閑話 甘いケーキに甘い時間を
クリスマス…ということで。(*^^*)
セシリア⇢レミニアリス⇢ルベルト⇢ノエル と視点が変わります。
今までのことと、切り離して読んでくださると読みやすいと思われます。
御機嫌麗しゅう、私はセシリア。セシリア・レヴェインと申します。レヴァイノス帝国第二皇女です。
本日が何の日がご存知ですか?
………。
ええ、そう。本日は『くりすます』なるイベントがあるらしいのですよ!とある国では木に綺麗で可愛らしい飾り付けをしたり、とっても親しい方…つまりは恋人と過ごすのですって。……伝え聞いたことなので、あまり定かではなく申し訳ないのですけど。
恋人、といえば……私にはおりません。でも大切な私のお姉様にはいるのです。……ふふ。まだ無自覚らしいですけど、妹の私には筒抜けですわ!この『くりすます』なる行事で、是非是非お姉様の好きな方と距離が近づいたら……なんて思っておりますの。
忙しくなりそうですよ。ああ見えてお姉様は意外と鈍いですから。あ、このことは一切他言無用でお願いしますね♡
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はじまりは唐突だった。いきなりセシリアから『北の森でお待ちしてます。必ずいらしてね?』という手紙をもらったのだ。ノエルには「……果し状ですか?」と言われたし、半ば強引に渡されたのだが、受け取らないわけがない。
「一体……どういう風の吹き回しかしら」
取りあえずノエルを伴って来たのは良いが、目の前の光景に面食らっていた。
重々しくどっしりとした糸杉の枝には、可愛らしい飾り付けが施されている。球形のものや、動物のもの、果ては天使を模したものまでデフォルメ化されていた。それが何本も森の奥に続いている。
「……これはすごいですね」
うっすらと雪も被り、あまりにもメルヘンチックな光景にノエルは素直に賛辞を述べた。ノエルは伯爵令嬢であるにも関わらず、レミニアリスに仕えてくれている。それが自分の我儘なことは十分承知していた。だからこうして令嬢らしく素直に喜んでくれるのはレミニアリスとしても嬉しい。吐息は白く、喋るたびに冷たい空に溶けてゆく。
「私も驚いたわ。こんなとろこで何をするつもりなのかしらね?」
目的の場所まで来た2人は足を止める。セシリアが《隠れ家》と呼んでいる小さなレンガ造りの家だ。煙突からはモクモクと白い煙が立ち上っている。
レミニアリスは扉を2、3回叩く。すると中からは「はぁい」と間延びしたセシリアの声が帰ってきた。
「セシリア、私よ。ノエルも連れてきたんだけど…」
ごとっ、と何かが落ちる音がしてレミニアリスは青くなって勢いよく扉を開けた。あの妹のことだ、ドジをして大怪我をしていなければそれで……。
宮殿のような豪華さはなくても、上品なベージュカラー系統で統一された部屋はそこにいるだけで落ち着く。しかし今日は何のパーティか、というぐらい料理がならんでいた。暖炉の前には森から採ってきたらしい小さな糸杉の木に、ふんだんに飾りが付けられている。
ぐるりと部屋を見渡してみるとそこにはなぜかルベルトとシェスもいるではないか。しかも、何かを落としたのはルベルトらしい。床には抜身の包丁が突き刺さっていた。レミニアリスはいろんな意味で青くなる。
「えっ、お姉様??……やだっ、もうこんな時間!」
掛け時計を見て慌て出すセシリアはもうお約束のごとくコケた。2つに結ったふわふわの金髪が残像を描いて地に伏せる。……手に何も持っていなかったのは幸いだろう。セシリアが連れてきた侍女数名がわたわたと動きまわり、セッティング(と言って良いのか)が完成した。
「お待たせしましたわ、お姉様!これは『くりすます』なる行事なのです!」
鼻を赤くして満面の笑みで言われましても…。しかし、初めて見る『くりすます』とやらにレミニアリスは興味が湧いた。
「あの森を飾ったのはセシリアなのよね?」
「もちろんですわ。楽しんでいただけました?」
無邪気なところがセシリアのいいところだが、そろそろツッコんでもいいだろうか。
「そうね。唐突だけど…、どうして王太子殿下たちがいらっしゃるのかしら?」
そんな質問には答えず、セシリアはソファへとレミニアリスの背中をグイグイと押す。不可抗力で座らせられたそこはルベルトの隣だ。しかも、身体の片側がくっつくぐらいに近い。一気に頬に熱が集まってレミニアリスは赤くなる。それをみてセシリアはにんまりと笑う。
「セシリア…!!」
小声でたしなめても知らんぷり。侍女が運んできたケーキをセシリアは切り分けはじめる。
「どうぞ、お姉様♪私が作ったんですの!ノエルもお一つ如何?あ、シェス様もどうぞ!」
ほらほらあなた達も、と連れてきた(道連れともいう)侍女2人にも声を掛ける。あれよあれよという間に全員がソファに腰掛け、それぞれがセシリアのケーキを口に運ぶ。
「美味しいです、姫様!」
「あ……ほんと。上手になったのね」
「ふふふっ。自信作ですもの、まずいだなんて言わせませんわ」
口々に言われた賛辞の言葉にセシリアは上機嫌になる。ふわふわのスポンジにたっぷりと生クリームがコーティングされ、さらにその上に様々なフルーツがのっている。フルーツの色は様々だがひとつに纏まっているような、そんな印象を受ける。
レミニアリスはすぐ隣のルベルトが気になってケーキの美味しさが半減するような胸やけを感じた。半分程を口にしたところで思考がぼんやりとする。
