第7話
「うーん・・・バター・・・もう・・・たくさんです・・・。」
アランはバタースライムを退治した疲れからか倒れてしまったようだった。
泣きそうな顔でケイトが叫ぶ。
「アラン!アランってばー!!」
「ちょっと、しっかりして!」
リンコも叫ぶ。
「あ、そうだ!アランのカバンに治療薬が、もう1個残ってるよ!」
ケイトは思い出した。
「アラン、カバンから出していいよね!?」
言い終わる前にカバンから出している。
ケイトはバシャッとアランの頭に薬を振りかけた。
「うーん・・・・・・ん?私は一体・・・。」
「もー!」
ほっぺを膨らませるケイト。
「なんだ。心配したじゃない。」
ホッとするリンコ。
「あ、すみません。もう大丈夫です。」
立ち上がるアラン。
ポタッと治療薬が床に垂れた。
カーペットに青いシミが・・・。
「ああ!?お客様!!」
手に救急セットを持ったローラ・パピヨンが思わずセットを落とした。
床に散らばる、包帯、絆創膏、ハサミ、ピンセット、ガーゼ、綿棒、体温計。
「うわぁ、すみません。本当に、もう・・・。」
「いいえ、後で私がシミ抜きしますので大丈夫ですよ。
それより今日はもう休まれたらどうですか?」
翌日。
「今日もマリーさん、居ませんでしたね。」
アランは後ろめたそうに言った。
「風邪が治らないのかな?アランは1日で治ったのにね。」
ケイトが言う。
「ディークさんのくださった薬が効いたんじゃないでしょうか。」
「へー。」
乗り合い馬車の中。今日は青い水晶の洞窟へ向かっている。
「今日も帰りにコバルトフラワー摘んでいこうよ。」
「うっ。」
「どうしたの?アラン。」
「あの花。染料になるだけあって、手が青くなるんですよ。」
「じゃボクが持って帰るよ。」
「そうして頂けると、ありがたいです。」
アランは、クエストを広げながら言った。
『青い水晶の洞窟。蓄光砂を袋いっぱい(袋はお渡しします)。
1回のみ、1ゴールド20シルバー。』
と書いてある。
袋は先程、赤いレンガの小路で受け取り、アランが持っている。
「砂を運ぶのは重そうですね。」
「うん。でもボクがコバルトフラワー持ってくから、頑張ってね!」
「あ、はい。」
ひひーん、と馬が鳴いた。
「着いたね!行こうー。」
砂集めは難なく終わった。
洞窟の奥に砂が少しずつ降ってくる場所があり
その下に袋を置いて待つだけで済んだ。
「楽だったねー!」
「はい(重いですが)」
「じゃあコバルトフラワー摘んでこう!」
ケイトは花の群生に向かって走っていった。
「ま、待って下さい!」
「ふん♪ふーん♪お花お花♪あ、これ大きいなー。」
「そうですね。
ところで、何か音が聞こえませんか?」
「うーん、そういえば。
なんだかシュワッシュワッとした音がするね!」
「後ろの方から聞こえますね。」
そう言って振り向いた2人の前には。
「何もないね。」
「あ、下です。下ですよケイトさん!」
地面の方を見るケイト。
そこに居るのは・・・足のはえた大根のような・・・。
「うわー!マンドラゴラだよ!大変だー。逃げなきゃ!」
ケイトが耳を塞いでいる。
「え?小さい大根にしか、見えませんが?」
「これはモンスターだよ!
叫び声を聞いたら!死んじゃうんだよ!!」
「なんですって!?」
「逃げろー!!!」
「きえええええええ。」
マンドラゴラが鳴いた。
「もう遅いみたいですね。聞いてしまいました。」
「ボ、ボクも。」
「しかし、何もありません。」
「あれー?おかしいな?
・・・・・・なんかさ、喉が乾いてきた気がする。」
「そんな気もします。」
「とにかく、あのマンドラゴラを退治しよう!」
ケイトはハンマーを構えた。
「えーい!!」
ボカッ! ドカッ! ドーン!
ポカポカ! ボムッ! ボーン!
「きええぇぇ。」
最後の一撃でマンドラゴラは倒れた。
するとマンドラゴラの体がカサカサになって砂状になった。
「倒したんですか?」
「そうみたいだねー。」
と言って、ケイトがマンドラゴラから変化した砂の山をかき分ける。
「ドロップアイテム発見!これ何だろう?」
黒色の液体が入った大きな瓶が出てきた。
泡がプツプツしている。
「わかりません。帰ってから他の人に聞いてみましょうか。」
「そうだねー。じゃあ帰ろっか。」
「この瓶は私が持っていくのですか?」
「うん。お願いするよ!」
「・・・・・・。」
コバルトフラワーを換金しに商人広場へ向かったアランとケイト。
また薬屋で買い取ってもらうつもりである。
「治療薬って1日どれくらい売れるんだろうね。」
「そういえば使い切ってしまったので買い足した方が良いですね。」
話しながら歩いて行く2人。
「あのう、すみません!」
濃いピンク色をした果実をカゴに入れて持っている人物が声をかけてきた。
「そのコバルトフラワー、少し分けてもらえませんか?
ワタシの持ってるマゼンタベリーと交換してもらえませんか?」
左耳にだけピアスをつけている女だ。
ピアスは金色でトカゲの形をしている。
「マゼンタベリーも染料になるんですよね?」
「そうだねー。
・・・・・・特にボク達にメリットは無いかな。」
ケイトが言った。
「えええ。そんな!
じゃあ他のものでどうでしょうか?」
「たとえば他に何があるんですか?」
アランが尋ねる。
「これはどうでしょう?」
そう言ってピアスの女は巨大な胡桃を差し出した。
「ゲンコツクルミです。」
「それはマンドラゴラじゃないな。マンドラコラだ。
マンドラコラの叫び声を聞くと無性に喉が乾くらしい。」
ベガルはそう言うとグラスに注がれた
先ほど2人が手に入れた黒い液体をゴクッと飲んだ。
「・・・・・・って、ディークが言ってたと思うが。」
「本物のマンドラゴラじゃなくて良かったです。」
アランも飲んでいる。
「でさぁ、これは何なの?」
ケイトは手に持ったグラスをジーッと見つめている。
「コーラだな。」
「へー。」
「しかしな。昨日もモンスター倒したんだろ?
2日続けてモンスターに出会うなんて運が良いんじゃないか?」
「モンスターって珍しいんですよね。」
「オレも何回かしか会ったことないからな。あんまり詳しくは無いんだが。
あ、確かディークは自分で図鑑を作っているらしいな。」
ハムスターのための巨大胡桃も手に入れたし。頼めば見せてくれるだろう。
「皆何か飲んでる!何飲んでるの?」
リンコがやってきた。
「コラ―だよ!」
「・・・?」
「ケイトさん、コーラです。」
「ああ、コーラか!あたしにもちょうだい!」
「いいよー!」
「アラン、ケイト。ありがとうな。」
コーラを飲み干したベガルが言った。
「はい。買い取ってもらうという訳にもいかないですし。
2人じゃ飲みきれないですし。」
「え?これタダでいいの?」
驚くリンコ。
「いいのいいの!お世話になってるからさ、お裾分けだよ。」
「わあ、ありがとう!」




