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第12話

朝5時の商人広場。


受付用紙に細かい、いろんな事を記入していく。


「商品は食品で菓子類。店長、ケイト・ポリフェン。

 責任者、ケイト・ポリフェンっと。」


ケイトが一生懸命書いている。



「1人で大丈夫なんですか?」


「うん、大丈夫だよ!

 アランは1人でクエスト頑張ってきてよ。」

どこで買ったのか水色の割烹着姿のケイトは元気に答えた。



一週間ケイト無しで、クエストをやる事になってしまった。

旅の始めからケイトに出会っているから1人になるのは始めてだ。


「・・・・・・。」



何をやったら良いのだろうか?

アランは掲示板の前で悩んでいた。


ずっとケイトが一緒だったし、ケイトが主導権を持っていたから

あまり自分で決めたことが無かった事もあり迷ってしまっていた。


『紫の田園。畑にイタズラをするキツネ共を退治してほしい。

 報酬は1匹につき5シルバー。』


このクエストが良いかな。






紫の田園の依頼者の所へ行く。

依頼者のおばさんはピンクのエプロンをつけていた。


「そんなに数は居ないんだけど、とにかく頭が良いから困っちゃって。」


「そうなんですか。」


「タマネギ畑の方に居るわ。よろしくね。」



紫のタマネギが生えた畑。

1匹のキツネがタマネギを引っこ抜いている。


「退治しますよ!」



~30分後~


7匹退治した所でおばさんが声をかけてきた。


「ありがとう、もう良いわ。」


「あ、そうですか。」


「35シルバーね。」


35シルバーだと2人じゃ割り切れないなと一瞬思ったが

今は1人だったという事を思い出した。


「はい、ありがとうございました。」



誰かとパーティ組むのも良いかもしれないな。

この前のディークさんみたいに。


午前中のクエストを終えたので商人広場に様子を見に行ってみる事にした。






「すごいですね!?」


「すっごいでしょー!」

ケイトがピョンピョン跳ねて忙しそうにしながら言う。


「この行列!」



ケイトのチョコレートショップは大賑わいであった。

特にバオの宿屋で食事つきの宿泊者や従業員に配ったのが正解だったらしい。

口コミで、あのチョコはとても美味しいと噂になっていたようだ。


「アランは、クエスト頑張ってるの!?」


「はい、とりあえず宿の代金分は稼ぐことが出来ました。」


「おー。良かったねー。あ、はいどうぞ!」

客にチョコレートの箱を渡している。


なんだかとても忙しそうだ。

あまり邪魔はしないでおこう。






『紫の田園です。シロウサギが現れて大変なんです。

 3匹につき10シルバー。』


赤い髪飾りの女の子である。


「またニンジン畑ですかね。」


「そうなの。よろしくなの。」


「ウサギってニンジン食べるんですね。」


「違うの、食べずに踏み荒らすだけなの。」


「そうなんですか。」



~30分後~


9匹のウサギを退治した。

前回のクロウサギは6匹くらいだったと思うので

腕が上がったのだろうか。


「あの、もう少しやってくれると助かるの。」


「わかりました。」


剣を構えるアラン。



結局全部で15匹退治し50シルバーを貰った。

1時間かかった。


帰ったらチョコレートを詰める作業が待っている。

今日はこのくらいにしておこう。






少し、いつもよりも早い時間に宿に帰ってきた。



ロビーの受付でマリーが慌ただしくしている。


「では、お客様。どこで紛失されたのか、おわかりになりますか?」


マリーの前には長めのオレンジ色の髪を横に流している男。

確か食堂でランランと同じテーブルに居た人物だ。


「かたじけない。朝はあったんだが、チョコレートショップの雑踏で

 落としてしまったようだ。」


「商人広場ですね。後で問い合わせておきます。」


代わりの鍵を受け取って男は振り返った。

アランに気が付き会釈する。


「昨日は、チョコレートをありがとう。早速買いに行った。」


「あ、それはありがとうございます。」


「アラン・・・だったか?」


「はい、アラン・ケタブリルと申します。」


「拙者はタス・チャン。202号室だ。」



この宿にはディーク達の他にも冒険者が泊まっている。

まだ挨拶していない人物は他にもいる。


他の冒険者と話をしてみるのも良いかもしれない。


そう思いながら階段を上がって3階へ行く。



このバオの宿屋は4階建てである。


1階は食堂があるので宿泊する部屋は無く2階から4階まで

各階6つずつ部屋がある。つまり3フロア6つで18部屋だ。


食堂のテーブルの席は各階でわけられている。

今のところ3階のメンバーはアランとケイトとベガルだけなので

誰も居ないか、もしくは宿の食事をつけていない人物が居るということだ。


今まで気にしていなかったが、誰か居るのだろうか?



