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45.龍、人里に降りる

今回普段の倍くらいの文字数になりました! キリがいいとこ見つからないのでそのまま投稿します! 目が疲れたら適宜休憩しつつ読んでください!

「のう、尻が痛いんじゃが」


 ……。


「もっとこう、鬣みたいなの生やしたりできんのかの」


 …………。


「聞いとるかー?」


 うっさいなあ!!

 機嫌悪いんだから黙っててくんない!?

 人の上に無理やり座って揺れるだの尻が痛いだのどの視点から言ってんだよこのババア!!

 しかも落とそうとすると角もげそうなくらい強く握ってくるし!!

 脅しが冗談じゃなかった!!

 本当にもげる!!


 私にだってプライドがある。

 便利な乗り物かなんかみたいな扱いされて黙っていられるわけがない。

 そもそも最初は咥えていこうとしたんだ。

 けど口を広げて近づけた途端、牙を蹴ってサルみたいに駆け上りやがった。

 もちろん振り落とそうとした。

 したんだけど、それより先に落ち着く場所を見つけ、私の角を手すりにしやがった。

 もうそうなったら無理。

 暴れてもゴリラかお前って握力で角握られて落とせないし、なんなら新手のアトラクションかなんかかと思ってるのか楽しそうに笑うもんだから諦めた。

 そんなわけで現在勝手に乗っといて乗り心地に文句を言う聖龍を頭に乗せて飛んでいるわけだ。

 なんでこんなことせにゃならないんだろう……。


「ん、そこでよい。そこの窪地じゃ」


 あ?

 どこ?

 頭の上で聖龍が指した方を見ると、周りを木に囲まれて一段低くなった空き地があった。

 まあまあ広くて離着陸には困らなさそうだ。


「低地じゃから村からは見えん。まあ村の周りは木が生い茂っておるからよほど近づかなくては見えんが、用心するに越したことはあるまい?」


 いや私はむしろどうにかして正体ばらしてやろうか考えてるけど。

 用心もなにもありませんね。


 体を傾けて翼を捻り、窪地に向けて高度を落とす。

 着地するときは小刻みに翼を動かして速度を十分に落とすのが大事。

 じゃないとケガする。

 てかした。

 実体験してる。

 で、聖龍が降りようと角から片手を離したところでぶるんと首を振る。

 流石に聖龍もそれは予想してなかったらしい。

 さっきまでの馬鹿力が嘘みたいに転げ落ちた。

 ちょっと離れたところで尻餅をついて座っている。


「あのなあ……」


 べー。

 人間だったら舌出してた。

 今はそんな器用なことはできないから最大限不機嫌なことが分かるように顔を背ける。


「まあ良い。ほれ、さっさと人に戻れ。その姿で村に近づいたら地獄絵図じゃぞ」


 戻れって……私人じゃないんだけど。

 細かいかもしれんけどなんかモヤっとする。

 けどまあいちいち突っかかる程でもないから大人しく従って人の姿になり、聖龍が持ってきた服に着替える。

 そしたら聖龍が右腕の方の袖を結んでくれた。


「ひらひら鬱陶しいじゃろ」


 あ、ども。

 なんだなんだ突然ポイント稼ぎか?

 ちょっとありがたいけど残念だがそれくらいじゃ機嫌直さんぞ。

 私のご機嫌取りがしたいなら甘い物でも持ってきな!


「着いたら甘いものでも貰おうかの。食うか?」


 食べるー!

 おばあちゃん大好きー!

 私即落ち二コマである。


「探知しとるじゃろ? すぐそこじゃから着いてくるんじゃな」


 まあ私が先に行ってもただの不審者だしね。

 まったく面識のない多数の人間がいるところはねー。

 なんかぼろ出さないか心配になる。

 ……あれ?

 今から行くところって人間多数のところじゃん?

 そんなとこに今から行くの?

 お腹痛くなってきたぞ?


