side 高良 彰弘。4
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和泉と一緒に食堂に食堂に向かうと、蓮が先に特別席で昼食をとっていて、それを見た和泉が「王様……王子様、いや、王様……」と呟いていた。
確かに王様に見えなくもない、むしろ蓮は王子様とは程遠いし本当に王様だろう。
蓮からは何でお前が和泉と一緒にいるんだ、という目を向けられたから、そっと逸らす。
それに加えて俺の和泉呼びと和泉の彰ちゃん呼びに少し、いやかなり不機嫌になって和泉の腕をぎりぎりと掴んだ蓮だったけど、和泉の言葉ですぐご機嫌になった、ちょろい。
どうやら和泉にはこのちょろさは理解できないようだ。
それより、蓮の愛が高ぶりすぎてどうにも言えないこの感じ。
蓮のことだから辻井の言う通り、危害は加えたりはしないんだと思っていたけど、どうなんだろうか。
「はっ、昼休みが終わってしまう!」
若干悲鳴交じりで叫んだ和泉は、ダッシュで食堂の列の最後尾に向かう。
おい、小野瀬家の令嬢が走るなよ、と言いたいところだけど、何故かダッシュする姿も優雅なのだから、生まれが良いというのは得だなぁと思うわけで。
それにしても、今日も列が長い。
うちの食堂はやたら金をかけて高級なものを提供してるからか、出来上がるのが遅いのだ。
俺も和泉のあとについていくと、和泉を見て先に並んでいたやつらがざっと左右に避けて道を作った。
それの光景を和泉が引きつった顔で見てから、はっと何かを思い出したように穏やかな笑みを取って付けた。
まあ、当然の反応だよな。
カースト制の最上階の小野瀬家の令嬢様だもんな、高等部で先輩だからってそれは揺るがないもんな。
「やめてくださいませ、先輩方。順番をのかすほど横暴で軽い脳みそは持っていませんわ」
暗に「私のことを横暴で軽い脳みその持ち主だと言ってんのか? あ?」と言っている。
目が語っている。
今日は変だなと思っていたけど、今日はやたら言う日だな。
和泉の口から出る言葉は予想の範疇だったはずなのに、周りの反応とまざっておかしくて、口を押さえて少し笑う。
それに気づいた和泉は軽く睨んでくるし、特別席に座っている蓮にも聞こえたのか、はははっと包み隠さず笑っている。
まあ、普通に和泉くらいの地位……いや和泉よりも権力が弱くても、避けて当たり前だと言わんばかりに先に行くだろうから、ほんとに和泉は令嬢らしくない。
あと先輩をつけるのは、この学校の方針だけど、そんなの守ってるやつなんか滅多にいなくて。
和泉だっていつも“和泉様”と呼ばれているし。
そしておそらく中等部でもちゃんと並んで頼んでいるんだろう。
そして多分特別席には絶対座らない、ああいうの好きではないのだ、和泉は。
そんなのでなめられたりしないのかと疑問に思うのだが、和泉信者は増すばかり。
そして本人は理解していないのだから、何とも。
蓮に握られた腕が赤くなっていたので、声をかける。
そしてまたもや馬鹿げたことを言うから、麻痺したのかと納得する。
それに不満げな顔を向けてきたけど無視だ。
順番が来て、昼食を受けとる。
そこで和泉と攻防があったが、俺が制して蓮の元に行く。
特別席に座るのに対して和泉は複雑な顔をしていたが、渋々蓮の横に腰を下ろしていた。
「蓮。放課後いいですか?」
「あー、いいよ。生徒会おいで」
「……まじかよ……」
「あは、和泉、本音出てるよ」
「…………二人がいいんですが」
「うん、わかってる。会長専用の部屋あるから話せるよ。俺以外入れないし」
「ソレ職権濫用イイマスネ」
“蓮”とか、うん。
やっぱり今日の和泉はおかしくて、それに対して満足げな蓮は、おかしい理由をきっと知っている。
