第28話
ケイトが、翌日になっても宿に帰ってこない。
昨日の夜、アランは街中を探したが、ケイトの姿がどこにも無かった。
宿のロビーの椅子に座っているアラン。
「アラン!ベガルから話を聞いたの!」
リンコがハリーを連れて、やって来た。
「リンコさん。」
「ケイトを探すの手伝ってあげようと思うんだけど、どう?」
「そんな事出来るんですか?」
「何か、ケイトが触った物を、持ってたりしない?
ケイトの匂いをハリーが辿って行けば、ケイトに会えるはずでしょ!」
「わんわん!」
アランはカバンの中を見てみる。
「あまり古い物はダメですよね。」
「そうかも。新しい方が失敗しないと思う!」
「あ、これはどうでしょう?」
「・・・葉っぱ?」
昨日ケイトがアランの手に魔法をかけた際に出来た葉っぱだ。
確か手に持って、ジッと見ていたからケイトの匂いがついているかもしれない。
リンコが葉っぱをハリーに近づける。
「・・・・・・わん!」
1回だけ小さく鳴くと、ハリーが歩き始めた。
アランとリンコとハリーは商人広場に入った。
昨日魔法の書を買った店の横を通り過ぎ、わらび餅屋の前でハリーが止まった。
「ここに来たんでしょうか?」
すぐにハリーは歩き始めて商人広場をぐるっと回った後広場の外に出た。
街の中を歩いて行く。
「ところで、どうしてケンカになったのかまでは聞いてないの。
良ければ教えてくれない?」
リンコが言った。
「魔法を使う練習をしていたんです。」
これまでの経緯を説明するアラン。
「確かに、魔法の書が随分と安くなってた。実はあたしも買っちゃったの!」
そう言って1冊の本を出したリンコ。
「『熱風の書』ですか?」
「そう、モンスターにダメージを与えるのに使えるけど
弱いのなら洗ったハリーを乾かすのにも使えるかなって。」
「なるほど。」
ハリーの動きが止まった。
場所は、乗り合い馬車の駅だ。
「ケイトさんは青い水晶の洞窟か、黄色の砂漠に行ったんですね。」
「まずは、青い水晶の洞窟に行くのがいいと思う!」
青い水晶の洞窟の駅で馬車を降りると、ハリーが再び歩き出した。
「ここで合ってるみたい!」
「そうですね。」
ハリーの後を追うアランとリンコ。
コバルトフラワーの生えている地面に、まだ新しい足跡が残っている。
「ケイトの足跡かも!」
「きっと、そうですね!」
足跡は洞窟の中へと続いている。
2人と1匹は、足跡を辿っていく。
「うわああああああ!!」
洞窟の奥から、悲鳴が聞こえた。
「ケイトさんの声ですよね!?」
「たぶんそうだと思う!」
「わん!」
走って声のした方へ向かう。
「だれかぁー!!たすけてー!!」
悲鳴がもう1度聞こえた。
さっきより大きく聞こえる。
「ケイトさん!」
「あ、アランとリンコ!」
ケイトが立っている場所と、アラン達のいる場所の間には
大きな穴が開いていて近づけない。
「どうしたんですか!?ケイトさん!!」
遠くから呼びかけるアラン。
「どーしたもこーしたも、あれを見て!」
ケイトが指差した方向を見るアランとリンコ。
「うわぁ!!」
「巨大なコウモリ!?」
人の背丈くらいはあるコウモリがケイトの方へ向かって飛んで来る。
「1匹だけだけど、バカでかいんだよー!!
なんかわかんないけど怒らせちゃったみたいなんだぁー!!」
今にもケイトを食べてしまいそうだ。
「あたしがなんとかする!」
リンコが短剣を取り出し、巨大コウモリに向かって投げる。
シュッと短剣が巨大コウモリの足に刺さった。
「ナイスコントロールですね、リンコさん。」
しかし巨大コウモリの動きが少し鈍くなった程度で止まらない。
「わああああああ!!」
ケイトが行き止まりに追い詰められている。
早く巨大コウモリを止めないと、ケイトが危険だ。
「剣じゃ間に合わないかも・・・。」
「ええ、じゃあどうするんですか!?」
「魔法を試してみる!ゼカイツア!!」
リンコが熱風の魔法の呪文を唱えた。
ビュオオオオという音をさせて空気の流れが出来た。
しかし、距離が遠いため巨大コウモリに届く前に冷めてしまい効果が無いようだ。
「そんな!」
アランは考えた。
まだ自分の魔法は練習中だ。火球がそれて、ケイトに当たるかもしれない。
だが、このまま見ていてもケイトがやられてしまう。やるしかない。
アランは右手を握った。
「イアルファボ!」
右手が火に包まれた。だが熱くない、成功だ。
「やった!」
そのまま右手を巨大コウモリの方へ向け、手を勢いをつけて開いた。
ビューンと火球が飛んで行った。
火球はコウモリの頭上を通り過ぎ、岩壁にぶつかった。
「外れちゃった!?」
リンコが叫ぶ。
ゴゴゴゴゴゴ。
火球に刺激された岩壁が剥がれ落ちた。
剥がれ落ちた岩が巨大コウモリに命中する。
巨大コウモリはバランスを崩し穴の中に落ちていった。
「助けてくれて、ありがとう!もーどうなることかと思ったよ。」
水晶洞窟の外へ出て、ケイトが2人に礼を言っている。
「あたしは、何もしてない。助けたのはアラン!」
とリンコは言うと、先に乗り合い馬車の駅へと向かっていく。
「あの、ケイトさん。」
「何?」
「昨日は、ごめんなさい。ひどい事を言ってしまいました。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「何かあったっけ?」
キョトンとするケイト。
「え・・・!?」
「助けてくれてありがとう!アラン!!」
スキップしながらリンコの後を追うケイトであった。




