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ラヴァーズ  作者: 水瀬 ハル
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19/20

光へ還る

三蔵が、目を伏せた。

「・・六尾が神、南居なんい 譲心尾神じょうしんびしんよ、御子が参った。現れたまえ。彼奴の御前より借りし体、返上致す。」


札に向かってそう言い放つと、辺りが青白く光り、強く風が吹いた。

三蔵は跪く。九条は腕で飛来物から顔を守り、桂は光を茫然と見ていた。


暫くして、光の中から一人の六尾を持った男が現れた。

九条や桂には見えず、眼を持つ三蔵と仁、御子である旭にのみその姿は分かった。

神衣は白く、髪や肌も白い。

旭は眼を見開いていた。


『・・姿を見せるのは、初めてだね。旭。』

困ったように笑った。

「・・・ええ。そうですね。」

その声に旭もまた、一瞬瞳は驚愕に満ちたがすぐに笑った。

声でわかった、神は対話の相手だった。

「ずっと、助けてくださったんですね・・。有難うございました。」

旭はにこ、と笑う。


す、と神が手のひらを広げる。そこには小さな火の玉があった。


『君もまた、この中の誰の記憶にも戻らない。あそこの子は、一時思い出したにすぎない。また忘れてしまう。それでも、構わないかい?』

「・・ええ。楽しかった。幸せでした。お願いを叶えてくれてありがとう、神様。」

『本来心だけをもらうところ、君からは全てをもらう。その代わり、君が最後だ。この方法を編み出したのは人間の貧しさだ。だがもう時代は変わった。そんな事をする必要も無くなる。人々から、御子降ろしという存在を消す。風前の灯に風を送るだけだ。』

その言葉に、旭は頷く。

『・・・行こうか、旭。さよならだ。』

神は手中の火の玉をどこかへ飛ばした。

そして三蔵を見て、微笑む。

とたんに、青白く強い光が辺りを照らし、強い風が吹いた。


「待て!旭っつ・・・・」

言わなければならない。

10年前とは違い、自分には力も知恵もあるのだから。

旭の近くまで這いながら進む。

「本当に、これがお前の幸せか・・?」

光の中の旭は、とても幸せそうに微笑んだ。

「ずっと、姿を見たかった人の所に行けるから・・」

「・・・旭、お前の推理は間違ってるぞ。・・・俺は、ずっと「おあさひ」が心の中に居たんだ。・・・・幸せに、なれよ」

その言葉に、旭は笑った。





「けいちゃん、ありがとう」



そう残して、旭は消えた。


(神が恋した少女、か・・・)

三蔵はそう心の中で呟いた。

(否、違うな・・・

神とつがいになった少女、だ)


そう考えて、笑った。


「・・・茫然としてるとこ、悪いが・・・・掘り返すぞ。」

桂と九条にそう言い放つ。

二人は間抜けた顔で三蔵を見た。

「・・何を?」

九条の心を代弁するかのように桂が呟く。

三蔵ははあ、と溜息をついた。

仁はあはは、と苦笑いする。


「・・何、って・・・生き埋めにしたままでいいのか。かわいそうに。」

三蔵の言葉に九条がいち早く我に返り、桂に詰め寄る。

「・・どこだ・・茜は、どこだ!」



* * * *

三人で手作業で穴を掘り返す。

九条は必至の形相だった。

何かが、三蔵の手に当たった。

それを頼りに掘ると、木箱の木目が出てきた。

九条が急いで蓋を開ける。


途端に、何かが九条の首にまとわりついた。

「・・・・!」


それは、五体満足の茜だった。





「・・・久しぶりだな、茜・・・




やっと、会えた・・・!」

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