41.RPG的に言うと古代遺跡
この話で文字数が20万文字を超えました。凄ェ!でかした!
あーかなーこーかなーと試行錯誤しつつ北に向かって一週間弱。
遠くのほうに山脈が見えてきた。
あれが北の山脈かな?
見えてはきたけど高い所を飛んでるしまだ結構遠そうだな。
今までの感じだとあと二日くらいはかかりそう。
あ、そうそう転移のペンダントの解析だよ。
少しずつ進めながら飛んでるんだけど、まーこれがまた難しい。
謎男の空間魔法をコピーした時とは違って未だに再現できずにいる。
うーむ、なんだろう?
何がなんやらまったく分からん。
分からんことをいつまでも考えることはないな。
ひとまずこれは置いておくか。
諦めはしないけどそれよりも考えることはあるしね。
だって聖龍よ?
おそらく私より強いと思われる龍の所に行く訳よ?
謎男は温厚とは言ってたけどどこまで信じていいもんか分かったもんじゃない。
もしもの時の策は考えておいたほうがいい。
さて、そろそろ日が暮れそうだ。
夕飯はさっきそこそこデカい鳥の群れに飛び込んで踊り食いをしたから問題なし。
まずは寝床を確保しないとな。
まあ下は平原だしどこでもいいんだけど。
おや?
そう思って下に目を向けると少し遠い所に何やら岩の塊が見えた。
岩……自然物じゃない?
遠目にもレンガらしき物が見える。
なんだあれ。
ちょっと気になる。
行ってみるか。
体を捻って岩の方に頭を向け、翼を動かす。
よっと。
とうちゃーく。
正面に明らかに人が石を積み上げたとわかる建造物がある。
アステカ文明の祭壇みたいな感じだ。
あちこち崩れてるし人の手が入らなくなってだいぶ経ってるんじゃない?
なんの遺跡なんだろ。
祭壇の中に書いてないかな。
って思って階段を上ってみたけど、これ絶対入れないわ。
そりゃな。
人間用だしな。
龍のこととか考えてないわな。
よし、人化しよう。
流れるように人化し、入り口をくぐる。
うっ、埃くさっ。
しかも暗くて何も見えない。
魔物的な何かがいないか、魔力探知を広げてみるけど感じられるとは虫とか小動物とかの微かな魔力だけだ。
とりあえず危険は無さそうだな。
それを確認し、火魔法で小さな明かりを作って頭の上を漂わせた。
その明かりの下中を探ってみる。
壁とかを見る限りとりあえず一番心配だった崩落の危険は無さそうかな。
崩れやすいところはあらかた崩れたって感じに見える。
それでも大きく崩れてるところはないし、だいぶ頑丈に作られていたんだろう。
そうやって考えながら建物の内部を探索していると、一番奥に壁画らしきものを見つけた。
火を大きくして全体を照らしてみる。
なんだこれ……ここだけ他より損傷が酷いな。
何が書いてあるのか全く分からない。
あ、でも上の方に描いてあるの龍っぽいな?
てかよくよく見てみると下の方程損傷が酷くて、上の方に行くにつれて傷が少なくなってる。
てことはこれ、意図的に破壊されてるんだ。
なんか、被害を免れてる部分は無いかな。
そう思って近づいてみてけど、表面が砕けていてほとんど何も分からない。
流石に残ってないか。
そう諦めて、せめて残ってる絵だけでも見ようと上を向いたら、壁画との境目の天井に何か書いてあるのを見つけた。
なんだあれ?
火を漂わせて近づける。
んー、────る────の──に────ぐ?
なるほどわからん。
いくらなんでも擦れすぎだろ。
特に何かの名前と思われるところの削れ具合が酷すぎる。
一番大切なところなのに。
敵意が高すぎる。
「へぇ。こんなところにもあったんだ」
声がした。
反射的に振り返りつつ魔法を発射。
闇に溶け込むような黒色の魔法が声を上げた人物を殺さんと迫る。
だが、それはその男に到達する前に形を失って霧散した。
「や。ごめんね、今日はお土産が無くて」
そこにいたのは謎男だった。
全く申し訳なく思ってなさそうな顔で、部屋の入口にもたれかかっている。
お前か……何しに来た。
一週間くらい前に来たばっかりだろ。
今回はやけに早いな。
「君、このあたりで信仰されてる宗教の話は聞いたことあるかい?」
このあたり?
知らんな。
北の方に宗教国家があって、そこでヴィズルって神が信仰されてるらしいってくらいは知ってる。
逆に言うとそれしか知らん。
「ヴィズル教ってやつなんだけどさ、その信者って昔はだいぶ過激だったんだよ。ヴィズルを信仰しない奴は皆殺し、ってくらいにはね。八百年くらい前まではそんな感じだったかな」
やばぁ。
なんだその宗教。
そんなことやってたのかヴィズル教。
ヴァイキングかなんかじゃねえかなそれ
あ、や、なんか前世でもそんな話聞いたことあるような……まあ信仰ってそういう面あるよね!
触れちゃいけないやつだ!
八百だかなんだかは聞かなかったことにする。
こいつならそれくらい生きててもおかしくない。
「ここはその時に滅ぼされた土着信仰の神殿の一つじゃないかな。周りが荒れ果ててるのは見たよね? 多分もともとはここを中心にそれなりに大きな集落があったはずだ。もう誰も覚えてないだろうけど」
そう言う謎男は複雑そうな顔をしていた。
珍しいな、こいつのこういう顔。
なにか思うところがあるのかもしれない。
知り合いでもいたんかね。
「誰も頼んでいない。そう命令したわけでもない。生者が死者の意思を汲んだふりをする。醜いと思わない?」
ふむ……醜いかどうかは知らんけど気に障る言い方だな。
「非難してるつもり?」
生者が死者の為に、願ってもいないことをする。
まさしく私のことだ。
それを醜いというのなら、即ちそれは私への侮辱だ。
覚悟への冒涜だ。
剣呑な雰囲気を向けると、謎男はそれを正面から受け止めた。
さっきまでとは打って変わって、いつもの腹立たしい笑みを浮かべている。
「そうだと言ったら?」
「お母さんがどう思うと関係ない。私は私のやりたいようにする」
「そうかい」
それっきり謎男は何も言わなくなった。
神殿の中に重い空気が流れる。
これ以上用がないなら、ここにいる必要もないかな。
私の好奇心も満たされたし。
んじゃ、解説ありがとう。
その分不快な思いはしたから感謝の気持ちなんか微塵もないけど。
謎男の脇をすり抜けて外へ向かう。
「ここの話、興味無いみたいな顔してるけど」
唐突に背後から声をかけられた。
振り返らずに足を止め続きを待つ。
「よく覚えていた方がいい。僕に目を付けられた時点で君はもう渦から逃れられなくなったんだから」
どういう意味だ。
そう聞こうと振り返ると、すでにそこに謎男の姿はなかった。
綺麗さっぱり、そこにいたのが幻覚だったんじゃないかと思うくらい鮮やかに消えた。
チッ。
なんであいつはこう人の心に波を立てるようなことをするんだ。
意味深なこと言いやがって。
神殿を出て龍に戻る。
もうすっかり日は沈んでいた。
さて、じゃあ今日はここで寝るかな。
神殿の前がいい感じの広場になってたから、そこに体を横たえる。
謎男のせいで気分が悪いけど、ひと眠りすれば気も晴れるでしょ。
だが、寝てしまえばそうでも寝るまでの間、謎男の意味ありげな言葉が頭の中でずっと渦巻いていた。
一段落ついてほのぼのすると思った? 残念、しないよ!