「なんじゃ? どうかしたか?」


 いやあ……その、待ってちゃダメですか……?


「待ってたりとか……」

「ボロを出さんか恐れておるのか? そもそもお主ほとんど喋らんじゃろ。ボロ出すもなにもあるまい」


 そりゃそうだけど……。


「第一お主の靴を調達しに来たんじゃぞ? お主が居なければ話にならん。大人しく着いてくるんじゃな」


 うう……それもそうか……。

 合わない靴持って来られてもあれだしな……。

 行くか……。

 なんかあれだな……お母さんと靴買いに来た子ってこんな気持ちなのかな……したことないから知らんけど……。


「ほれほれさっさと歩く! 歩かんと着かんぞ」


 はぁーい……。



 ─────────────────────



 渋々聖龍に着いて来た村は牧歌的な雰囲気の村だった。

 なんというか、のんびりとしてる。

 魔物なんかもいる世界だし、現にこの辺りを飛んでるときも何体か見かけてるから特別安全な地帯って訳でもなさそうなんだけどな。

 けど、平和そうな村なのになんか嫌な空気が漂っている。

 なんでだろ……。

 ちょっと気持ち悪い。

 もしかしてあれか、魔物除けの魔法でもあるのか。

 だから魔物が近づいて来れないみたいな。

 あれ、けどそれにしては魔力を感じないな?

 どういうこっちゃ?

 いや、魔法じゃないのか?

 これは……匂い?


「気づいたか。お主は近づけるんじゃな」


 聖龍が振り返ってにやりと笑った。

 そりゃ我慢できないほどではないけどさあ……知ってて何も言わなかったの?

 性格悪いぞ。


「ちょっと試してみたくてな? この匂いの元になってるのはワシが調達してきた香草なんじゃ。ここ200年程色々試しておるが忌避する奴らの法則が掴めん。この辺りの魔物どもに固有かと思えば、他の地域の魔物でも嫌う奴はおるんじゃ」


 こいつ……人を勝手に実験台にしやがって……私龍だけど。


「まあそう怒るでない。全ての魔物が嫌う香りを見つけ、それを全ての集落の周りに植える。それができればいずれ人間が魔物の脅威に怯えずに済む時代が来るやもしれん」


 それって私たちが淘汰される側じゃない?

 なんでわざわざ自分が不利になることしてんだこいつ?

 そう言う聖龍は本当に優しく微笑んでいて、そう言うことは憚られたけど。

 ふぅむ……。


「お、魔法使いさん! 今回はちょっと早いんですね! もう飲みつくしたんですか?」


 もやもやしたものを抱えながら聖龍に着いて村の中を歩いていたら、そう声をかけられた。

 振り返ると40くらいの男が近くの家の入口のから体を出し、人の良さそうな笑顔で手を挙げていた。

 聖龍も手を挙げて挨拶を返し、声を張り上げる。


「クールエル! 息災か!」

「おかげさまで! ちょっとは病気にでもならんと仕事がサボれなくて残念でなりませんよ!」

「怠ければ次の村会議で痛い目を見るのはお主じゃぞ。奥方に白い目で見られたくはあるまい?」

「そりゃそうだ!」


 二人は私そっちのけでなんかわからないやり取りをしている。

 知り合いと知らん人が話してると割り込みづらいよね。

 ぼっちあるある。

 まあ知り合いと知り合いでも割り込めないのが私ですが。

 なので私はちょっと引いた位置で村を囲む柵を眺めていた。


 貧相な柵だなー。

 匂いがあるからだろうけど普通の牛でも突破できそうなほどだ。

 守る気あんのか。

 よく見てみると等間隔に革袋が吊り下げられている。

 あれが匂いの発生源か。

 よく見てみたいな。


「んで、そっちの嬢さんは何もんで? ずいぶんな美人さんだけどよ」


 げっ、話題の矛先がこっち向いた!

 そうなる前に抜け出して、私がいない間に聖龍が適当に紹介してくれるのを狙ってたのに!


