20. 仲良くなるために、遭難だってしよう①
そういえば短編小説書きました。
気になった方はぜひ読んで見て下さいお願いします。
朝日の光で、彼は目を覚ます。
「ん……朝か……」
勇者レイドが魔界に来て、早3日が経過していた。
レイドは現在、城の使われていない部屋を借りて暮らしている。始めは近くに家でも造ろうかと考えていたのだが、用意されたふかふかベッドの誘惑に負け、魔王城に住むことになったのである。
「今日は……何日だっけ……」
寝ぼけながら枕に顔をうずめ、目覚まし時計に内蔵された今日の日付を見る。
「5月……16日か」
ふと、リリが何か言っていた事をぼんやりと思い出す。今日は何か用事があったような……しかし思い出せないまま、レイドは再び眠りに落ちた。
……が、5分としないうちに彼は目を覚ます。
「レイドさん、起きてください! 朝ごはんですよーーーっ!!」
「うっぎゃああああーーっ!!」
突如部屋に入り込んだリリの攻撃……フライパンを耳元でカンカンされ、レイドは飛び起きた。
「おはようございます、レイドさん」
先程の悪魔の所業を行った者とは思えない、爽やかな笑顔でレイドに挨拶をするリリ。レイドは未だ鳴り響くフライパンの残響に耳を抑えながら、一日の始まりを迎えた。
「あのさ、もうちょっとマシな起こし方してくれよ……」
「いつまでも寝てる方が悪いんです。さっさと朝ごはん食べて来てください」
リリはフライパンを肩に担ぎ、入り口へと歩き出す。その途中でピタリと止まり、レイドの方へ振り返った。
「そうだ、レイドさん。明後日は宜しくお願いしますね」
「は? 明後日?」
レイドの疑問に答えず、リリはそのまま何処かへ行ってしまった。
「明後日? あさって……何かあったか?」
考えた所で答えが出るはずもない。レイドは鳴り出す腹の音に従うまま、食堂へと向かって行った。
___食堂____
「今日は何食おうかな……」
食堂に着いたレイド。
ここでは食券システムを採用している。故に食券を買わなければ飯にありつけないのだが、レイドは特別『勇者』という事で、窓口のおばちゃんに食べたいものを言えばタダで作ってくれるというありがたい恩恵を受けている。
「あら勇者、貴方も朝ごはんまだなの?」
券売機に表示されているメニューを凝視していると、エリスが声をかけて来た。
「おう、キレ女。お前もか?」
レイドの言葉にエリスは片眉を僅かに動かした。
「その呼び方、やめて頂戴。まるで私が怒りの沸点が低い女みたいじゃない」
「違うのか?」
「違うわよ!」
若干キレ気味に言う彼女からは、説得力が感じられない。レイドはめんどくさくなって話題を変えた。
「それよりもさ、オススメのメニューある?」
レイドは券売機を指差して聞く。
「それよりもって……まあいいわ。オススメと言えば、『目玉焼きハンバーグ』ね。ちょっと庶民的だけど美味しいのよ」
「えー……子供っぽくないか?」
レイドのなめくさった言葉に、エリスが目を鋭くして答えた。
「あら、なに? 貴方は大人になってから一度たりとも『目玉焼き』も『ハンバーグ』も食べていないの? 可哀想な人ね、『食』にまでそんな醜いプライドを持つなんて」
「そこまで言う!?」
さすがのレイドも声を荒げて突っ込む。しかしそこまで言われては仕方ないとため息をつき、『目玉焼きハンバーグ』を食べることに決定した。
「じゃあ食ってみるよ。あんたも同じのでいいか?」
「何で勝手に決めるのよ。まあいいけど」
すんなり了承するエリス。それを聞くと、レイドは券売機にお金を入れて『目玉焼きハンバーグ』券を2枚購入し、1枚をエリスに渡した。
「はい、1枚」
「え、あ……。悪いわね、今お金渡すから」
「いいよ別に、このくらい。俺も久しぶりに金払って食いたくなったしな」
そう言ってレイドは食券を窓口まで持って行った。
「な……何よ。別に頼んだわけじゃないんだから……」
エリスは小さく呟くと、食券をきゅっと握りしめて後に続いた。
________
食堂の空いてる席に座るレイドたち。と言っても、城のほとんどの者は朝食を食べ終えているので、半分以上の席が空いている。
それぞれが頼んだ『目玉焼きハンバーグ』がのったお盆を机に起き、レイドは絶句した。何故なら、彼の想像していた『目玉焼きハンバーグ』とは、全く違うものだったからだ。
