2話 壊れた世界
よろしくお願い致します。
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──迫ってくる赤黒い体色をした二足歩行の獣──
その体皮には、びっしりとたくさんの血管の様な赤い筋が浮かび上がっている。
俺は半身を廊下へと乗りだし、その体制のまま怪物に向けてハンドガンの銃弾を浴びせた!
銃音が響き、放った銃撃を受けた怪物の身体が一旦怯んだ。
──が、そいつは直ぐに体制を立て直し、再び突進してくる。
再度ハンドガンの銃弾を放つが、それを受けた怪物は、流れる赤い体液を撒き散らしながら、今度は怯む事なく突っ込んできた。
───
くそっ!……やはりハンドガン程度じゃ話にならないか──
俺は咄嗟に銃を持たない方の、左手を前へと突き出した。そして“力”を行使する為に念じる。
瞬間、俺の手のひらから前方に向けて、青白い稲妻のような光が迸った!
一瞬、その光に暗い廊下が照らし出され、それを受けた黒い怪物の身体が、バラバラの肉片となって弾け飛ぶ。
肉が焦げる嫌な臭いが鼻につき、辺りに漂う。
そしてその怪物の後を追う様に、新たな複数の怪物。『変異体』が姿を現す。
その中に、俺が最も忌み嫌う憎悪の対象となる者の姿があった。
元は人間だった『変異体』──
二足歩行である事以外ほとんどその原形を留めていないその姿に、俺は今となっても悪夢となって自分を苦しめ続けるある者の姿を思い浮かべる。
「……また俺に焼き殺されてぇのかよ──?」
手に持っていたハンドガンを放り投げ、替わりに腰のベルトに取り付けていた、一本の折り畳み式のサバイバルナイフを手に取る。刃先を出し、それを前へと突き出した。
そして再び念じ、“力”を発動させる。
サバイバルナイフの鋭い切っ先に、青白い棒状の発光体が伸びる。高エネルギーの青白い光──いわば光の剣だ。
俺の“力”。その『能力』のひとつであるさっきの電撃は、攻撃力こそ凄まじいが、瞬間的な物であってその形を長時間留める事はできない。が、この様に金属製の物を通して発動すれば、今の俺の手の中にある形状で、その原形を保てる事が可能なのだ。
──まあ、最もその原理も、仕組みも全く分からないのだが……。
そして今の、俺自身の身体能力も常人を超越していた。そう、ある意味、俺もこいつらと同じ“異常”な者なのだ──
俺はその光の剣を振りかざす。
群がるように迫ってくる多数の怪物。『変異体』達。
「……ったく、お前らさえ出てこなきゃ、このクソッタレな“力”。使う必要なんてなかったのによっ!!」
そう吠え、俺は光の剣を振り上げながら『変異体』の群れに飛び込んでいった。
◇◇◇
「ミッション・コンプリート。お疲れさん、俺、な~んてな。ははっ──」
そうおどけながら建物の傍らに止めて置いてあった、自分のバイクに跨がる。勿論、後部荷台には今回入手した大量の戦利品が縛り付けてあった。そしてキーを回しバイクを発進させる。
振り返ると、俺が今まで侵入していた軍事施設らしきであろう建物が小さくなっていく。
俺は視線を前へと戻し、スピードを加速させた。
「ああ、疲れた。今日はちょっと失敗。『能力』を使い過ぎちゃったな……」
今、俺達が生活している街。その集落に向けてバイクを走らせている。
あっ、ちなみに俺達って言うのは、俺と行動を共にしている相棒の事だ。今はちょっと別行動を取っているけどな。
───
帰路を走り抜けるその間、目まぐるしく辺りの景色が俺の目に入り込んでくる。
大きな建築物の残骸、破壊された街道、そして焼き爛れた大地。中にはえぐられるようにして残る大きなクレーターの跡も──
「しかし、いつ見てもひでぇもんだな……」
思わず、そう言葉が漏れる。
───
もう、三年くらい前になるだろうか。
それは突然やってきた。
俺達人間が文明を創り上げ、生活を営むこの世界。この星に突如として多数の大、少、の隕石群が現在の文明の力を以てしても、全く予知される事なく降注いできたのだった。
その激しいエネルギーと衝撃により、地表はことごとく破壊し、焼かれ、発生した大洪水によって呑み込まれる事となった。
長い歴史の中。築き上げてきた人類の文明、または国家が、次々に失われていく。
だが、人間達はまだ滅んではいなかった。
現に今の俺達や、住んでいる集落の人達の様な姿もある。
やがて、機能を失った国や焦土となった不毛の地から逃れた人々が集まり、集落を作り、農作物を育て、家畜の育成を始めた。
それぞれの集落における自給自足の生活。それはひとつの集落がひとつの国である事を意味し、実際その様になっていった。
そしてもう一つ、世界には被害を免れ、未だ健在している国家もまだ少なからずあった。
現在、それらの国々からの救助の手が差し伸べられている。その手を、集落で生活している人々が順に待ち続けている。
これがこの世界に於ける今の状況だ。
──ただ、残されたひとつの重大な問題があった──