二人の会話は、前と比べて大分成立してて、むしろ会話は弾んでいて。
和泉からの誘いなんか前までは全くなかったのに、と。
「……そんなに仲良かったか?」
前までは俺も含めて完璧に避けていたくせに、どうしたんだ。
何か、すごく、居心地が悪い。
表情に出ていたのか、和泉が眉を下げて読み取れない表情で俺を見る。
「前からですよ」
となりで、だね。と蓮が頷いてる。
まあ、俺がこいつらの全てを知っているとは思ってはいなかったけれど、やっぱり知らないことがあるのは少し、うん。
それは和泉に対して気持ちがあるからか、俺が蓮のことを大切な友人だと思っているからか。
結局両方なんだよな、と思う。
和泉のことはきっと好きなんだろうけど、結局俺は蓮のことも大事で、どっちかを捨てられるほど軽いものならよかったのだけど、そうはいかないみたいで。
「和泉はツンデレだから」
「あっれ、それ違う気がするなぁ」
「口調崩れてきた、嬉しい」
「だっ、黙りません……?」
この会話を、非常に冷静に聞けない俺がいるわけだ。
蓮は俺の気持ちを知っている。
知っているのに、何で知らないように振る舞うのか、不機嫌にはなるくせに権力すべて使って和泉に俺を近づけないようにしないのか。
わからないけど、おそらく、俺と同じなんだろうな、と。
蓮の中の優先順位は明らかなもので、和泉中心に形成されているけど。
きっとその順位の中に俺はいる。
考えれば考えるほど深みに嵌まって、結局何が言いたいのかと言えば、結論波でないわけで。
自分にあきれてしまって、引きつった笑いが浮かんでしまう。
「和泉って食べてるところ可愛いよね」
そう、王子様スマイルで和泉を見つめる蓮。
どこかで黄色い悲鳴と数人が倒れる音がした。
それに対して和泉が引いてる、そして面倒事には関係ないですよ、といつも通りの無視を貫いている。
「……ひどいです」
「え、何で?」
「蓮が豚って言った」
「被害妄想甚だしい上に口調が子ども」
和泉は何を思ったのか、少し涙目で蓮に怒りを孕んだ声を突きつける。
突拍子もない発想は昔からだが、それを蓮に顕著に晒すのは珍しいんじゃないだろうか。
今日はやっぱり、元々おかしかったところが全面に出てきているんだろう。
長年溜まったものが全部わき出るようだ。
くくくっと笑う蓮を睨んで、和泉はステーキに集中している。
和泉はさすが小野瀬家の令嬢ということで、意識しなくても令嬢の鑑くらいの立ち振舞いはできるから、集中しなくても食えるだろうに、と思ったが、どうやら他のことを考えている模様。
「ほんと変わらないね、お前は」
そっと和泉の髪を撫で付ける蓮。
ああ、何なんだろうこの雰囲気は。
変わらない、とはこれが?
このおかしさが、いつも和泉の内側に隠されていた変なところが全面に出ている和泉が、蓮の知っている和泉だったのだろうか。
いとおしそうにステーキを頬張る和泉を眺める蓮。
そんな蓮を気にしないように努めながら、きっと頭の中は蓮のことを考えている和泉。
全く、何というか。
割り込む隙間が全く無い。
あるとは思っていなかったけれど、足掻くのは自由だと、一縷の望みは、とか。
結局足掻けば怪我をするし、期待なんかする方が無駄。
何で、どうしてなんだろうな、お前らは。
俺の知らない空気感、ずっとずっと感じてたこの二人との壁。
今日になって、ますます壁は分厚くなった気がするんだ。
恋情とか友情とか、色々含めて俺は、「置いていくな」と切実に、二人に願う。
高良sideもあと一話ですかね!
ビッチさんを早く出したいですね!
短編二つ書きました。
一応シリーズです、よければ読んでみてください!