26. それは勇者な誕生日③
久しぶりの更新。これからも不定期になるかもしれませんが、せいぜい頑張ります。
「……勇者、入っていい?」
ドア越しに許可を求めるベゼルの声は、レイドにはどことなく元気が無いように聞こえた。
「……ああ、いいぞ」
レイドは上半身を起こし、そう返答する。ベゼルから話しかけて来る事自体が珍しいので、素直に部屋にいれる事にしたようだ。
……しかしそれを聞いてすぐに入ってくるかと思いきや、中々入ってこない。疑問に思ったレイドだが、ドアを見てすぐに気がついた。
どうやらドアノブが高い位置にある為、子供のベゼルには届かないようだ。
「ったく、世話の焼ける……」
レイドはベッドから下りて、少々おぼつかない足取りでドアを開けた。
「あ……」
ドアの向こうには、レイドの想像どおりというべきか、心配そうに彼を見上げるベゼルの姿があった。
「どうした、なんか用か?」
相変わらずの言葉遣いだが、この前のようなトゲのある言い方ではなく、少し穏やかさも混ぜたような、そんな口調でベゼルと視線を合わせた。
「えっと、あの……」
レイドの問いかけにベゼルは手をモジモジさせてうつむく。その挙動にはっとしたレイドは、何かに気が付いたのか、目を手で隠し上を見上げた。
______ベル様は……アナタが風邪を引いたのはご自身のせいだと思っているのよ_____
先程のエリスの言葉を思い出す。ベゼルはレイドが心配で、一人でここまで来たのだ。
「…………」
レイドは無言でベゼルの頭部に視線を戻す。
思えば、ベゼルはいつも誰かと一緒にいた。いくら魔王といえど、まだ子供……。寂しがり屋なのだろう。側に誰かがいることが、ベゼルにとって何よりも安心できる薬なのだ。
そんなベゼルがレイドの部屋まで一人で来たということは、エリスの言う通り、自分を責めている何よりの証ではないだろうか。……レイドはそんな風に考えていた。
______明日はベル様の誕生日______
______ベル様は今、元気をなくしているわ______
「むむ……むむむむ……」
腕を組んで難しい顔をした後、レイドははぁーっとため息をついた。
そのため息にベゼルはひょこっと顔を上げ、不思議そうにレイドを見上げる。レイドはいつものだるそうな顔に戻り、だるそうにベゼルに声をかけた。
「おいガキ、腹減ってるか?」
「え……」
その問いかけにベゼルは首を横に振る。
「ううん。さっきエリスにお菓子貰ったから……」
「……じゃあ喉は乾いてるか?」
この質問にはベゼルは頷いた。
「う、うん。少し……」
それを確認すると、レイドは道をあけて部屋を指差して続けた。
「そうか。じゃあ上がっていけ。茶くらい出してやるから」
「え……」
ベゼルの返答も待たずに、レイドは部屋の中へと戻って行く。それを見たベゼルも慌てて、彼の後ろについていった。




