表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
玉女守門と俺~この度、ひとめぼれした美少女を護る四天王の1人になりまして  作者: 青山 高峰
第5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/22

5-4 二人の誓い

 14年前、魔界の統治者(とうちしゃ)により魔界の花嫁(はなよめ)として連れ去られた涼子は魔界の統治者に、つまり城に軟禁(なんきん)された。玉女守門(ぎょくじょしゅもん)を手に入れれば、永遠(えいえん)にその地位が安泰(あんたい)であるという言い伝えがあるが、魔界の統治者はその言い伝えより、涼子自身に興味(きょうみ)を持ったらしい。というのも、魔界に落ちた者たちから涼子の美しさや明るさの(うわさ)を聞いたからだ。


 そこで内結界(うちけっかい)に穴を開ける計画を()り、異形(いぎょう)どもを操作(そうさ)した。見事に結界(けっかい)の破れが生じた。そして禁じられているにも関わらず、自ら人間界に姿を現し、強引に涼子(りょうこ)を連れ去った。それが神界(しんかい)逆鱗(げきりん)に触れ、魔界の統治者は(しろ)に姿を変えられてしまった。しかし城に姿を変えられてもなお、魔界の統治者は涼子に執心(しゅうしん)し、魔界の統治を放棄(ほうき)。全ての時間を涼子と過ごすようにした。おかげで魔界は()れ放題に荒れ、人間界や中界(ちゅうかい)、そして空界(くうかい)にまで異形がにじみ出てくるようになった。再び内結界にほころびが生じると、魔界の統治者は舌なめずりをしたという。


「あいつは、娘の夕子(ゆうこ)愛妾(あいしょう)にして、一緒に城に住まわせるって言いだしたのよ」

 涼子の目に怒りが浮かんだ。

「あの時にわたしにしたことを、もう一度、今度は娘にするんだ、そう思うと(ゆる)せなかった」


「だから俺に連絡(れんらく)をくれたんだろ」

 (かん)が、震える涼子の肩を抱いた。


「ごめんなさい。まさか以前と同じように儀式(ぎしき)最中(さいちゅう)(ねら)い定めてくるとは思わなくて。しかも(かん)ちゃんを(ふう)じるように手を打ってくるなんて」

 涼子が泣き出した。


「泣くなよ。俺は別に(かま)わないんだから」


「でも観ちゃんを死なせちゃうなんて」


「まあ、おかげで奴の考えを(つか)むことができた。奴は夕子の夢に侵入(しんにゅう)し、衰弱死(すいじゃくし)させようと目論(もくろ)んでいた」


「なんで美住を、いや夕子さんを魔界に連れて行かせたんだ」


「夕子を魔界に行かせたというより、西方守護(せいほうしゅご)四天王(してんのう)である(ゆう)、お前を魔界に来させることが目的だったんだ」

 フェスが毛づくろいした毛を()きだした。


「どっ、どういうことだ?」


「お前が、“白虎炎陽剣(びゃっこえんようけん)”であいつを()る必要があった。でもこの話を夕子にしたら、絶対に反対したはずだ。とにかく夕子はお前のことが……」


「フェス!」

 美住が怒ったような顔をした。


 フェスが舌を出した。

「まあとにかく、夕子を追いかけさせるのに成功したんだ。そして“白虎炎陽剣(びゃっこえんようけん)”で無事に()ってくれたってわけ」


「でも、なんかおかしい。もしあのお守りの巾着袋(きんちゃくぶくろ)がなければ、俺は魔界には行けなかったはずだ」


「あ~あ、あれか、全部仕込(しこ)みだ。第一、あの巾着を空界で落とし、俺が飲み込んで、いや(あず)かっていただろ? それをお前のポケットの中に(すべ)り込ませた」


 あの時のハグでか……信じられない。なんだよ、この一か八かみたいな計画は!


「まあおかげで、魔界(まかい)崩壊(ほうかい)せずに()んだ。お前たちには礼を言う」

 フェスが羽根を広げた。


「涼子ならびに観。空界と魔界の新たな統治者(とうちしゃ)フェスの名において命ずる。お前たち二人は魔界から空界(くうかい)に移す。そしてすぐに生まれかわりのサイクルに戻すことにする」


「なんだよ急に、フェスは空界の統治者だったんじゃないのか」

 とまどう俺の前で、涼子と観がフェスに(ひざ)をついた。


「ありがとうございます」


 頭を下げる二人にフェスが笑った。


今更(いまさら)(あらた)まる必要はない。ところで夕子」

 フェスが今度は美住を見つめた。


「そろそろ戻る時間だ」

 フェスの言葉に美住(みすみ)が首を横に振った。


「お母さん、わたしやっぱりお母さんと」


「それ以上言わないで」

 涼子が抱きしめると、美住が声を上げて泣いた。


「大切な娘だから言うわ。夕子、あなたにはあなたにしかできないことがあるの。たとえ過酷(かこく)宿命(しゅくめい)だとしても、あなたなら大丈夫(だいじょうぶ)(たお)れても(たお)れても立ち上がって、自分の宿命に立ち向かいなさい」


