神様と恋した妹
「ありがとうございました。」
仁が丁寧に挨拶をする。
老婆はふふ、と笑った。
「また来てね。古本屋さん。」
「・・・気が向いたら、手土産もってきてやらあ。」
三蔵がそういうと、二人は狛野宅から歩き出した。
道中、仁が思い出したように三蔵に問う。
「あのおばあさん、旭ちゃんの育て親だったんだね?よく分かったね・・三蔵」
「・・・女物の、立派な衣装が和室に飾ってあった。ほこりをかぶってたがな・・・大方、昼神旭に着せる気だったんだろ。それに、俺の眼はなんでも見えるからな。」
三蔵の言葉に仁が笑う。
「この村の奇祭と呼ばれる所以は、御子の死体の一部を食べるからだそうだ。だからか、茜の体はめん玉千切ろうが何しようがまた元通りになる。」
「おえ・・・・そっか。」
三蔵の言葉に仁は顔色を悪くする。
木々の間、霧の向こうに人影が見えて、仁は手を振った。
そこには、桂が居た。
「・・・いいのか?おばさんに会っていかなくて。」
三蔵の言葉に桂は頷く。
「・・・いいさ。元気で、やってくれれば。俺なんか忘れて、幸せになってほしい。
・・それより、いいのか?世話んなって。病気も・・・」
桂の言葉に仁がにこり、と笑い、子供のように自慢気な表情で口を開いた。
「大丈夫!三蔵はとてもすごい医者なんだ!」
「やめろよ仁・・・お前の病気の治療は長期型になる。辛抱しろよ。」
三蔵が照れ臭そうにそう言うと、歩き出した。
後を仁と桂も追う。
あれから茜と九条は互いに時間を埋めるかのようにずっと話していた。どうやら茜も村を出て、九条と共に暮らすらしい。
三蔵に感謝を述べていた。
桂は茜と話してから、遺体は残っていなかったが墓を造り、旭の墓とした。
「三人、別々だな。」
三蔵の言葉に桂は笑う。
「これでいい。過去に囚われない為にお互い連絡は取らない。まあ、またどっかで会えんだろ。その時はちゃんと幼馴染だ。」
桂の言葉に三蔵は空を見上げる。
木々の葉の間から、旭が光を放っているようで思わず顔を伏せる。
「茜と旭・・・・か。あの双子、表裏一体みたいだったな。」
* * * *
古本屋につき、三蔵は黒い外套を壁に掛けた。どうやら誰かが手入れしたようで、空気は綺麗だ。三蔵が無造作に置いた筈の本もきちんと片してある。
人の気配もする。三蔵は溜め息をつき、定位置に腰を下ろした。
桂には空いている場所に荷物を置くように指示すると、引き出しから紙を出し、一筆走らせる。
「おや。御帰り三蔵。六尾の件は終わったみたいだね。・・・ん?」
奥から盆に茶を載せて出てきたサキが、仁の隣に居た少年に気付いた。
「・・・御子かい。あんた、面倒見んのかい?」
サキの言葉に三蔵がめんどくさそうに煙をふかす。
「まさか。こいつはーー丁度良い。」
三蔵は言葉の途中で入ってきた少年を認め、口角を上げた。
「なんだよ急に呼び出して・・。」
至極面倒そうに言う学ラン姿の少年に、三蔵は顔を背ける。
「可愛げねーガキだな。親の顔が見たいぜ。」
「お望みとあらば嫌と言う程見せてやろうか・・非道ジジイ。」
舌戦を繰り広げる二人に、桂は困惑し、仁は苦笑する。
「上等だクソガキャ。てめーは本しか読んでねぇ可愛げに欠ける・・「三蔵」
腹の底から捻り出すかのようなサキの諫言に、三蔵は口を止める。溜め息をついて畳への入室を促した。
「桂。此方のクソ・・・学ランは、時屋 命。お前とタメだ。」
「どうも。鴉堂里高等学校2年の時屋 命です。」
三蔵の紹介に少年は頭を下げた。
黒髪の少年は一見てらてらした学生鞄を持ち、靴もきちんとした革靴でボタンは一番上まで留めてあり、真面目な印象を受けた。
「夜崎 桂です。」と、慌てて桂も頭を下げる。
サキは成り行きを見守り、仁は桂の横で首を傾げていた。
「三蔵、命を呼び出した意味って?」
そう仁が問う。三蔵はにやりと笑った。
「命。お前の借りてるアパート、確か時期が間に合わなくて2LDKの二階建てだったな?」
三蔵の言葉に命は意外そうな顔をして、ああ。と答えた。
「よし。じゃ、決定だな。今日から桂も入る。手続きはしておく。色々面倒見てやれ。学校も一緒だ。」
三蔵の言葉に桂は眼を見開く。
命は溜息をつき、三蔵から封筒を受け取った。
見た目随分分厚い。
「・・・!そんな、面倒は・・!」
「いいさいいさ。これはあの九条から受け取った報酬だ。たんまり頂いたからな。」
三蔵が手をひらひらと振る。
命はその姿に舌打ちをすると桂に行こう、と促した。
「困ったことがありゃいつでも来い。幸せなんて自分で見つけるこったな。
・・・ああ。あと一つ。
昼神旭って知ってるか。」
三蔵の言葉に桂は思案する素振りをし、首を振った。
仁は三蔵の机を覗き見る。
そこには墨でこう書いてあった。
[任務完了。成功報酬貰う。六尾の双子は表裏一体。尚、妹が消し去られた。]
end
また、光の中で出逢おう




