1話 異形の者
よろしくお願い致します。
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──まだ昼間だというのに光が差し込まない薄暗い部屋──
半壊したある建築物の中に今、俺はいた。
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この場所へと辿り着いた俺は、ある物を発見した時。喜びで思わず小躍りしたもんさ。
ぼろぼろに崩れ倒壊しかけた建物。その傍らに何台かの軍事車両が並んでいる姿が確認できた。もしかしたらこの場所で激しい戦闘が行われたのかも知れない。実際、その中の何台かは無惨に破壊され、横転したままの物もあった。
そんな光景を目の当たりにして、俺は確信した。ここは急造された軍事施設なのだと──
この場所なら目的の物がたくさんある筈。今日は充分に稼ぐ事ができそうだ。
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そして俺はこの建物の内部を探索している。中はまるで廃墟の様だった。
部屋のひとつひとつを見回りながら、その都度見つけた缶詰や携帯食糧などの獲得品を、背負った大きめのリュックの中へと突っ込んでいく。
だが、中々本命となる物にはお目に掛かる事ができない。少し焦りを感じながら、やがて最後の部屋へと辿り着く。
がらんとした部屋。その片隅に大きな木箱が目に入ってきた。
──やった! これだ。やっと見つけたぜ!
近付き、上蓋をバールでこじ開ける。
「──うわっ……すっげ!」
俺の目的の物だった、確認できる木箱に詰められた多種多様の弾薬。
自身の身を護る武器、弾薬。それこそが今、この世界で最も貴重品として取り扱われている物なのだ。そしてこれらを持ち帰れば、色々な物と物々交換する事が可能となり、今の俺の生活を潤す為の糧となる。
俺はそれらをリュックに詰め込めるだけ詰め込んでいく。
ふと横に目をやると、崩れた壁の瓦礫に隠れる様に、床下に転がっている数種類の銃も確認できた。
「ついでにあれも頂いておくか……」
ただ勿論、持てる量には限りがある。惜しいけど場所を覚えておいて、また後日改めてくればいい。そうだ、今度その時はトラックでも借りてこよう。
俺は床下にあるそれらに手を伸ばした。
選んだのは二丁の長銃、それを左肩に掛ける。次に上着の厚手のジャンパーの空いたポケットの数だけ小型のハンドガンをねじ込んだ。
「ちょっと欲張り過ぎか。まあ、大丈夫だろ。もう帰るだけだし……な?」
そう呟いた時、何か低い唸り声が聞こえた。部屋の外からの様だ。
「ちっ、やっぱ潜んでやがったな。少し深入りし過ぎたか……」
俺は背負ったリュックや手に入れた銃などを、一旦その場に置く。
次に腰のベルトに取り付けたホルダーから自分のハンドガンを手に取り、上半身を低くしながら部屋の出口へと駆け寄った。
そして、外へと顔を半分覗かす。
──壁が崩れて光が差し込まない薄暗い廊下の先。
そこに赤く光る複数の双眼、聞こえる歪な呼吸音、そして蠢く黒い影──
“奴ら”がいた。
ある日を境に自身の身体を異形な物へと変化させられた怪物。
──『変異体』と呼ばれる者達──
突然、発せられる咆哮と共に、ひとつの影がこちらに向かって飛び出してきた!