晶石へ吸収されていますね。
どうも晶石を起点に展開されている亜空間へと、水が送り込まれていますよ。
ふーむ。
あのように、力を晶石へ貯めるのですね。
素晴らしいです』
いやいや。
それを分析して解析しつつ、儂へレクチャーするアドバイザーさんも、大概じゃてな。
異世界の技術は、侮れんてなぁ。
っと、樽の水が枯れたわぇ。
っか、本当にカラカラになっておるわい。
汚物がの、水に溶けておった物は粉末になっておる。
固形物が、粉以外に転がっておるの。
こりゃ、捨てるのは楽になったであろうて。
「ほへぇ〜
本当に水が無くなったよ。
こりゃぁ、参ったねぇ。
しかし、捨てに行くのが楽になったよ。
ありがとな、嬢ちゃん」
「へへへへへっ。
どういたしまして!
どうよ、凄ぇだろ!」
ちょっと得意げじゃな。
なんとも微笑ましい感じじゃて。
そんなカリンちゃんを微笑ましく見ながら、ダリルさんがな。
「なぁ、カリン。
空晶石を一つ譲って欲しいなだがな。
幾らで譲って貰える?」
そんなことをの。
したらカリンちゃんがの。
「はぁ?
空晶石なんて、そこら辺探したら転がってるよ?
お金なんか貰えないって!」
ひょ!
空晶石とは、そがぁな?
マジかぁっ!