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「その通りだよ、俺はお前らみたいな鬼に、嬲られてきた側の人間なんだよ」
さっき男に浴びせた虐待行為は全て俺自身が受けてきたものだった。さすがに俺が男だったおかげか、尻を掘られるなんて事まではなかったが、それでもきちんとトラウマになる程度の暴言暴力を幼少期の頃から中学を卒業するまでの間に浴びせられ続けてきた。
死ぬほど辛かった。苦しかった。だが恐怖で支配されたか弱い子供だった自分は、それでも生きていく為には親から離れる事は出来なかった。住まいと食事がある。生きていくのに必要なものが、こんなクソみたいな鬼のような親でも、それを与えてくれる存在は親だけだった。
中学を卒業した頃から、他に女をつくって父親が出ていってくれたおかげで虐待は一気に収まった。主に虐待を行っていたのは父親で、母親は手出しこそしなかったが後ろでにやにやといたぶられる俺を見て笑うだけの存在だった。
「高校生なら金ぐらい自分で稼げ」
そう言い放った母親は家を空け自由奔放さに拍車がかかった。でも俺からすれば最高の環境だった。金は自分で稼ぐ必要はあったが、もう自分を縛るもの支配するものはなくなった。そしてその中で俺は誓った。
――絶対に、親みたいな人間にはならない。
*
だから俺は、神に選ばれたのだ。
俺の親みたいなクソみたいな存在に天誅を下す者として。
「こうなってなきゃ、お前もひょっとしたら俺に轢き殺されてたかもな」
神の理屈でいけば、こいつも対象者だ。ここを生きて出られたらこいつを轢き殺してやってもいいかもしれない。
「そうかもしれないな」
男はそう言いながら俺に近付いた。
そこから先は予想外の展開だった。このままこの男に拷問され殺されるだろうと思っていた俺は、何もされず解放されたのだ。
「殺さなくていいのか?」
そう尋ねると、
「分からなくなった」
と答えた。
俺は生き残った。まだ俺が殺すべき人間が、使命が残っているのかもしれない。
地獄のような少年時代だったが、ようやく神が味方してくれるようになったのかもしれない。
「親は、生きているのか?」
最後に男はそう尋ねた。
「知らねえよ」
それが最後の会話だった。