3階に着くと巨大なペンギンが居た。


「うわ!?」


まさか宿の中にモンスターが!?

アランは身構えた。



「どうしたんです?大きな声出して。」

ペンギンがクルッと向きを変えると人の顔が見えた。


「それ、着ぐるみですか?」


ペンギンの顔出し着ぐるみを着た人間だったようだ。



「そうです。わたくし、ペンギンがとても好きでして。」


なるほど、ペンギンの着ぐるみだけでは無く

ペンギンのぬいぐるみまで持っている。



「私は306号室に泊まっています。アラン・ケタブリルと申します。」


「そうでしたか。わたくしはオペン。オペン・アイチョです。」

そう言うとオペンは303号室に入って行った。






ガラガラガラ・・・。


食堂の扉が開いた音。

アランが一番に食堂に入っていった。

他の冒険者と雑談するためだ。



「あ、チョコの人!昨日はありがとう。」


「部屋に持って帰ってから食べたけど、すごく美味しかったよ~。」



2人組が、アランに話しかけてくれた。


「2人は、どこの部屋の方なのでしょうか?」


「わたしが402号室よ。それでこっちは403号室。」

ミニハットをつけた女の子、レミ・ファが言った。



「ぼく達、姉弟で旅をしているんだ~。」

顔にホクロがある男の子シド・ファは言った。


「よく似ていますね。」


2人共グレーの髪で、同じような長さをしている。



「あ、ヨル!ヨルもちゃんとお礼言った?」

レミは白いフードの人物に声をかけた。


フードが深すぎて男か女かわからない。


「・・・・・・。」


「ヨル?聞いてる?」


「あの方も4階の方ですよね。」



「うん、ぼくらと同じ4階の・・・404だっけ?」

とシド。


「・・・・・・。」


「405じゃなかった?」

レミが訂正する。


「・・・・・・。405が合ってる。」

やっと喋ったヨル。低い声だったのでたぶん男だ。


「ヨルは無口なんだよね。」

シドが呆れている。



ファ姉弟によれば、404は空室らしい。


「と、いうことは401がディークさん。402がレミさん。403がシドさん。

 404が誰も居なくて、405がヨルさん。406がリンコさんですね。」


「そういう事になるね~。」



「・・・・・・。ヨル・ヒック。」

唐突にヨルが名乗った。


「あ、アラン・ケタブリルです。どうぞよろしくお願い致します。」



ランランが食堂に入ってきた。


「あ、ランランさん。あの、ちょっと聞きたい事があるのですが。」


「何かしら、アラン。」


「2階には何人が泊まっているのでしょうか?」


「んー。そうね、全部埋まってたはずよ。

 食事は宿のじゃない人が多いみたいだわ。」


確かに、いつも2階組のテーブルはランランとタスしか居なかった気がする。


「チョコレートの話をしたらロッキーが興味持ってたわ。」


「ロッキーさん?」


「206号室に居るから、あたしの隣なの。

 あ、アランの真下の部屋じゃない?」


「そうなんですか。」


「おいらも食事つけてれば、チョコもらえたのか、って悔しそうにしてたわ。」

ランランは笑いながら言った。


「後で紹介してあげるわ。」






夕食後の2階廊下にて。


「初めまして。アラン・ケタブリルと申します。」


「やぁ、上の階の人なんだって?」


「はい。」


「おいら、ロッキー・エフモンド!」

金色のアフロヘアの男は言った。



「すごい髪型ですね。」


「よく言われる。服装も変わってるって。」


確かに、すごく派手なシャツを着ている。


「前から気になってたんだけど、どこで買うのかしら?

 そんな変わった服は、なかなか売っていないわよね?」

ランランが言う。


「ふっふっふ。探せばあるんだよ。売ってる店。」


「そうなんですか。」


「そうなんですよ!」

おどけた調子でロッキーが言った。



「1週間、広場に店を出してるんだってね。おいらも買いに行こうかな。」


「ぜひ買って下さい。お願いします。」



そこに1階から駆け上がってきた者が居た。


「ランラン!食堂で他の人が探してるわよ!」

赤紫の短い髪をした女が言った。


「今行くわ。」

返事をするランラン。


「わかった。早く行きなさいよ。」

そう言うと女は、また下に降りていった。



「どなたですか?」


「204号室のベイカ・モニークね。」

ランランが答えた。


「早く行った方がいいんじゃないのかな?」

心配するロッキー。


「そうですね。行きましょう。」

アランは階段へ向かった。



今日はケイトが店番で21時まで広場に居るため

チョコレートの箱の組み立ては4人でやらねばならない。


時間もかかるだろう。早く食堂へ行こう。

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