エピローグ
サラサラと葉が揺れる。
大木から伸びているたくさんの枝葉が日光に当たって輝いている。
この大木は家だった。幹をくり抜いて作られた温かい家。
近くには魔女の憩いの場があって、いつだって優しい空気で満たされている。
そこに一人の男がいた。
風通しのいい木陰で胡座をかき、幹に背を預けて本を読んでいる。
男はふと何かに惹かれるように顔を上げた。
そこには黒髪で赤い目をした少女がいた。
男は呆然とその子を見ている。
少女は照れたように笑った。
「まだ待ってくれてる?」
男はその問に涙を流した。
「……うん。ずっと待ってた」
拭うこともせず、ただ流れ落ちていく涙に少女は手を伸ばした。
「目が溶けそうだ」
拭っても拭っても止まらない涙に少女はクスクスと笑う。
少女は泣き止ませようとしなかった。
泣き止ませ方を知らなかったのもあるけれど、泣くほど焦がれてくれたことが嬉しかったから。
「……名前を聞いてもいいか?」
「レネだよ。ニコス」
レネは嬉しそうに笑っていた。
「レネ……?」
「お前が名付けたんだろう?」
ニコスは小さく頷いた。そうすることしか出来なかったのだ。
ニコスはまるで夢を見ているかのような気分で頭が働いていなかった。もう何度も同じような夢を見ている。だから、現実感が乏しい。
「もう魔女ではなくなってしまったけれど、ちゃんとニコスのところに来たよ」
レネは両手をニコスの頬に当てて、額と額を引っ付けた。
「さあ、答え合わせをしよう」
これは新しい王が立ってから十年が経ったある日のことだった。