「あれか。最近拾った弟子じゃ」


 んぐっ。

 いや、間違ってはいない。

 間違ってはいないんだ。

 確かに色々教えてもらおうとは思ってたから間違いではない。

 むしろ言質を取って渋られてもどうにかできるようにはなった。

 だけどなんか釈然としないのはなんでだろうな?


「誰が捨てたかわしの家の前で膝を抱えっとたからの。忍びなくて放っておけなかったわ。今では多少見られるようにはなったが初めは服は有って無いようなもの、泥まみれで痩せこけてギラギラ光る目で睨みつけてくるような奴でのう。洗ってやろうというのに何度噛みつかれたかわからん」


 んがう。

 そこまでじゃなかったじゃろがい。

 むしろ噛みつこうとしても全部避けたろあんた。


「こんなところでですかい? はー、村の人間じゃあねえもんなあ。その、腕も最初っから?」

「うむ。不思議なこともあるもんじゃな」

「世の中ってのはなにがあるもんかわからないもんですねえ」


 白々しいやつ。

 よくもまあ顔色も変えずに嘘がつけるもんだ。

 私もやってた?

 記憶にございません。

 夢でも見てたんじゃないですか?


「ん、そうじゃ。ほれ、魔物除けの香草じゃ。まだしばらくは持つじゃろうが、まあついでじゃな。それと適当な薬草も摘んできたぞ」

「おっ、ありがてえ。後でせがれにでも持って行かせるか」

「代わりにあれが履ける靴をくれんかの。編み靴がよい。服はどうにかなっても靴は大きさの合うものが無いんじゃ」

「あー、残ってたかなあ。ちょっと待っててくださいよ」


 そう言うと男は家の中に引っ込んでいった。

 その間に聖龍の近くに寄ると、背伸びして耳打ちしてくる。


「クールエルはな、この村の細工物を一手に引き受けておる。なにか入用ならまず声をかけてみると良いじゃろう」


 ほう。

 まあ一人で来ることなんかないだろうからその必要もないだろうけど。


「お待たせしました。足に合えばいいんですがね」


 そんなしないうちに男が何足か手にして戻ってきた。

 見た目はあれだ、グラディエーターサンダルとかってやつ?

 詳しくないからわからないけどなんかそんな感じだ。

 へー。

 私履き方知らんが?

 これ普通に履いていのか?

 スニーカーくらいしか知らない。

 それか普通のサンダル持ってこい。


「おお、助かるの」

「余りもんだから合うのがねえかもしれねえですけどね」


 男が椅子を持ってきてちょいちょいと手招きをしたので大人しく座る。

 その間に男はどこかへ行った。

 あれ?

 どこ行った?


「水汲みにでもいったんじゃろ。泥だらけの足で履かせるわけにもいかん」


 あーそういう事か。

 言われて足の裏を見てみる。

 わーお、すっごい泥まみれ。

 まさかこうはならんやろって思ってたのに。

 なっとるやろがい!!

 あれ?

 てかわざわざ水汲みに行かなくても、そんなの魔法でどうにかなったんじゃない?


「魔法」

「んむ?」

「使えないの?」

「ん? ああ、水魔法で流せないのかということじゃな?」


 聖龍の問いに頷く。


「もちろん使える。じゃが、そんなもの少し歩いて井戸から汲み上げれば済むことじゃろ? 魔法を使うまでもあるまいよ」

「わざわざ汲む必要がない」

「あ奴らにとって水とは作り出すものではなく、掘った井戸から、川から、汲み上げるものじゃ。魔法を扱うものとは視点が違うんじゃよ。あ奴らが魔法ありきの生活に慣れてしまっては敵わんからの」


 ふーん。

 そういうもんか。

 なにかの拍子に聖龍が居なくなったら村人が困るからってか。

 まあ私にはわからん。

 便利なんだから使えばいいのに。

 なんてしてる間に男が帰ってきた。


「井戸のところで魔法使いさんが弟子を取ったって言ったらよ、これ持ってけって」


 そう言って男が小さな革袋を聖龍に手渡した。


「ほれ、嬢ちゃんも」


 私も渡された。

 なんだこれ。

 開け口の紐を引っ張って開け、太ももに置いて中身を取り出す。

 それは黒くて小さい、皺くちゃの粒だった。

 これってもしかして……。


「干しブドウか。あとで貰おうと思ってたんじゃ」


 干しブドウ!

