街外へ着いたダリルさん。入れてあげてぇーなぁ。
ダリルさんが本気と知り、慌てる衛兵。
その異変に気付いたのか、さらに兵が。
「何事だ」っと。
「た、隊長。
いや、彼が狩人だと言うので、以前に行商人が狩人を語った話しをした所、行商人を始末すると、言い始めまして」
そう伝えるとな。
「ほぅ。
その作法を知ってなさるとは、森奥の里から?」
「ふむ。
話しが分かる方のようだ。
さよう。
旅立ちの儀にて、里から出て参った。
して、その行商人は?」
そう尋ねるとな。
「ご心配無用。
既に処分されておる。
しかし、森奥里から人が来るのは珍しい。
ガウランド殿は、ご健在で?」
「ん?
我、師をご存知で?」
ダリルさんが驚いておるな。
「若い頃に、何度かお会いしておりましてな。
質実剛健と言われる狩人としては、奔放な方でしたなぁ」
「まぁ、あの師匠ですからなぁ。
しかし、残念ながら師は身罷りましてな。
私も師の看病などもあり、旅立ちが二年ほど遅れてしまったのですわ」
そんな話しをしていると、隊長が何かに気付いたようなな。
「はて?
そう言えば、山向こうの田舎町へ、森から出て来た狩人が来ており、深層狩人も混じっておった、と。
その者も、里から旅立たれたと聞きましたな。
ダリル殿以外にも、旅立たれたかたが?」
そう尋ねられてな。
「うむ。
それは俺のことだな」っと。
したら兵達が困惑顔に。
「いやいや。
アソコから、この地までは、速くとも一週間は掛かりますからな。
鳥にて文が届いたのが今朝ですぞ。
流石に無理では?」
困ったように告げるとな。
「うむ、宿の給仕も、そのようなことを言っておったな。
まぁ、あの者が告げるルートならば、そうかもしれぬ。
だが、そんな迂遠なルートは辿らんよ。
ほれ、ソコヘ見える山が在るであろう。
あれを越えれば、直ぐに着く。
こんな最短でルートを使わん手は無かろうに」
そがぁなことを告げるのですがね。
普通の人間には使えなないルートですからねっ!
「ははははっ、お戯れを。
あの山を、ですかな?」
ダリルさんが、冗談を告げたのだと思ったのだろう。
困ったようにな。
「ん?
そんなに変かね?
ああ、山中の森には、中層クラスの獣が出ておったな。
アレでは、普通の者にはキツかろう。
そうそう。
アソコで、鎧熊に突っ掛かられてなぁ。
仕方なく屠ったが、荷が増えて困っておる。
処分したいが、買取しとる所を、教えて貰えぬか?」
そのように告げられ、冗談では無かったっ悟る隊長。
思わず固まっておるな。
まぁ、あの崖山を越えて来たと言われればのう。
『いえ。
あの山は、コチラ側では悪魔の山と呼ばれております。
それは、時折、山から獣が降りて来るからですね。
地元狩人には手に負えず、兵が討伐に駆り出される騒ぎになりますから』
ああ、なるほど。
そんな騒ぎになる山を、単独走破して来たと?
そらぁ、固まるわな。
で、狩った鎧熊の毛皮と甲殻を兵へ見せたことで、ダリルさんが告げたことが事実とな。
隊長さんは、しきりに感心しておったが、兵士達は怯えておるな。
そらぁ、デビルマウンテンを単独走破した強者と分かればのぅ。
『それもですが、御伽話だと思っていた国滅ぼしのガウランドが実在し、その弟子のダリル殿へ自分が詰問していたのですから。
下手したら、自分のせいで国が滅びるとでも、思ったのでは?』
いやいや。
ダリルさんは、そがぁな事で腹を立てたりせんじゃろに。
『いえ、彼らはダリル殿のことを知りませんから。
気の短い狩人は多いですからね』
そがぁなもんかいな。
で、ちと騒動はあったが、無事にダリルさんは街中へとな。
隊長が詫び代わりに、毛皮問屋へと案内してくれるらしいわえ。
それ以外にも、ダリルさんが訪ねたい武器工房への案内ものぅ。
「助かる。
特に毛皮の卸し先に困っておったでな。
なにせ狩人は土地々での仲間意識が高い。
ギルドなどは無いゆえ、余所者が入り込むのが困難と聞くのでな」
ほぅ?
異世界、あるアルな、冒険者ギルドやハンターギルドは無いのかいな?
『冒険者自体が居ませんね。
っか、それ、普通に不審者ですよ?
ありえませんから』
世知辛いなっ!