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37.先生に相談すると大概ろくな事にならないのです。まる。

忙しいやらなんやらで大分間を空けて更新

 ただいま、私はメイドさんに連れられて屋敷の中を歩いています。

 何故かって?

 私が屋敷を抜け出したからだよ!

 はっはっはー。

 そういえばそうだったなー。

 そりゃ怒られるよなー。

 しかも服は血塗れボロボロところどころ焼け焦げてるような状態で帰ってきたのだ。

 うん、普通はお説教コース。

 なので今ナタールの所に連行されています。

 で、屋敷の中を歩いているわけだけど、何やら慌ただしく感じるんだよね。

 ひとまずの方針は決まった感じかな。

 まあ私が相手の事教えたら意味なくなるんだろうけど。


 あ、服は帰ってくるなりしょっぴかれて着替えさせられました。

 さすがに普通の服は常備してないみたいで、使用人っぽい人が着てるメイド服からエプロンとか余計なのをとっぱらった黒いワンピースみたいなのを押し付けられた。


 うん、まあそんな事はどうでもいいんだけどさ。

 ナタールの部屋の前に着いた。

 メイドさんが扉をノックする。


「入れ」


 中からはナタールの声。

 それを聞くなりメイドさんが一人で入れと言わんばかりに身を引いて促した。

 それに従って扉を押し開ける。

 入ると中ではナタールが何か書類を書いていた。

 後ろでメイドさんが扉を閉めた音がした。

 そうなると部屋の中にはペンを動かすカリカリという音が響く。

 どうでもいいけど羽根ペンって凄く書きづらそうよね。


 程なくしてひと段落ついたのかナタールが顔を上げた。


「屋敷を抜け出したと思ったら、酷い有様で帰ってきたと聞いております。怪我は自分で治したのですか?」


 血は付いていても怪我がなかったのはもう伝わっているらしい。

 やだ何もかも筒抜け。

 私も知らない私のほくろの位置とか知ってんじゃなかろうか。

 なんて頭では馬鹿な事を考えつつ、顔は真面目に頷く。

 それを見たナタールが椅子の背に深く身を預け、腹の前で指を組む。

 おや、説教の姿勢かな。


「さて、何故そのような怪我をしたのかを聞きたいのですが。まさか貴女ほどの魔法の使い手がチンピラに襲われて、という訳ではないでしょう?」


 嫌味っぽいなあって思ったけどこれ嫌味だわ。

 なんか色々と怪しまれてるっぽい。

 まあな。

 屋敷を抜け出したと思ったら怪我して帰ってきたんだもんな。

 しかも何か不審なことがあって対応に追われてる最中と来たもんだ。

 怪しさ満点すぎる。

 だけど、私は別に変なことをしていた訳じゃない。

 なんならナタール達にとって有益とすら言える情報を持ってきた。

 だからビクビクする必要もない。


「ラウムに刺さっていた魔力の持ち主の件」


 ナタールにとっては唐突に切り出された話のはずなのに、眉一つ動かさない。

 あらかじめ知っていたみたいな態度だけど、多分予想してたんじゃなくてそういう性分なんだろうなあ。

 癖というか。

 怖いわー。


「それのどのような?」


 椅子の背に預けていた体を起こし、前のめりになってナタールが聞く。


「相手の正体と、その裏に付いているもの」

「……確か、なのですね?」

「嘘をつく理由がない」


 まあそう言ってもナタール的にはあるんだろうけどね。

 私が誤魔化すためにでっち上げたみたいな。

 けどこれは本当だし、疑われて痛む腹はない。

 や、あるっちゃあるけど。


「その情報を教えて頂けますか?それを聞かないことには判断しかねます」


 警戒心の強いこって。

 まあいいけどね。


「相手は帝国の工作員。ラウムを眠らせた目的は不明だけど、何かしていた事は確か」

「帝国? 今ですか?」


 そう言ってるでしょうが。

 まあそれもケクロプスが言ってたことで、本当にそうかはわからないけど。

 だけどわざわざ私にそんな嘘をつく理由が分からない。


「本当にそうだとするならば明らかな戦争行為です。いかに帝国と言えど聖龍が守護する我が国にはおいそれと手は出せないはず。それを押して手を出すとは?」

「龍すら超える力を手にした可能性」

「考えにくい話です。龍とは、その存在自体が強者としてあるのです。それに、帝国と我が国の間には光龍が縄張りとするフィオナの森があるはず……」


 光龍。

 お母さんか。

 死んだよ、お母さんは。

 帝国に殺されて。


 ん?

 待てよ。

 もしやお母さんが殺されたのってそれが原因か?

