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第8話

「1週間経ったが、まだ居るな。」

クエスト管理人がアランに言った。


「いつもお仕事お疲れ様です。」


「まぁ、この調子で頑張ってくれ。」

やはり無愛想な管理人ではあったが、優しい目をしていた。


「はい!頑張ります!」

アランは先に掲示板へ行ったケイトを追いかける。



ランランは、205号室で羽を切って矢を作っていた。


ベガルは、302号室でスズメを撫でていた。


ディークは、401号室で図鑑の絵を描いていた。


リンコは、406号室でハリーと・・・。


「ハリー?あれ?ハリーはどこ??」






今日は緑の森に行ってみることにしたアランとケイト。

初めて行く場所は緊張感とワクワク感でいっぱいだ。


「へー。歩いて行けちゃう距離なんだ。」


「そうですね。」


「なんかモンスター出るかな?」


「さすがに3日連続では出ないのではないでしょうか。」


「わかんないよー。振り返ったら後ろにいたりして。」

ケイトがクルッと振り返る。


「何も居ませんよ。」



森には、さまざまな動物が居る。


「おともになる動物に出会えるかもしれないね!」


「キンイロスナトカゲですか?」


「それは無理だと思うよ。」



ケイトによればキンイロスナトカゲを捕まえるには

8人くらいの大人数で行く必要があるらしい。



「誰に届けるんだっけ?」


「パーン(山羊に似た魔族)のナオ、という人物みたいですね。」

パンフルートを持って答えるアラン。






「届けてくれてありがとう。」

ナオは大きな角を撫でながら言った。

毛並みは整っていて真っ白だ。


「しかし、なんで依頼者は自分で届けなかったんでしょう?」

アランは不思議そうな顔をする。


「それは・・・。」

ケイトが下を向いた。

耳が少し垂れている。


「魔族を毛嫌いする人間。いるんだよたまに。

 僕は笛を作ってもらいたかっただけなんだけど。」


「どうして嫌うのでしょうか?」


「昔は、魔族も人間も仲良く暮らしていた、という。

 でもある時とんでもない悪さをした魔族がいてね。

 呪いをかけられるとか、とって食われるだとかそういう話になっていったんだ。

 迷信なんだけど信じてるやつも居る。」

ナオが説明する。



「ボクも半分は魔族だから、わかるよ。」

ケイトがしょんぼりしながら言った。


「君は、どちらかといえば人間寄りの見た目をしているけれど?」


「それでも、この耳を見ると嫌がる人もいるんだ。」


さっき依頼を受ける時に髪の毛で耳を隠していたのは、そういう訳だったのか。


「そうなんだ?ま、お互いたくましく行きていこう。」

ナオが手をケイトに差し出す。


「うん、街で用事がある時はボクが代わりにやってあげるよ。

 なかなか街中歩くのも大変でしょ?」

握手するケイトとナオ。





せっかく森まで来たので、いろんなアイテムを

収集しながら帰ろうという事になった。


「ケイトさん。」


「何?アラン。」


「ケイトさんのお母さんってどんな人なんですか?」


「お母さんが歩くとね、歩いた所に花が咲くんだ。」


「へぇ。」



「ボク兄弟がいっぱいいるからさ、よく1人でお花摘んで遊んでたよ。」


アランが急に立ち止まった。



「アラン?人に質問した時は、ちゃんと聞かないと・・・。」


「・・・・・・。」


「アラン?」


「あれは、何でしょう?」



アランが珍しく走って行った。


「えー!ちょっと待ってよ!?」






「ハリー!」


「どこだぁ!」


「おーい、ハリー!」


その頃バオの宿屋周辺では、犬のハリーの捜索がおこなわれていた。


「珍しいなぁ。リンコがハリー逃がすなんて。」

とディーク。


「うう、部屋の鍵がちゃんと掛かって無かったの。」

リンコが暗い顔で言う。


「そんなに遠くには行ってないと思うがな。」

ベガルが言った。






「・・・。」「・・・。」


実物大の犬の形をした茶色いチョコレート。


アランとケイトは、目の前にあるそれを観察している。

首に本物の首輪がついている。


「これさ、ハリーの首輪だよね?」


「ということは、このチョコレートはハリーなのでしょうか?」


「そんなバカな!ハリーがチョコレートになっちゃったっていうの!」



「この首輪は、私達が集めたキノコを使った手作りの首輪です。

 間違いなくハリーの物ですよ。」


とりあえず、そのチョコレートの犬を割れないようにそっと持ち上げる。

肉球部分はホワイトチョコになっていた。


「リンコさんがこんな手の込んだイタズラをするとも思えません。」


「そうだよね。ハリーなんだ、これ。

 まるで石みたいに動かないけどさ。」


「石!そうだ石ですよ!!」


「うわぁ、ビックリした。大声だしてどうしたの?」


「見たものを石に変えるモンスター。聞いたことはありませんか?」


ケイトがハッとした。


「コカトリス!ニワトリに似てるやつだ!」


「そうです。そしてハリーが見たのは・・・。」


「チョコカトリス?チョコッコッコ?

 名前わかんないけど、きっとそんな感じの・・・。」


「見たものをチョコレートに変えるモンスター!!」

2人は同時に叫ぶ。



「これはまずいですよ!

 私達もそのモンスターに見つかったらチョコレートになってしまいます!」


「ひえー!大変だ!ハンマー用意しとこう。」

そう言ってハンマーを握ったケイト。



「・・・・・・ってあれ、ハンマーがチョコになってる!?」


ハンマーの柄の部分がイチゴチョコのピンク色になっている。


「と、いうことは。」


「逃げろー!!!!!」






「うう・・・。ハリー・・・。ハリー・・・。」

目を真っ赤にしているリンコ。


必死でアランとケイトが持って帰ったチョコレートのハリー。



「あるだけ集めてきました。お使い下さい。

 溶けてしまっては元に戻せませんから。」

受付のマリーがタライに氷を入れて運んで来た。


「ドロドロになったら、えらい事だからな。」

ベガルが言った。


「そんな事言わないで!!」


「すまん。」



「ハリーはどうなるの?」

ケイトが心配そうな顔をして言う。


「チョコになるのは魔法によるものだから、それが解けてしまえば大丈夫だよ。」

ディークが言った。


「どうやったら解けるの!?」


「・・・そのモンスターを退治したら。」


「そんな!?」



ランランがやって来た。


「あたしもハリーのこと見るわ。リンコが寝てる間。」


「う、うう・・・。」


「だから、もう泣かないで。リンコ。」


「わかった。ひいっく、泣くのやめる。」

リンコは目をこする。


「・・・ところでアランはどこ?」

アランが居ないのに気がつくリンコ。



「あいつは、ハリーを担いで走ったのがキツかったらしいな。」

ベガルが視線をアランへ向けた。


ロビーの椅子に座ってぐったりしているアラン。


「また倒れるなよ?」

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