光へ還る
三蔵が、目を伏せた。
「・・六尾が神、南居 譲心尾神よ、御子が参った。現れ給。彼奴の御前より借りし体、返上致す。」
札に向かってそう言い放つと、辺りが青白く光り、強く風が吹いた。
三蔵は跪く。九条は腕で飛来物から顔を守り、桂は光を茫然と見ていた。
暫くして、光の中から一人の六尾を持った男が現れた。
九条や桂には見えず、眼を持つ三蔵と仁、御子である旭にのみその姿は分かった。
神衣は白く、髪や肌も白い。
旭は眼を見開いていた。
『・・姿を見せるのは、初めてだね。旭。』
困ったように笑った。
「・・・ええ。そうですね。」
その声に旭もまた、一瞬瞳は驚愕に満ちたがすぐに笑った。
声でわかった、神は対話の相手だった。
「ずっと、助けてくださったんですね・・。有難うございました。」
旭はにこ、と笑う。
す、と神が手のひらを広げる。そこには小さな火の玉があった。
『君もまた、この中の誰の記憶にも戻らない。あそこの子は、一時思い出したにすぎない。また忘れてしまう。それでも、構わないかい?』
「・・ええ。楽しかった。幸せでした。お願いを叶えてくれてありがとう、神様。」
『本来心だけをもらうところ、君からは全てをもらう。その代わり、君が最後だ。この方法を編み出したのは人間の貧しさだ。だがもう時代は変わった。そんな事をする必要も無くなる。人々から、御子降ろしという存在を消す。風前の灯に風を送るだけだ。』
その言葉に、旭は頷く。
『・・・行こうか、旭。さよならだ。』
神は手中の火の玉をどこかへ飛ばした。
そして三蔵を見て、微笑む。
とたんに、青白く強い光が辺りを照らし、強い風が吹いた。
「待て!旭っつ・・・・」
言わなければならない。
10年前とは違い、自分には力も知恵もあるのだから。
旭の近くまで這いながら進む。
「本当に、これがお前の幸せか・・?」
光の中の旭は、とても幸せそうに微笑んだ。
「ずっと、姿を見たかった人の所に行けるから・・」
「・・・旭、お前の推理は間違ってるぞ。・・・俺は、ずっと「お前」が心の中に居たんだ。・・・・幸せに、なれよ」
その言葉に、旭は笑った。
「けいちゃん、ありがとう」
そう残して、旭は消えた。
(神が恋した少女、か・・・)
三蔵はそう心の中で呟いた。
(否、違うな・・・
神とつがいになった少女、だ)
そう考えて、笑った。
「・・・茫然としてるとこ、悪いが・・・・掘り返すぞ。」
桂と九条にそう言い放つ。
二人は間抜けた顔で三蔵を見た。
「・・何を?」
九条の心を代弁するかのように桂が呟く。
三蔵ははあ、と溜息をついた。
仁はあはは、と苦笑いする。
「・・何、って・・・生き埋めにしたままでいいのか。かわいそうに。」
三蔵の言葉に九条がいち早く我に返り、桂に詰め寄る。
「・・どこだ・・茜は、どこだ!」
* * * *
三人で手作業で穴を掘り返す。
九条は必至の形相だった。
何かが、三蔵の手に当たった。
それを頼りに掘ると、木箱の木目が出てきた。
九条が急いで蓋を開ける。
途端に、何かが九条の首にまとわりついた。
「・・・・!」
それは、五体満足の茜だった。
「・・・久しぶりだな、茜・・・
やっと、会えた・・・!」