 戦争になった時、行軍の邪魔になるから?

 あの頃のお母さんは具合が悪そうだったし、もし帝国にいる間になにか仕込まれていたとしたら?

 確証はない。

 だけど筋は通る。

 これはイケおじを殺すだけじゃすまないかもな……下手すれば帝国という国を滅ぼす必要があるかもしれない。

 それも、真偽を確かめてからだけど。


 まあひとまずそれは頭の端に留め置こう。

 今はケクロプスの処理についてだ。


「いや、問題はそこでは無いな。この町に帝国の手の者がいるということが問題か。ついてきてください」


 ナタールが立ち上がり、早足で部屋を横切って部屋から出ようとする。

 え?

 あ、はい。

 え?

 どこ行くの?

 それに着いて外に出ると、控えていたメイドに指示を飛ばした。


「屋敷の中にいる文官とグラムロックを招集しろ。大至急だ。連絡のつかない者はいい。すぐ集まれる者だけにしろ」

「はい」


 メイドが頭を下げ、小走りで去っていった。

 ん?

 お偉いさんを集めるのかな?

 多分そうっぽいけど。

 なんで私が着いていく必要があるのかな?


「ご一緒願えますか? 私が伝えるよりも本人に話してもらった方が確実です」


 は?

 私に?

 知らんお偉いさん達の前で?

 てかそれ一応聞いたみたいな感じだけど、断らせる気ないでしょ?


「構いませんね?」


 ……ほーい。




 ───────────




 で、ナタールに伝えてから数時間。

 体感だと1、2時間くらいで割と早かったと思う。

 集まったのは会議室みたいな場所だ。

 緊急だったというのに、集まった面々には服装の乱れがない。

 まあ空席が目立つのはご愛嬌だろう。

 近くの席の人物となにか打ち合わせをしたり使用人に指示を出していたりと微妙にざわついてる中、ナタールが立ち上がって口を開いた。


「さて集まれる者は集まったな。今からこの少女の話を聞いてもらう。事によっては高度に外交的な問題の可能性すらある。遮らずに最後まで聞いて欲しい」


 ひぇぇ……。

 なんだこれ圧がすごい。

 全員顔が怖いんだよ。

 目付きが鋭いおっさん達の視線が私に集まる。

 その中の一際頑固そうなオヤジが我慢ならんといった感じに立ち上がった。


「遮るなと言ったはずだが」

「だがなレーム殿。その小娘の言は信ずるに値するのか? 話は聞いているが身寄りがない、身元不明、記憶も無し。一体どこに信ずるだけの価値がある? 信用というものの重要性はもちろん承知でしょうな、ナタール・レーム殿?」


 ほー。

 聞いてなかったけどフルネームはナタール・レームか。

 別に使わんしだからどうしたって感じだけど。


 で、あの頑固オヤジの言うことも一理ある。

 むしろいきなり信じてるナタールの方がおかしいとも言える。

 私怪しいしなー。

 うんうん、わかるーわかるー。

 ちょっとねー、ないよねー。

 小娘呼ばわりはイラッときたけどな。


「もちろん心得ているとも。信用とは人ではなく話の中身にこそかけるものだというのはある種常識だ。知恵ある者は真偽を吟味する事ができるからな」

「なっ……!」


 人で判断したお前は知恵のない馬鹿だと。

 言外に馬鹿と罵るナタールである。

 ちょっとエッジが聞きすぎてやしないだろうか。

 あのオヤジ真っ赤になって震え始めたぞ。

 マジでキレる5秒前って感じ。

 辛うじて爆発してないのはナタールの方が立場が上だからかね。


「黙っていろ。何も聞かずに判断するのは機を逃す。信頼に足るかどうかは聞いてから決めろ」


 言い切られてオヤジの方は怒りを堪えるように荒っぽく席に着いた。

 なんだろう、あれかな。

 貴族の小競り合いってやつかな。

 立場を抜きにしてもナタールの方が一枚上手なようだ。

 というか、だいぶ経験の差があるのではなかろうか。

 知らんけどさ。


「失礼しました。では、どうぞ」


 と私に促すナタール。

 おう。

 今のでだいぶハードル上がったぞ。


 はあ……まあしゃあない。

 やるしかないか。

 かぼちゃだ。

 このオヤジ共はかぼちゃ。

 そう思えば平気だって偉い誰かが言ってた。

 ちなみにそのかぼちゃには目と口が付いてる。


「この国は既に帝国に攻められている」


 そう切り出された言葉を受けてどよめきが走り、次の瞬間にはその先を聞こうと静かになる。

 さて、この圧をどう乗り切るか。

 私にとって地獄の作戦会議が始まった。

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