丘をぉ越えて行こよ。いや、断崖絶壁な山じゃよ?
さて、崖山、っうか、断崖絶壁な山を越えたダリルさんなんじゃが、こちら側は草原でな、小さくはあるが街の外壁が見えておる。
っか、街道は無いが、近くに農園も存在しとるようじゃな。
しかし、まだ午前中なのじゃが?
今日中、っと言っておったが、昼前には街に着きそうじゃぞ。
まぁ、下山したダリルさんは、普通の道を歩いて来たかの如くじゃ。
スタスタと街へと向かっておるな。
っか、いや、速過ぎじゃろがぁっ!
アンタ、本当に人かえっ!
『だから、人造種ですって』
いや、山向こうで歩いていたより、遥かに速いのじゃが?
ありゃぁ、新幹線並みでは、なかろうか?
映像がダリルさんに合わせて動くでな。
近場の景色が、ビュンビュンと過ぎ去るのじゃよ。
完全に、新幹線から窓外を眺めておる気分じゃて。
いや、アレより速くね?
『おそらくですが、アチラでは人の往来があったため加減していたのでしょう。
また、川を跳び越えた先は歩き難い場所でしたので、あまり速く歩けなかったのでしょうね。
コチラは草原にて平地です。
歩き易く、人の往来もないため、普通に歩いているのでしょう』
普通、とは?
で、そんな速さで移動すれば、当然、目的地へは直ぐにのぅ。
外壁へ着くと、小さな門が。
東西南北以外にも、通用門みたいな場所が何ヶ所か在るみたいじゃ。
コチラは住人や警備兵が使用する出入り口じゃろうな。
扉が閉まっており、人の出入りはないのぅ。
ダリルさんは、その扉を無視して外壁沿いに歩いておる。
先程よりは速度を抑えておるが、まぁ自動車で高速を走るかの如くじゃ。
じゃから、速いってばよぉっ!
ほれ、外壁上を巡回しておった兵が、異様に速いダリルさんに気付いて騒ぎ始めたではないか。
まぁ、ダリルさんは、気にも止めておらぬが。
『いえ、アレは、ご自分が原因だと気付いてないのかと』
はぁ?
いや、普通は分かるであろうに。
『おそらくですが、ダリル殿は普通に歩いているつもりです。
マスターは、ご自分が歩いているだけで、警戒されるとお思いですか?』
はぁ?
い、いや。
普通に歩いておったら、そうは思わんなぁ。
『それと同じですよ。
ダリル殿は、ご自分では普通に歩いているつもりです。
まぁ、実際には、異様に速いのですが』
っと、人々が往来する街道が見えて来たのぅ。
ダリルさんは、徐々に速度を落とし街道へと。
ふむ。
人々に合わせて歩いておるな。
普通にも歩けるのじゃなぁ。
ん?
ダリルさんが歩いておった方が騒がしいな。
どうしたんさじゃろか?
『ダリルさんが、猛スピードで移動していましたからね。
猛獣か晶獣の類が出たと思われたのでしょう』
まぁ、人が出せるスピードでは、無かったでのぅ。
さて、門の前かえ?
馬車が入る門の方は待ち行列ができておるな。
アチラは検閲があるのであろう。
人が通る方じゃが、荷物が少ない者は素通りじゃ。
じゃが、行商人のような荷物を持つ者は検閲を受けておる。
ダリルさんも大きな背嚢を背負っておるでな、兵に止められたのだが。
「貴様は行商人では、無さそうだな」っと。
「うむ。
狩人だな。
旅立ちの儀にて、里から出て来たのだ?
で、俺は、なんで止められたのかね?
狩人は検閲不用と聞いておったのだが、間違えかね?」
そう返され、戸惑う衛兵。
したら、彼の同僚が近寄り声をな。
「どうした?
行商人では、無かったのか?」
そう尋ねられ、詰問していた兵が。
「いや、狩人と言っているのだが、荷が多いため判断がな」
「うむ。
狩人を語る行商人も居ると聞くからな」
そう告げると。
「ふむ。
語った行商人について、聞かせて貰えんかね?」
剣呑になったダリルさんがな。
「き、聞いて、どうするつもりかね?」
少し怯えたように。
「師、ガウランドの教えに従い、始末しに行くが?
それで、どこに居るのかね?
早々に始末したい。
ああ、そうそう。
これは、この国で許可された権利のハズ。
有っておったかね?」
はい?
イキナリ物騒だな、をぃっ!




