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その二

事務所を出た美紀は、真っ直ぐに駅の方へと歩き始めた。

駅前にある喫茶店で、依頼内容を熟読するつもりだからだ。

秀雄の言うとおり、この手の依頼は美紀にとってお手の物になりつつある。

秀雄にうまく使われていると言えばそれまでだが、それでも悪い気はしなかった。

何より尾行や盗撮といった行為が、美紀にとってはとても面白い行為だったからだ。

もしかしたら、デイトレよりも向いているのかもしれない。

そんなことまで考えるようになっていた。


喫茶店に着くと、早速依頼内容を読み始めた。


依頼者は、牧田美奈子、三十五歳。

五歳年上の夫、牧田篤志に関する浮気調査が依頼内容だ。

篤志は大手製薬会社の営業をしている。

美奈子も保険外交員として職を持っており、二人合わせた収入は平均を大きく上回っている。


美奈子によれば、ここ三か月程、毎週水曜日、必ずと言っていい程篤志の帰りが遅くなっているそうだ。

また、携帯電話を持ってちょっと外に出ることも多くなったし、身だしなみも以前よりお洒落になった気がするとのこと。

これは浮気に違いないから、是非調査して欲しい。

そんな依頼内容だった。


依頼書と一緒に、篤志の写真が添付されていた。

なるほど、中々のイケメンである。

これでは奥さんが浮気を怪しむのも無理はないな、と美紀は思った。


依頼書を読みながら、篤志は浮気をしていないかもしれない、と美紀は考えていた。

浮気を示す証拠らしきものが、今のところ何一つないからだ。

ただ、女の勘というものは結構当たることが多い。

まずは、水曜日の夜に篤志がどこに行っているのか、それを確かめることからだ。


今日その水曜日。

依頼書によれば、水曜日は毎週残業だと言って帰りが真夜中近くになっているらしい。

この時間なら、まだ営業で外回りをしているはずだ。

まずは、篤志の顔を確認して、その後の行動を尾行しよう、美紀はそう決めた。


篤志の会社は、新橋の駅近くのビルにあった。

外回りの営業でも、帰宅前には必ず会社に戻ってくるらしい。

美紀は、ビルの入り口が見えるファストフード店に入り、篤志が現れるのを待った。


日がだいぶ傾いてきたとはいえ、夕方の新橋はまだまだ暑さが一面に残っていた。

美紀はストローでドリンクを吸いながら、ビルの入り口を注視していた。


それから一時間くらい経過した頃だろうか。

一人の男がハンカチで汗を拭いながら、ビルの方へと歩いて行くのが目に付いた。篤志だった。

篤志は足早にビルの中へと入って行く。

美紀は残っていたドリンクを飲み干すと、ビルの近くへと向かった。

外はまだ熱気に満ちていたが、篤志を見逃さないためには、ビルの近くで張り込むしかない。

美紀はビルの日陰で暑さを堪え、篤志が出て来るのを待った。

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