すると───────。
思い描いていたルベルトの端正な顔が目の前に現れて、レミニアリスは体を硬直させた。ぐるぐると頭の回路がまわりはじめて、状況が呑み見込めるようになる。何を思ったのか、ルベルトは頬を緩ませ、こちらに手を伸ばす。そして、唇の端に親指が触れた。え、と瞳を見開くとそのままグイッと何かを絡めとる。
「……意外と…子供っぽいな」
親指で絡めとったのは生クリームだった。口にそんなものをつけていたのか、と自己嫌悪に苛まれると、ルベルトはクリームをペロリと舐める。ぽかんとその様子を見ていたレミニアリスとセシリア、2人の侍女がルベルトの大胆な行動に頬を染めた。
「……!!なっ、なになさってるんですか?!」
「付いてたから取っただけだぞ?他に何か?」
反論できずに口ひらいたまま、レミニアリスは真っ赤になって固まる。セシリアは「きゃー///」と冷やかしの声をあげ、侍女たちも見てみぬふりをするようだ。
顔から熱が離れないレミニアリスは渋面を作ってまたケーキを口にする。ルベルトはちらりとセシリアを見遣り、溜息をついた。何気なく気まずい雰囲気が流れ、それを破ったのはセシリアだった。
「……ん、そうでしたわ。私、宮殿の方に忘れ物があったのです。お姉様に直接お渡ししたいものですの。少し暇します」
「は…?」
にっこりと笑うとそのまま侍女を連れて席を立つ。止める隙もなかった為、セシリアはすぐにいなくなった。鈍いと言われるレミニアリスでさえもわかるあからさまな言い訳に頭が痛い。
「妹が……セシリアが何かすみません」
とりあえず謝罪するべき、と考えたレミニアリスはすぐ隣のルベルトを見上げる。いつの間にかノエルもシェスも消えているらしい。いつもなら降ってくるからかいの声がない。
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困り果てたようにこちらを上目使いで見られてるも、ルベルトは目をそらす。レミニアリスと築いてきたものを壊してしまうようで、その行動はルベルトにとって逆効果でしかない。
「……いいんじゃないのか?滅多にできる経験ではないからな」
曖昧なルベルトの言葉をどうとったのか、「うー…」とレミニアリスは唸る。柔らかく、瑞々しい肌は恥ずかしさからか、うっすらと桃色に染まっていた。その反応に、レミニアリスも好意を持ってくれているのかも……と淡い期待がよぎる。
いっそのこと、好きだと気持ちをぶつければ彼女もな何かしら反応があるだろうことは明確だ。……そんなことをして嫌われたくないのはルベルトの言い訳なのだが。
「王太子殿下ー?食べないら私がいただきますよ?」
いつの間にか皿の中のケーキは綺麗になくなっており、レミニアリスは虎視眈々とルベルトの手元にあるタルトを狙っていた。そのキラキラと輝く天青石の瞳にルベルトはいつも囚われる。あの時だって……いつも、いつも。
「こちらとて、そう簡単には渡さないつもりだぞ?」
俺はあなたが欲しい、という言葉を呑み込んでルベルトは唇に弧を描く。
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「うわ……ぁ。始まりましたよ、なんですか、アレは……。無自覚であんなことできるルベルト様も純情ですね」
「シェス様もそう思われます?……でもお姉様ってば、やっぱり鈍いですわよねぇ……」
「鈍いというよりも気が付いておられないのではないでしょうか……?」
ノエルの言葉にセシリア様をを含み、全員が驚愕した。うちの姫様はそういうところがよろしいんですけど、という呟きは二人によって掻き消える。
「えええっ?!あんなに蕩けそうな顔をされてる王太子殿下はお姉様の前だけなのにっ!!?」
「……ルベルト様があんなに積極的に女性に対応する姿を見ることができて、私は幸せな……いえ、胸やけがします」
二人共感動する観点が微妙に食い違っている。半ば白い目で見ながらも、この場所から動かないのは単なる興味が、それとも心配しているからなのか。
「……しかし、セシリア様の作戦はほぼ成功ではないのですか?」
そうたずねると、セシリアは嬉しそうに頷く。
「もちろんよ!……ちょっと思わぬ展開だったけど、ね」
思わぬ展開、とはレミニアリスがらしくもなく唇の端に生クリームをくっつけていた事。それをルベルトがあんなにして取るとは思ってもみなかったのだ。結果的にはよく収まったのでよかったと思うけれど。
「これからも頑張るわよー!お姉様と王太子殿下には……。ふふふっ、とーぉっても楽しみね!」
全員の口から笑い声が漏れ、森に響いていく。一面の冷たい銀世界の中で、小さな家にだけオレンジの暖かい明かりが灯っていた。
ある意味、セシリアの思惑は完璧に近い形で実現する。
それはもう少し先の出来事………。
まずは、読んでくださってありがとうごさいます!m(__)m
糖度高めのは初めてなのでかなり拙いです……。うう、精進します…!
私事ながら、1月10日あたりまで更新不可です。かなり間が空きます。ご了承下さい。_(;ω;`」_)_
来年もよろしくおねがいします!<(_ _;)>
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12/28 サブタイトルを変更しました。




