第13話
「なんだと!」
「すげえな。」
「驚いたわ。」
「そんなに人気なんですか。」
「ボクもビックリだよ。」
ケイトが大量の銀貨を、やっとの思いで運んで帰ってきた。
なんと250箱のチョコレートセットは完売したらしい。
「だからさ。今日は300セット作ろう!」
次の日の早朝。
300セットの箱を手分けして商人広場まで運ぶ。
「今日は1人4回くらい往復しないといけないかな。」
ベガルが言った。
1度に運べるのは10箱~20箱くらいなので、そんなものである。
「商売って大変ですね。」
アランが紐を切りながら言う。
「そうだなぁ。
ところで、売上はどこに置いてあるのかな?」
ディークが、アランの切った紐でチョコレートの箱をひとまとめにしている。
「ケイトさんの部屋にあります。
どれだけ売れるかわからないですし、分配するのは最終日になりますね。」
「全部置いておけるのかな。みんな銀貨だろう?」
「昨日の売上いくらだ?」
「5シルバーが250セットで1250シルバーですね。」
「・・・置ききれなくなる前に、早めに言ってくれるといいが。」
「そろそろ食堂を開ける時間なのですが?」
「すみません、マリーさん。すぐに運び終わりますから。」
朝6時になったが、まだ少しチョコレートの箱が残っていた。
「なるべく早くお願いします。」
朝6時10分になって、ようやくすべてのチョコレートが運び終わった。
商人広場は7時から開く。そして21時までやっている。
14時間の間に300個売れるのだろうか?
「それにしても、ショコラトリスが珍しいモンスターとはいえ
無限に出てくるチョコレートの缶だなんて、おかしいと思う。」
ロビーでリンコが呟いた。
「なんでそう思うんだ?」
ベガルが言った。
「だってアランやケイトみたいな初心者が倒せちゃったわけでしょ?
もっと腕の立つ冒険者が、すでにショコラトリスを倒していて
それこそ先に、チョコで生計を立てていそうじゃない?」
「ディークも一緒だったんだろ?」
「そうだけど、何か変な気がしない?」
「何も変な事は無いと思うよ。」
ディークが言った。
「モンスターのドロップアイテムはその度変わる。
量がほんの少しだったり、ものすごく大量だったりするものだから。」
「もしかして、今回のショコラトリスが、大当たりだったって事なの?」
「レアドロップ、と言われる物だね。」
「いいよな、一生チョコ売って暮らせるじゃないか。」
「ふふふ、ベガルが手に入れてたら、冒険者辞めるところだったかもね。」
「うっ・・・。」
「ええ?図星なの?」
「すみません、ちょっと良いですか?」
チョコレートショップでチョコを5箱買ったばかりの
大きな鎌を持った人物が店番のケイトに声をかけた。
「どうしたの?」
ケイトはその人物の方を向いた。
「こんなに大量のチョコ。どうやって用意したのか
興味がありまして。価格も安いですし。」
「あー、それはね。かくかくしかじか・・・。」
これまでの経緯を説明するケイト。
とても得意げだ。
「なるほど。魔法のチョコだったのですね。
その缶は今どこにあるのですか?」
「ボクの部屋だよー。」
「そうでしたか。邪魔をしてすみませんでした。」
鎌を持った人物が深々とお辞儀する。
「いいのいいの、今お客さん居なくて暇だからさ。」
昨日は20時頃にすべて売れてしまったチョコレートだったが
今日のペースでは売り切れまでは行かないかもしれない。
「魔法のチョコを生み出す缶か。」
鎌がキラリと光った。
「いつもありがとうなの!」
「いいえ、こちらこそありがとうございます。」
アランは紫の田園のクエストをやっている。
報酬がやや多めの赤い髪飾りの女の子の所で。
「前に一緒にいた子は、今日も居ないの?」
「はい、商人広場で店番をしているんです。」
「何を売っているの?」
「チョコレートです。」
「そうなの!?後で買いにいこうと思うの。」
「ぜひ、お願いしますね。」
「おじいさんやおばさんも誘って、皆で行くの!」
アランは地道に宣伝していく。
少しでも売上を増やすために。
ふと気がつくとアランの後ろに白いフードの人物が立っていた。
ヨル・ヒックだ。
「・・・・・・。」
「あ、ヨルさん。こんにちは。」
「・・・・・・。」
「いきなり後ろにいらしたのでビックリしました。」
「・・・・・・。早く帰ったほうが良い。」
「え?」
アランはキョトンとする。
「どういう意味ですか。」
「・・・・・・。これ。」
ヨルがピンポン玉くらいの水晶玉をアランに見せる。
アランが水晶玉を覗き込む。
あのチョコレートの缶が見えた。
「チョコレートの缶ですね。」
「・・・・・・。よく見る。」
眉間にシワが寄るヨル。
よく見ると、その缶を持っているのはケイトでは無い。
ディークやベガル達でもない。知らない人物で大きな鎌を持っている。
「・・・・・・。水晶玉は未来を映す。」
ヨルが言った。
「・・・・・・。早く帰ったほうが良い。」
走って宿に帰ったアラン。
あの缶は無事なのだろうか。
「あの、マリーさん!」
受付のマリーは息を切らせたアランに気がつく。
「どうされましたか?お客様。」
「ここに、怪しい人が来ませんでしたか!?」
「大丈夫ですか?お客様。」
掃除をしていたローラが驚いている。
「私は大丈夫です、それより、缶が危ないかもしれないんです。」
「どういう事です?」
「説明は後でします、ケイトさんの部屋に誰か入ってないか確かめないと!」
「荒らされた形跡は、ありません。心配要りませんね。」
部屋を確認してきたマリーが事務室に入って言った。
「つまり、ヨル・ヒック様が少し先の未来を、お見せになったと。」
ローラがアランの話を聞いている。
「あの缶が盗まれたら、広場に商品が並べられず大変な事になります!」
もしもそんな事があったら、と考えるだけで寒くなる。
「貴重品の紛失については、当館では責任を負いかねますので。」
マリーが言った。
「そうですよね。」
「アラン・ケタブリル様。
なるべく私達も注意しておきますが万が一の場合は・・・。」
ローラは心配そうな顔をしている。
「・・・・・・。」
とにかく、この事はディーク達にも話しておいた方が良いだろう。