 甘いやつ!

 早速口に放り込んだ。

 あまーい!

 そのあとも次々口に放り込んで、ふと気づいたら聖龍が驚いたような顔で私を見ていた。

 なんか男も似たような顔をしてる。

 あの、なに?


「お主表情変わるんか」


 変わるわ。

 私をなんだと思ってるんだ。

 美味しいもの食べたらそりゃ頬も緩むだろうが。

 むしろ変わらない奴おるんか?

 なあおい?


「綺麗な顔してんだからずっと笑ってりゃいいのによ」


 文句は私の表情筋に行ってくれ。

 多分こいつ死んでる。

 甘味を摂取して生き返るクマムシみたいな生態してるんじゃねえかな。


「んじゃ、やっていきますか。桶に足つっこんでいいんで泥落としてくだせえ」


 言われた通り桶に足を入れて指の間に付いてる泥までしっかりこそぎ落とす。

 こんなもんかな。

 あらかた落としたので桶から上げ、土が付かないように空中に浮かして維持する。

 私の足と持ってきた靴を見比べてた男が肩を竦めた。


「足小っちえなあ。合うのねえですよこれ」

「ならば一先ず今あるもので見繕ってくれるかの。締めればどうにかなるじゃろ」

「じゃあ次来たときまでに合うの作っておきますよ」

「助かるの。助かるついでに酒もくれんか。それもなかなかの酒飲みじゃったからな。このままではあっという間に飲みつくしてしまう」


 男から靴を受け取って履いてみる。

 ふーん。

 こういうの履くの初めてだけど結構悪くない。

 サイズは、まあちょっと大きいけど聖龍の言う通り締めれば固定はできるからそこまで問題じゃないし。


「あー、酒はちょっとなあ……いつものやつでしょう?」

「うむ。なんじゃ、品切れかの?」


 立ち上がって調子を確かめてみる。

 ほうほう。

 軽いし動きやすいのはいいな。

 案外足首も曲がるし履いてて違和感は無し。


「どうも下の方で厄介な魔物が出たみたいで。いつもの商人さんが立ち往生してるらしいです」

「なんと」


 一人でいろいろやってる間になんか不穏な話題になって来たな。

 で、なに?

 魔物?


「どんなやつかは分かっておるのか?」

「さあ……そこまでは上がってきてないですからねえ……」

「ふぅむ……」


 魔物ねえ……。

 それならそのうち傭兵なり騎士なりが倒しに来るんじゃないかな?

 まものかってやくめでしょ。


「ならばあれじゃな、わしらがどうにかしてくるから、引き換えにいつもより酒の配分を多くしてもらう。これでどうじゃ?」


 聖龍がそう出るのはある程度予想通りだったんだろう。

 男は大した反応も見せずに言った。


「おっ、ありがてえ。長に聞かなきゃわかんねえけど、まあ断りはせんでしょう」

「決まりじゃな」


 どうやら聖龍がなんとかする方向で話が纏まったらしい。

 頑張れー。

 私はちょっと思いついたことがあるから試したいんだよね。

 だからパス。

 ワシらって言ってた気がするけどパスったらパス。


「のう、お主やってみるか?」


 絶対言われると思った!

 そんな気はしてたんだよ!

 やだっての!

 やって私になんの得があるんだそれ!


