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第27話

「『無限増殖の秘密を解く鍵は雷属性か!?』だって。」


食堂で、ディークが新聞を読みながら言った。



「もう記事になってるんだ!?」

ケイトが驚く。



「『魔力研究所の研究員マリッサ・リズ氏による発表によると

 雷の魔力が、無限増殖魔法につながる可能性が高いという』」


「『魔力研究所は無限増殖を偶然引き起こさせる事に成功した

 ランラン・シェライタ氏を新たに研究チームに加える事にしたそうだ』」


ディークが皆に聞こえるよう、記事を読み上げる。



「ランランさんすごいですね。新聞記事に名前が載っていますよ。」

アランはランランの席を見た。


席は空っぽだ。


「もう、ランランさんは、出発したんでしたね・・・。」




「雷属性の攻撃魔法の書が、品薄になりそうだ。」

腕組みして、ディークが言った。






ディークの言った通りだった。


クエスト掲示板では、「雷属性の魔法が使える人は、居ませんか!?」と

募集する声がたえなかった。


商人広場では、イカヅチの書や麻痺の書が3倍以上の値段になっていた。



「雷属性ばかりが人気なので

 他の属性の魔法の書を買うなら、今がチャンスですよね。」

とアランは売れ残っている魔法の書の前で言った。


「地割れの書。影の書。発光の書。

 それから雪崩の書に水流の書。いろいろあるねー。」


ケイトが1冊の書を手に取った。


「森林浴の書?これは、どんな魔法なんだろう?

 ・・・・・・、すみません、これはどんな魔法なんですか?」

ケイトが店の人に尋ねる。


「木属性の癒やしの魔法だね。15ゴールドでいいよ。」


「うわぁ、いいね!ボク、これにするよ!」


ケイトは、森林浴の書を買った。



「で、アランはどうするの?」


アランは色々な本を手にとっては置き、手にとっては置き考えていた。


「ケイトさんには、植物に関しての知識がありますし

 その森林浴の魔法は向いていると思います。

 私には、何が良いのか。わからなくて。」


見かねた店の人が1冊の本を取って言った。


「魔法初心者には、1つの属性に特化した魔法がオススメだよ。

 これなんかどうだろうか?」


火球の書であった。


「おいくらですか?」


「普通40ゴールドはするんだけど、こんな状況だから20ゴールドでいいよ。」


アランは火球の書を買った。



自然界には、魔法のエネルギーが漂っている。

それを利用するには、魔法陣を頭の中で描き、呪文を唱えるだけで良い。


というと簡単に聞こえるが、魔法陣の形は複雑で覚えるのは難しい。

呪文も噛まずに言えるようにならねばならない。



パラパラとページをめくって、一通り読む2人。


「『反時計周りで三角を描くようにして、次に時計回りに四角を描いて。

 また反時計周りで丸を描いてから右上に涙型を描く』うわー。難しいよー。」

ケイトはパニック気味になっている。


「で、それと同時に『クンヨリシン』って唱えれば良いんだ。

 うん、出来るよ。ボク出来るようになってみせるよー。」

自分に言い聞かせるようにブツブツ言っているケイト。


「・・・・・・。」

アランは黙って読んでいる。


逆さの涙型を時計周りで2重に描いてから

同じ時計回りに四角で囲みアーチ型を描いてから丸で囲む。

それがアランの火球の書の魔法陣だった。


「練習が必要ですね。せっかく買ったんですから

 出来るようになるまで練習しましょう。」



2人は緑の森へ向かった。






森の中に、木や草が生えていなくて、少し広くなった場所がある。

そこで練習することにした。


「クンヨリシン!・・・違うか。クンヨリシン!!」

ケイトがピョンピョンしながら叫んでいる。



アランは剣と盾を外し地面に置いた。


火球の書の魔法陣が載っているページを開き、左手に持つ。

そして、右手をグッと力を入れて握った。


「イアルファボ!」

アランは呪文を唱えた。



「・・・・・・あついっ!!」

思わず叫ぶアラン。

右手の中指に水ぶくれが出来た。


陣の形を間違えると上手く火球が出来ない。

正しく頭に描ければ、熱く感じる事は無いはずだった。



「もう一回。イアルファボ!!」

今度は右手から汗が止まらなくなった。



「難しいですね。」


「そうだね。クンヨリシン!」


アランの右手に向かって指差しながらケイトが唱えた。

すると、手のひらに溜まっていた汗が1枚の葉っぱに変わった。


「え!ケイトさん。これは成功では!?」

葉っぱをケイトに見せるアラン。


「治ったの!?え、ボクすごい!!」

ケイトが葉っぱをアランから受け取りジッと見ている。



「火傷も治せますか?」


「まかせて!クンヨリシン!!」


何も起こらなかった。



「あれ?おかしいなー。」


「もしかして、火の魔力と木の魔力なら

 火の魔力の方が強くなるから・・・ですかね?」


「もっと強力にかけないと、いけないのかー。」


「魔法の熟練度が上がれば治せるのかもしれませんね。」

そう言いながら治療薬を取り出し、手に振りかけるアラン。


「とりあえず、アランも出来るようになろう!頑張れー!」

飛び跳ねて応援するケイト。


「はい!行きますよ、イアルファボ!」






結局3時間ほど練習したが、アランは火球を作り出す事が出来なかった。

今日は諦めて帰ることにした。



「明日は出来るよ。また練習しよう、ね?」

ケイトがアランの顔を覗き込みながら言う。


「いいえ、ずっと練習ばかりしているわけにはいきませんよ。」



「えー?ちゃんと出来るようになろうよ。」


「私には素質が無いんです。ケイトさんとは違うんです。」



「その言い方は無いんじゃない?」

ムッとするするケイト。


「ケイトさんこそ、自分が先に出来たからって偉そうですよ!」

口調が荒くなるアラン。


「・・・・・・。」


「・・・・・・。」

2人は黙ってしまった。


しばらくの沈黙の後、ケイトが叫んだ。


「もう、いいよ。アラン。ボク、キミのことなんか知らないよ!!」


ケイトが走り去っていく。


「私だって、知りませんよ!!」






その日の夕食の時間。


「おい、ケイトはそうしたんだ?」

ベガルが空っぽのケイトの席を見て言った。


「・・・・・・。」


「何があったんだ?」



隣のテーブルのディークもやって来た。


「アラン、話せば楽になるかもしれないよ。」

ディークが空いているベガルの隣に座る。


アランは、2人で魔法を覚えようとした事。

ケイトだけが先に習得してしまった事。

出来ない事が悔しくて、ついケイトに当たってしまった事を話した。



「ふむ、なるほどね。」


「そうだったのか。」


ディークとベガルが納得する。



「私が悪かったんです。早く謝らないと。」

アランが席を立つ。



「ケイトがどこに行ったか、わからないんじゃないのか!?」

ベガルが慌てて言ったが、すでにアランは食堂から飛び出していた。

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