 抱きあう二人を、観が上から包み込むようにして抱きしめた。


「観ちゃん、ありがとう。最後まで約束を(まも)ってくれて」

 涼子が観を見つめた。そこには二人だけしか分からない言葉があるようだった。


「俺はいつだって涼子の味方(みかた)だから」


「ありがとう。でもこんなに早く死なせちゃって。それがやっぱり……」


「言うなよ。お前が行くところは俺の行くところだ。それがたとえ地獄(じごく)であっても魔界(まかい)であっても」


 涼子の(ほほ)が赤くなった。

「ガキのくせに、生意気(なまいき)ね」


 観が涼子の(ほほ)(つつ)みこむようにした。

享年(きょうねん)でいけば、俺の方が年上なんだけど」


 観の顔が涼子の顔に近づいていく。


「そういうのは二人だけの時にして」

 美住が怒ったように言った。


「わたし達、もう帰るんだから」


「そうだったな、プリンセス、元気で。(ゆう)、お前も元気でな」

 観があの涼やかな眼を向けた。


「お前もな、観」


「だから何度言えば分かるんだ。観先輩(せんぱい)だろ。次会う時までに……」

 言いかけて観が笑った。

「次はないな、二度と。優、プリンセスを(たの)んだぞ」


「分かっている」


 これでお別れだと思うと胸が()まりそうになる。


「いくぞ」

 フェスが俺と美住の頭上を飛んだ。すると黄金色の光に包まれた。


☆☆☆☆☆


気づくと、弁天池(べんてんいけ)(わき)で寝ていた。起き上がって悲鳴(ひめい)を上げた。(となり)に美住が横たわっている。しかも(かみ)の毛が短く切られている。


「しばらくは、玉女守門(ぎょくじょしゅもん)の役目をしないで済みそうだな。まあ謹慎(きんしん)というやつだろう」

 フェスの声が頭上から降ってきた。目の前の木の枝に止まっている。


神界(しんかい)連中(れんちゅう)の考えそうなことだ」

 フェスが鼻を鳴らした。


「優、夕子を(たの)んだぞ」

 フェスの身体が黄金色になって消えた。その残像(ざんぞう)が消えた時、泣きはらした顔のジイさんが(あらわ)れた。


 全てが終わった。


ショートカットの美住は学校内で「髪を切って美しさが際立(きわだ)った」と、学内に本人非公認(ほんにんひこうにん)のファンクラブまでできるほど、ちょっとした(さわ)ぎになった。髪の毛が()びるまで、因縁(いんねん)(しば)られることはない。もちろん俺も。受験勉強を再開した。今度こそ全てが元に戻ったが、でもこのままではやっぱり……


 俺は取っ手に手をかけると、一気に屋上へと出た。青い空が視界いっぱいに広がる。美住がこちらを振り返り、俺の胸は高鳴(たかな)り始めた。今日こそ、今日こそ、言うんだ。


「あのさ美住、俺、ずっと前から言いたかった事があるんだ」


偶然(ぐうぜん)ね。私も優くんに言いたかったことがあるの」

 美住の(ほほ)が赤らみ、俺の心臓がドキリと音を立てた。


その時強い風が吹き、美住がスカートの(すそ)を押さえた。


「俺、ずっと美住のことが……」


「わたし、ずっと前から……」


 まっ、まさか美住も俺と同じ気持だって言ってくれるんじゃ。心臓がおかしくなりそうなほど鼓動(こどう)が速くなる。その時、美住の背後(はいご)が金色に光った。


「お前たち二人そろっていて良かった」

 光りの中からフェスが(あらわ)れた。


神界(しんかい)で問題があるらしいんだ。夕子、それから優。今から神界に行くぞ」


「ちょっと待って。神界へはわたししか行けないんじゃないの」


「いや、連中が特別に優を召喚(しょうかん)できることにしたんだ。つまりそれだけヤバい状況(じょうきょう)だってことだ」

 フェスが俺達の周りを飛び始めた。


 もう少しで告白できるって時に、くそっ。


「なんだ優、そのアホ(づら)は」


 ますます腹立(はらた)つ。文句(もんく)の一つでも言ってやろうとしたその(くちびる)(ふさ)がれた。一瞬(いっしゅん)、何が起きたのか分からなかった。美住がつま先立ちになり、その(やわ)らかい(くちびる)を押し当てている。


「好き」

 声にならない声を感じながら、気が遠くなっていく。全てが黄金色(おうごんいろ)に包まれ、俺達は神界(しんかい)へと飛んだ。

(了)

今まで読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