「靴、貰ったじゃろ?」


 うぐぐ……貰った……けど……。


「山奥の村にツケはないぞ? 物々交換じゃ。お主は靴の返しに何を差し出すのじゃ?」


 ん……ぐ……。


「……被害は?」

「は?」

「人的被害。物的被害。どのくらい?」


 これホントに大事。

 私がどうして聖龍のところにいるか?

 それはお母さんが殺されたからだ。

 何か人を傷つけてではなく、何もしてないのにも関わらず、だ。

 だから私は絶対に何もしていない生き物を傷つけない。

 食事については、それをしないと私が飢えて死ぬだけだから諦めてるけど、今回は殺さなくても私に害がない。

 靴のお返しにしても、それなら納得できる理由が欲しい。

 たとえば、ここの村の人が殺されてるとか。

 それなら仇討で納得できる。


「今のところは、特になんも聞いてねえけど……。商人さんが不安だから上がってこれないってくらいだなあ」


 ないのか。

 ないんだな。


「じゃあしない」

「ふむ?」

「私にはできない。払えるものもない。対価を寄越せというのなら靴も返す」

「どうしたんじゃ急に」

「何もしてないなら私は何もしない」

「これからするかもしれんぞ?」

「私もこれからするかもしれない。殺す?」

「相手は魔物じゃ」

「何の違いが?」


 急変した空気に男は着いていけずに不安そうに私と聖龍の顔に視線を向けた。


 魔物だって子供がいるだろう。

 伴侶もいるだろう。

 私みたいなのを私が増やしていいわけないんだよ。


「子供のような真似は止めよ。主のそれは屁理屈じゃ。魔物は人よりも強く、放置しておけば必ず襲われる。ならば人は危害が加わる前に魔物を排するしかない。分かるじゃろう」



 聖龍が珍しく、と言ってもまだ二日目だけど、私が襲った時よりも険しい顔をしている。


 分かるさ。

 もちろん分かるとも。

 私だって元人間だからな。

 そういうのは前世で嫌というほど見てきたさ。

 でも今は違う。

 私は龍だ。

 人ではないものとして、人にお母さんを殺されたんだ。

 そんな人間の理屈、分かりたくもない。


「貴女はどっちなの?」


 人なのか、龍なのか。

 男には分からない、私と聖龍だけに通じる問いかけ。

 聖龍は悩むように眉を寄せた後、諦めて息を大きく息を吐いた。


「分かった分かった。ならばワシとお主で確認に行き、襲われたら相手をする。それなら文句はないじゃろう」


 まあそれなら……人が近づいたら襲われるって証明にはなるか。

 ならいいか。

 もしそれで襲われなかったら?

 私は手出ししないで帰るし、帰りに靴も返す。

 金輪際村には近づかない。

 それで行こう。


「……分かった」

「よしよし」


 知らず知らず肩に入ってた力を抜く。

 見た目が人とは言え、龍二頭が威嚇し合ってたんだから相当息が詰まってたんだろう。

 真っ青な顔で脂汗を垂れ流していた。

 その男に向かって聖龍がにこりと安心させるように笑いかける。


「そういうことじゃ。わしらが何とかするから長にそう伝えてくれんかの」


 男はぶんぶんと勢いよく頷いてから駆け出した。

 今そんな笑顔で話しかけても示威行為にしかならんだろうに。


「そうと決まれば早速行くか。善を急いで悪いこともあるまい」


 それか私にとっての悪か。

 まあそれは着くまでは分からないことだ。

 とにかく今は聖龍の言う通り行くだけ行ってみよう。

 あ、そうだ。

 言っておこう。


「次は乗せない」


 今度は聖龍は何も言わなかった。

「ほう?」とでも言いたげに視線をやって来ただけだ。

 まあ文句言わないなら了承したってことだろう。

 私がさっきの比じゃないくらい機嫌が悪いのは分かってるみたいだ。

 ならいいだろう。

 私は前を歩く聖龍の後ろを、いつにも増して無言で歩いて南に向かった。

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