3話 アッシュ(灰色)
よろしくお願い致します。
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その問題とは──
──残された人類の脅威となる存在の誕生──
それは隕石が降ってきた厄災の日。
その日以降、姿を現す様になった正体不明の怪物。
元はペットの犬であり、猫であり、そして飼い主の人間であった。
原因は今も不明。しかし、その厄災の時に彼らは変化したのだ。禍々しい外見を持つ怪物へと──
人々はそれを『変異体』──そう呼称した。
そしてその時に、身体を変化させられた存在がもうひとつ。
……いや、身体の持つ「力」を覚醒させられたというべきか。そう、それは常人ではあり得ない“力”、『能力』。それを使う事ができ、またその自身の身体能力も飛躍的に向上させた存在。すなわち、俺みたいな奴の事だ。
人は俺のような者達の事を『能力体』──そう呼んだ。
俺の相棒であるあいつもそうだ。
特にあいつの持つ『能力』は強力で、かつ使用できるその種類も多い。俺があいつとまともにやり合ったとしても、おそらくは敵う事はないだろう。
俺はいつか、あいつが超常現象まがいの事をやってのけたのを目撃した事がある──あれが「超能力」っていうやつなのだろうか?
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そんな事を考えてるうちに、今の生活をしている街の残骸を修復させた俺の集落へと辿り着いた。
木や鉄の杭を等間隔で打ち込み、その間に鉄線を引いただけの簡易の囲い。その途中にある門を通り抜け、集落の中へと入っていく。
俺は本日の獲得品を持ち、集落にある交換所へと足を運んだ。
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「──おうっ、アッシュじゃねぇか。どうだ、本日の稼ぎは?」
店内に入ると、その姿を確認したガタイのいいおっさんが俺に声を掛けてきた。
「ああ、今日はこんぐらいだ。おっさん、早速頼む」
そう言いながらドサッと一式、本日の獲得品をカウンターの上へと並べた。そして俺はおっさんに対して会心のドヤ顔を向けてやる。
──ヒューっと、おっさんが喉を鳴らす。
───
さっきからおっさんとしか呼んでないな。最初会った時に聞いた気もするが、名前。忘れちまった──許せ、おっさん。
そう心の中で謝罪する俺。そんな心情におっさんは気付く筈もなく、そのまま言葉を続ける。
「すげぇな、さすがアッシュ。新入りながらもこの集落一番のトレジャーハンターだけの事はあるぜ!」
おっさんが賛美の声を上げる──いやいや、これくらい大したことないっすよ。えっへん!!
「おめぇは、本当にすげぇ奴だよ。そんなガキっぽくて可愛い顔してんのにさ」
──!?……何、だとっ──!!
俺の殺気だった鋭い眼光の視線が、おっさんをギラリと捉える。
「──あ……おっと、こりゃおめぇにとっちゃ確か禁句だったよな? 悪りぃ悪りぃ、コホン。えっと、その……ちょっと待ってな……」
そう言いながら、奥へとすっ込んでくおっさん。
「………」
──あ″ーーーっ!! どうせ、俺の顔はガキっぽいですよっ! くそっ、童顔っていう俺のコンプレックスに触れてきやがって! あのおっさんの野郎め!!
しかし、おっさんとこのやり取りはこれで何度目だ?──はっ、もしやあのおっさん。その手の趣向の持ち主なのか!?
背中に悪寒が走るのを感じ取る俺であった──な~んちゃって……さっ、冗談はこれくらいにしておこう。
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それにしても灰色か……。
アッシュ──この名前は俺の偽名だ。ちなみに俺の髪もアッシュブロンドである。だからといってこの名前にした訳ではない。理由は──
そう、イカれてしまったこの世界に対して、皮肉のつもりで名付けたのだ。
灰色……この今の世界にふさわしい色じゃないか、そう思うだろ?
「……はんっ、へへ……」
思わず口から、小さく失笑の声が漏れる。
俺の相棒、あいつもこの集落では偽名を名乗っていた。
その名前は──“エテルナ”。
あいつがなんでそう言う名前にしたのか、その理由は知らない。別に響きだけで特別、意味はないのだろう……まあ、多分だけど。
ちなみに、あいつとはあの厄災以降、直ぐに出会い、お互い『能力体』である事を知り、その事も相まって意気投合し、行動と生活を共にするようになった。
そして、俺達が偽名を名乗っているのには理由がある。
それは……以前、俺達が生活していた集落に於て、ある戦闘でその『能力』を使用せざるを得ない場面に遭遇し、実際使用した。そして人として異常で強力過ぎるその“力”──それにより周囲の人々から向けられる畏怖と奇異の眼差しに、俺達は苛まれる事となった。
無理もない。俺達『能力体』はあの時に時を同じくしてその身に変化を遂げた、いわば奴らと同じ一種の『変異体』なのだから──
そしてそれ以降、俺達は偽名を名乗る様になった。ずっと安住できる集落を探し求め、問題が生じては逃れる様にしてその場所から離れ、その都度集落を転々としていく。
そんな中、今のこの集落にたどり着き、向かい入れられる事ができた。それが約三ヶ月前の事となる。
俺達ふたりは、今度こそはこの集落を離れるような事にはなるまい、そう誓い合ったものだ。
だが、相棒であるあいつの姿は今、この集落にはない。ちょうど今日の朝早く、資材の確保と調達、それと他の集落との交流──それが内容の遠征とは名ばかりの三日間の旅に出発しているのだった。
本来ならそのメンバーの中に、俺の名前も含まれていたのだが……。
実はその前日、つまり昨晩。つまらない事が原因で俺とあいつは大喧嘩をしたのだった……それで何となく気まずくなり、俺だけその予定をキャンセルしたのだ。
───
あ″ーーーっ! 別に拗ねてる訳じゃないからなっ! それにあいつだって、なんであんな事くらいで怒ったのか訳が分からない……とにかく、俺は今日から三日間お留守番って訳だ。
勿論、その間大人しく部屋に閉じ込もってる気なんてさらさらないけどなっ!!
ちょっと、何か回想が長くなってしまったが……腹減ったな……っていうか──
──おっせーよっ! おっさんっ!!




