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第十四話 夜野真奈子の推測

【前回のあらすじ】

占いが、外れた

 改めて放課後に集合、という約束をしてから、サダは奥寺おくでらなごみと一旦別れ、水無口みなぐちの運転する車に乗って病院へ向かった。

 助手席に乗っているサダは黙り込んだままぼんやりと景色を眺めている。

「サダ。さっきのミスは切り替えろ。真言討魔の札が不発だったのはサダのせいじゃない」

 サダの心を見透かしたように、水無口は言った。

 実際サダの考えている事は正にそれで、表向きは平静を保っているつもりだが、ずっと胃がキリキリしていた。

 それでいて、腹立たしいほどに納得がいかなかった。

「俺の占い能力は確実に発動したはずだったのに」

 ペンデュラムは間違いなく奥寺なごみを指した。それだけはしっかり覚えている。

「それに、真言討魔の札を誰に使うべきかという占いには無反応だった」

 初めて見る札なのだから、過去に同じ占いはしてないはずだった。条件が揃っているならペンデュラムは確実に動くはずだ。なのに、動かなかった。

「うーん、もしかしたら何らかの意味があるかもねえ」

 水無口が言った。多分言っている事に根拠はないのはサダも分かっていた。

「もし、俺の占いの能力が減退してたとしたら」

 能力がなくなったらどうしよう。これが無ければ、本当に役立たずの烙印を押されていよいよ首を切られるかもしれない。

「落ち着け」

 真横から水無口の腕が伸びてきて、その拳がサダのこめかみを小突いた。

「仮に減退しても怪異見える能力までは消えてないだろ。それに、本当にそうだと決まってないし、試しに何か占ってみろ」

 そうであった。サダはカードの束を取り出した。

 しかしこういう時、何を占うべきなのか分からない。天気や夕食などは子供の頃に使ってしまったし、あまり重要なネタはいざという時に取っておきたい。

 二度と使う事がないくらい重要性が低く、それでいて答え合わせが簡単なもの。

「……今日の夜野やの真奈子まなこの面談時に、その場にいる女子の人数は」

 一枚だけカードを引くと、そこに書かれていたのは数字の4であった。



「ごめん、遅れた」

 夜野真奈子のいる病棟の入り口に、奥寺なごみ、深澤ふかざわ香弥かや北裏きたうられいの姿が現れた。

「スズはどうしても抜けられない補習があって来られないって。うちの学校、小テストの赤点が溜まるとテスト前に補習に出なきゃいけない決まりで」

 怜が説明する。

「スズって、赤点取るほど勉強できなかったイメージはなかったけど」

 香弥が不思議そうに呟いた。

「そもそもスズのいる情報科って、月ノ宮(つきのみや)では一番倍率高いクラスだったはず」

「……それは普通科のウチに遠回しで嫌味言ってる? スズが補習なのにウチはセーフなのはおかしいって?」

「言ってないし、なんでそれが嫌味になるのか意味不明」

「その言い方がムカつくんだけど。自分だって推薦落ちたくせに」

「そこで過去を蒸し返す意味、ある? なんか今日のあんた変じゃない?」

 一瞬で空気がひりついた。

「あー、もう! 怜ちゃんもふーちゃんもケンカしない! まなやんに会いに来たんでしょうが」

 なごみが割って入ったので即休戦になったが、仲が悪かったのは昔の話じゃなかったのかよ、とサダは頭を抱えた。



「なるほど。私たち六人の中に悪さをする化け物に取り憑かれている人がいる、と」

 カーディガンを羽織った入院服姿の真奈子はベッドに腰掛けながら、これまでの状況を静かに聞いていた。二又に結った長い髪の先端がベッドの上で少しだらしなく広がっている。

「やけに物わかりが良いな」

 そう言えば真奈子に関しては、メンバーの中では唯一、大学付属の高校に進学したのもあって頭が良いと言っていたな、とサダはふと思い出していた。

「みんなからのチャットアプリとか、病院の人とかに散々説明されたから。正直あんまり信じたくないのが、本音かなあ」

 それから彼女は垂れ気味の目を少し細めて天井を見上げる。

「えーと、なごみちゃんから教えてもらったけど、名前は刃闇はやみ君だっけ? 質問いい?」

「なんだ?」

「取り憑かれた人が恨んでる相手が襲われる、って言ってたけど、それってどれくらいの恨み? ちょっと気に食わない、とか逆恨みとか割とどうでも良い些細な事でも起きたりする?」

 いかにも被害に遭った側の視点からの切り出しである。真奈子にとってはかなり重大な問題で、自分の非がはっきりしないとどうにも落ち着かないだろう。

「ケースバイケース、というかあくまで被怪者の感情だからな。そこに正当性はあまり関係ない。ただ、それなりに思うところはある可能性は高いかもな」

「……うーん、そっかあ。なら恨まれる心当たりから割り出すのは難しいかもねえ。ヒナちも酷い目に遭ったって聞いたし」

 はざま陽奈はるなの方は、心配した両親が面会にやってきたのと被ってしまい、今日は時間が取れないとの事であった。一応大きな怪我はしたものの、命に別状は無い状態だが、両親からして見れば理不尽この上ないだろう。

