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第6話

ディークは、自室の401号室でハムスターと遊んでいた。


「よしよし。いい子だココア。ミルクもいい子だ。」


黒いハムスターと白いハムスターを手に乗せてニヤけている。


「いい子で留守番してるんだぞぉ。」






「断らなかったの?アラン。」

ケイトが言った。


「はい。いつもディークさんにはお世話になっていますし

 ハムスターのような小さな生き物の餌になりそうな物を探すのは

 そう難しいことでは無いと思いますし。」


「じゃあ、ヒマワリの種かな?

 それとも新鮮な葉っぱとかがいいのかな?」


「宿の食事の野菜くずは、飼料として酪農家に渡されるそうで

 もらうことは出来ませんでした。」


「へー。」


「「まぁ、見つけた時にわけてくれればいいからな。」って

 おっしゃってましたから。」


「ちゃっかりしてるねー。ディークは。」



「そういえば、私達は害獣退治ばかりで

 モンスター退治をまだ経験していませんね。」


「うーん確かにそうだよね。クエストとは関係のないモンスターでも

 退治すれば、なにかしらのアイテムがゲット出来るみたいだし

 なにか退治してみたいなー。」



「あの、ケイトさん。」


「何?アラン?」


「失礼な質問かもしれませんが、モンスターと魔族ってどう違うのですか?」


「んー。人間の言葉を話せるかどうか・・・かな?」


「なるほど。」


「人間と意思疎通出来るのは魔族って呼ぶのがふさわしいとボクは思う。

 ゴブローとかさ。」


ファイターになってしまったゴブリンのゴブロー。

彼はモンスターでは無く魔族だったのか。



「とりあえず何をやる?」

クエストを見ているケイト。


沢山のクエストの中から、やりたいクエストを見つけるのは少し大変だ。

1つ1つじっくり読んでいたら日が暮れてしまう。


『紫の田園。畑の芋虫を駆除してくれる人募集。

 報酬は10匹あたり3シルバー。』


「このクエ、黄色いベレー帽の、あのおじいさんじゃない?」


「依頼場所見る限り・・・そのようですね。」


「たまには行ってあげようか。」


「ケイトさんは報酬に不満があったのでは?」


「そうだけど芋虫退治なんて楽そうじゃない!」






紫の田園。じゃがいも畑。

2人は、また絶句している。

芋虫は芋虫でも5倍くらいの大きさの・・・。


「うわー。こんなのひどいよー!」



「害獣とモンスターの違いって何なんでしょう?」


「この状況でも冷静だね。アランは。」


「こんな大きな芋虫はモンスターと呼んでもいいのでは?と思いまして。」


「でも、芋虫は何かアイテムを落としたりはしないんじゃない?」


「なるほど。」


「とにかく、芋虫やっつけよー!」




~10分後~


なんとか20匹倒した。

やはり、あまり割が良くない。


「ここまでにしましょう。」


「そうだね。

 ねー、アラン。なんか良い匂いがしない?」


「なにか・・・美味しそうな匂いですね。」


「くんくん・・・こっちの方角からだー。」


ケイトが、そう言ってその方向へ一歩踏み出した瞬間。


「うわー!!」

ツルッと転んでしまった。


「ケイトさん!?」


「なんか地面が、ヌルっとしてるよ。気持ち悪いなー。」


「おかしいですね。さっきまで乾いてたはずなのに。」


「あれ?あの白っぽい物体は何!?」

ケイトは指差した。


指の先には黄色がかかった白い立方体が見える。

それがゴロン、ゴロンとこちらへ向かって転がってくる。


「!?」


「おーい2人とも!」

依頼者のおじいさんが走ってやって来た。


「おじいさん。あの、あれは何なんでしょうか?」

アランは尋ねる。


「バタースライムさ!早く逃げるんだ!!」


「モンスター!?」

ケイトがキョトンとした。


「そう、じゃがいもを狙って現れる、恐ろしいモンスターだよ!」


「恐ろしい?ただの大きなバターにしか見えないよ??」


「とろけたバターに飲み込まれたいのかい!?

 さぁ、早く逃げるんだ!!」



「おじいさん、下がっていてください。私が退治します。」

アランは剣をバタースライムの方へ向ける。


「そ、そうかい?じゃあ、あとはよろしく頼むよ!」

と言うと逃げ出したおじいさんであった。



「大きなバター♪とろけるバター♪

 やっつけたらバターが手に入るのかな!」

ケイトもハンマーをブンブン振り回しやる気満々だ。



「行きますよ!とりゃ!」


アランは剣をバタースライムに刺した。


「どうですか!?」


しかし相手はバターだ。

ニュルニュルと切り口は塞がれてしまった。


「アラン、それじゃダメだよ!切り刻まないと!」


「なるほど!」



~30分後~


1つずつ紙に包まれている、バターが

じゃがいも畑に山積みになっていた。

バタースライムのドロップアイテムだ。


「この畑のじゃがいも全部じゃがバタにしても使い切れない量だねー!」

ケイトは見ているだけだったので元気いっぱいである。


「はぁ・・・疲れましたよ。」

アランはヘロヘロだ。


「じゃ、アランはここで休んでなよ!