____ナイフで切り口を入れたら即座に肉汁が溢れ出そうな程、見事で食欲をそそるハンバーグ。
その上を覆いかぶさる様に美しく飾るのは、黄色と白で彩られたプルップルの目玉焼き。その2つのコントラストが奏でるそれは、まさしく『芸術』_____
_______否。今の言葉は忘れて欲しい。
目玉焼きの代わりにちょこん、と申し訳程度に乗っかっている『ソレ』は、明らかにレイドの知っている目玉焼きとは違うものだった。
『目玉焼き』……確かにそれは乗っている。しかしそれは、卵を使った目玉焼きではなく……そう、まさしく『目玉』。『目玉』焼きだったのだ。
「……あのさぁ、俺たちが頼んだのってなんだったっけ……?」
レイドはその『目玉』焼きハンバーグを見つめ、放心状態でエリスに聞く。エリスは顔色一つ変えずに答えた。
「目玉焼きハンバーグね」
「え……これは何……?」
「……目玉焼きハンバーグね」
そこでレイドは我を取り戻し、声を荒げる。
「ちげーよ!!」
レイドは目玉焼きを指差す。
「ここが違うよ! 俺の知ってる目玉焼きじゃないよ! つーか目玉焼きっつーかコレ、焼き目玉だろォ!」
立ち上がって熱弁するレイド。しかしエリスは依然として冷静だった。
「いいじゃない、どっちも変わらないわよ」
「よくない、変わる! てか食えんのコレ!?」
「食べれるわよ、ほらこうやって」
エリスはナイフを目玉目掛けて振り下した。
「こうやって、一度目玉焼きを崩す」
『ウゲゲゲェッ!!』
「今叫んだぞ、その目玉! 生きてんの!?」
レイドは終始突っ込みの連続で息を荒げる。
「ほら、貴方もやってみなさい」
エリスの残酷な一言に、レイドは一筋の汗を垂らした。
「うえ……マジかよ……」
しかしここでやらなければ男がすたる。何より、ご飯にありつけない。レイドは一思いにナイフを振り下ろした。
『ウg「だぁーーーーっ!!」
大声を上げて焼き目玉の断末魔をかき消すレイド。エリスがびくっと驚いた。
「……なに、いきなり大声出して……」
「いや、何となく……」
「……まあいいわ、それよりも見てみなさい、そのハンバーグ」
エリスに言われてレイドはハンバーグを見る。すると目玉の中から白身と黄身、それこそ目玉焼きが溢れ出て来てハンバーグを包み込んだ。
「……すげぇ……」
全体にトロリと広がる黄身からは、神々しささえ感じられる。エリスの言ったとおり、とても美味しそうな『目玉焼きハンバーグ』となってレイドの前に現れた。
「どう? これで分かったでしょ。目玉焼きハンバーグをナメるんじゃないわよ」
エリスが勝ち誇った顔でレイドを見やる。今回は素直に負けを認めざるを得ないようだ。
「ああ、悪かったよバカにして。魔界にはすげー食いもんがあるんだな」
お互いに笑い、食事を進める。そんな時、リリたちが騒がしく入ってきた。
「レイドさん、エリスさん! まだご飯食べてるんですか!?」
慌ただしい様子で言うリリ。レイドは思わず聞き返した。
「どうしたんだよ、そんな慌てて」
その問いにはウル太郎が答えた。
「忘れたのか勇者? 今日案内してやるって言ったじゃねぇか」
「案内……?」
パッとしないレイドに、今度はゾン吉が答える。
「魔界をですよ。勇者さん、魔界について知りたいって言ったじゃないですか」
そこまで言われて、レイドはやっと思い出す。
「あー、そういえば言ったな。悪い、忘れてた」
「そんな事だろうと思いやしたよ……」
ゾン吉が頭を抱える。だが予想はしていたようだ。
「んで、どこ連れて行ってくれるんだ?」
「ふふふ、それは行ってからのお楽しみです。」
リリが人差し指を立て、曖昧な答えをする。イマイチ腑に落ちないレイドに、ベゼルが声を掛けた。
「きっと楽しいから、楽しみにしててよ勇者」
リリとゾン吉の間から、ひょっこり顔を出すベゼルにやれやれと首を振ると、レイドは少し期待を込めた顔をした。
「んじゃ、案内頼むぜお前ら。期待しとくよ」
レイドの反応を見て、リリは高らかに腕を上げた。
「はい! それでは皆さん、レッツゴーです!」
「おー!」
次回、魔界を冒険する一行。そこにとんでもない事態が巻き起こるなど、誰も知る由はなかった……。
つーかまぁ、タイトルでネタバレしてるんだけどね。