「元気出して、まなやん。まなやんみたいな優しい子を本気で恨むわけないじゃん」

「ありがと、なごみちゃん。そもそも誰かを傷つけるユカイ魔ってのが悪いんだし、取り憑かれた人は悪くないよ、きっと」

「……あんた、酷い目に遭ったのによくそんな風に割り切れるね」

 怜が呟いた。

「ウチだったら絶対犯人許さないってなる自信あるわ」

 だろうな。とサダは即座にそう思ったが、それを言うと確実に脱線すると思ったので黙っておいた。ふと香弥の方を見ると、サダと同じ事を思っていたらしく、こっそりとため息をついていた。

「あと、ついでにもう一つ質問するんだけど、私とヒナち以外の犠牲者って出た? というかその呪いってどれくらいのスパンで出るの?」

「現時点ではあんたと狭陽奈以外の報告は聞いてない。呪いのスパンに関しては、それもケースバイケースというか、被怪者の性格にもよるな。ユカイ魔が宿主の精神を読み取って心を折りやすいタイミングでしかけてくるかもしれない」

 サダの返答を聞いて、真奈子はううーんと考え込んだ。

「じゃあ気に食わない人を所構わず攻撃しちゃうタイプの人の可能性は低い、かなあ?」

 サダは反射的に怜の方を見てしまった。すかさず本人から「ウチに対して失礼だろふざけんな」と肘鉄が返ってきて軽くうずくまった。

「容疑者の可能性が低くなるんだから喜べば良いのに」

「香弥、あんたはちょっと黙ってて」

 すっかり不機嫌になった怜を放っておき、真奈子の話は続く。

「今のところ被害者は私とヒナちだけ。私たちは何かしらの理由で恨まれている。そして、ユカイ魔が取り憑いた人とお互い面識がない人は襲われない」

「ああ、まとめるとそう、だな……?」

 真奈子はそれっきり黙り込んだ。というより俯いたまま考え込んでいるようだった。そして、困ったような顔で目を泳がせ始めた。

「……これ、言っちゃうのはまずいかも……」

 ギリギリ聞こえるかどうか微妙な独り言だが、確かに彼女はそう言った。

「もしかして、まなやん、何か思いついた?」

 なごみがくいつくように身を乗り出した。

「何でもいいから言って。間違ってもいいから」

「えっ、でも」

 真奈子の目線が上下左右に泳ぎまくる。

 これは何かあるな、と思ったサダはなごみに便乗するように「頼む。事件解決の為に少しでも情報が欲しい」と畳みかけたので、真奈子はあっさり折れた。

「……これは私の推測なんだけど、私達ってバラバラの高校に行ってからも仲いいけど、普段はほとんど顔を合わせたりしないよねえ? たまにチャットアプリで雑談する事はあっても毎日って頻度でもないし」

「え? うん、そうだよね。それぞれの高校生活があるんだし」

 なごみが返事をしながら怜と香弥の方を見る。二人ともそれに同意するように頷いた。

「新しい学校で新しい生活をしたら当然人間関係も新しくなる。中学時代の人間関係はどんどん過去のものになっちゃって、いつの間にかグローリー6のみんな以外の中学時代の友達と連絡取り合わなくなってきて」

「……何だか知らんが、それは重要なのか?」

 サダが思わず口を挟んだ。彼女たちの高校生活とユカイ魔の繋がりが本気で分からない。脱線するような話だったら止める事も考えていた。

「重要かどうかは最後まで聞いてから判断してほしいんだけど。仮にね、仮なんだけどもし自分が誰かを恨むんだとしたら「今」の生活の中にいる嫌いな人とか苦手な人を選ぶと思うの」

「まあ……確かにウチもそうするかも」

 さすが全方向に殴りに行きそうなタイプと思われている怜の考えである。

「で、何が言いたいのかって言うと、ユカイ魔に取り憑かれた人は今あるはずの人間関係ではなく、中学の人間関係の方を恨んでいるって考えちゃうの。……あくまでも仮定というか、どっちかと言うとはずれてほしい気持ちの方が大きいけど」

 今の人間関係より、昔の人間関係に不満を募らせる理由。

 確証はないが、もしこれを軸にして被怪者ひかいしゃを推理した場合、考えられるパターンは二つ。


 一つはメンバーの誰かのせいで、今現在の生活に支障が出ているパターン。


 もう一つは、人間関係が全く変化していない状況に居るパターン。つまり新しい人間関係が存在していないという事になる。

 だが高校生活を一年間も過ごして、何かしらの人間関係が全く生まれないというのは不自然な気がする。自ら一人になろうとしない限りは。


 いや、少し待て。


 そういう意味なら一人当てはまる人物がいるではないか。

 高校に上がって常に一人で行動して、それを平然とやってのけていると言われている人物が。


「なら、一番怪しいの香弥じゃん」


 怜のきつい声をきっかけに、場にいた全員が香弥の方を見た。

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