 ボクおじいさんの所に行って、この事報告してくるからー。」

言い終わらないうちに走り出していたケイトであった。


「ふぃ・・・お願い・・・します。」

その場に座り込むアラン。


大量のバターが手に入ったものの

これをどうやって換金すれば良いのだろうか?


このじゃがいもとバターを使って商人広場に店を出せそうだけれど

畑の所有者はアランでは無いから出来ない。


おじいさんが少し買い取ってくれるかもしれないが・・・。



「アラン―!おじいさん喜んでたよー!」

ケイトが戻ってきた。


「このバター・・・せっかく手に入れたのに使い道がなさそうです。」


「え?そんなことないよー。」


「ん?何か良い方法があるんですか?」


「おじいさんがお礼に荷車貸してくれるらしいからさ。

 それで商人広場まで持って行けば大丈夫だよ!」

ケイトはニコニコしている。


「じゃがバタ屋は出来ませんよ?出店料だって払えないですし。」


「・・・・・・。」


「だから困ってるんですよ。」



ケイトは笑い出した。


「違うよ―。くすくす。

 ま、いいから一緒に運んでよ!」






商人広場。


「すいませーん!ちょっとお願いがあるんだ。」

とある店の人に声をかけるケイト。


前にバナナケーキを買った店である。



「なるほど。ケーキ屋ならバターを沢山使いますね。

 バター不足は深刻ですし、これはお互いにとって良いことですね!」


「はい。実にありがたいですよ!」

と店の人。



およそ20キロのバターは、4ゴールドになった。


「ケイトさん、2ゴールドどうぞ。」

アランが金貨2枚を差し出す。


「いいの?ボク何もしてないよ。」


「ケイトさんのおかげで換金することが出来たんですから。」


「へへー。ありがとう!」



「ところで・・・剣がバターまみれなのですが。」

アランのブロンズロングソードにバターがベットリ付いている。

これはキレイにしないといけない。


「じゃ、新しい剣を買ったら?ゴールド貰った所だしさ。」


「そうですね。そうします。」



2人はソード屋へ行った。


「これなんかどう?クレイモア!」

ケイトは大剣を指差している。


「両手剣ですよね。盾もありますから片手で持てる剣が良いですね。」


「そっか。」



「君ロングソードと盾を組み合わせてるのかい?」

店主が言う。


「え?」


「ちょっと長すぎるんじゃないかな。

 ロングソードというのは馬の上で使う物だから。」


「そうなんですか。」


「使う人の自由だけど、僕ならこれを勧めるかな。

 グラディウス。鉄の剣だ。」


「おいくらですか?」


「45シルバーだね。」



アランは新しい剣を手に入れた。

バターまみれのブロンズロングソードはタダで処分してもらう事になった。


「お買上げありがとうね。」

店主は読みかけの本『キンイロスナトカゲの生態について』を読み始めた。







今日の宿の受付はマリーではなく、ちがう人物だった。


紺色の髪でマリーと同じ制服を着ている。

名札にはローラ・パピヨンとある。


「おかえりなさいませ。お客様。」



「あれ?マリーはどうしたの?」


「彼女は今日、休んでいます。」


「どうしてでしょうね。」


「なんでも風邪でくしゃみが止まらないんだとか。」



「・・・・・・。」


「・・・・・・。」



「あら、2人とも帰ってきてた!ねぇ見てみて!」

リンコの声がした。


「わんわん!」


「あ、ハリーの首輪が新しくなってる!もう出来たんだね!」


「そう、さっそく漆黒の山にある洞窟に行ってみたんだけど、もう最高!」


「良かったですね。」


「うん、すんごく良かった!」



「ねーねー、ボク達もね、今日は大収穫だったんだよ!」

ケイトが胸を張る。


「あら?どんな収穫があったの?」


「モンスターをやっつけたんだ!アランが。」


「バタースライムです。とても疲れてしまいました。」


「見たこと無い!そんなの居るんだ!」


「田園のじゃがいもを食べるらしいです。」

アランはそこまで言うと、ふら~っと倒れてしまった。


「アラン!!!」

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