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ラヴァーズ  作者: 水瀬 ハル
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物語のように巡り合う



そう、丁度、とある動物が栄養を補給する為に自分の体内から栄養素を吐き出すように。

神は私たちのような存在を創り出したという。

私の能力は「対話」

私たちは、その為に生まれてきたと、



誰かが、言っていた。




* * * *


「御子降ろしの御子が決まった。旭、お前だ。儀式は一週間後だ。それまでに、身辺を纏めなさい。」


だから、これは必然だと、

誰かが行った。


「やめて下せえ。旭はまだほんの七つでごぜえやす。なんにも知らない子なんです。どうか、どうか・・・」


「狛野の。辛いのは分かるが、もう前の「代役」から7年だ。今度こそれっきとした御子を出さねば、村は滅びちまう・・運が悪かったと思って、諦めてくれ。元々、この子はこういう運命だ。1番目か、3番目か。それだけだ。」


どうやら、私はうんがわるかったらしい。

しんぺんせいり、って?


見えない「誰か」に聞く。

すると頭に声が響いた。


『この世とさようならをする準備をする事さ。』

・・おばあちゃんとも?

『そう。この世の全て。』

・・・いやだ、なあ。

『最後に、君の本当の顔を見に行くかい?』

ほんとうの、かお?

『君は、大人たちに顔を変えさせられたんだ。君の本当の顔と同じ顔を持った子が、いるんだ。会いに、行ってみるかい?』

行く。


今考えたら、なぜそう思ったのかは分からない。

でも、おともだちに、なりたかった。


「・・・あっ!」

『大丈夫かい?ああ・・スカートがびちょびちょだ。血も出ているね。』


「・・だいじょうぶ?いたそう・・」

旭が転んだのは村の森の中で、そこに人が居たのは幸運と言っていいほど誰も通らない川の近くだった。

痛みを堪えて顔をあげると、そこには女の子が居た。

年齢は、自分と同じくらいだった。


「ほおら、ちちんぷいぷい、いたいの、とんでけー!」

女の子が唄うようにそう唱え、指を振る。

驚いた事に、痛みはすぐに引き、傷は一瞬にして何事もなかったようにして消えた。

「・・・・、え、」

「なにしてるんだ?茜。」


木の向こう、丁度川の上流付近から男の子が現れた。

「あ!けい!ふふ、聞いてね、また傷をなおしたのよっ!」

女の子が嬉しそうに、得意げに笑う。

男の子は呆れた顔をして此方に来た。


「・・・?だれだ、おまえ。」

こわそうな男の子。

それが、桂の第一印象だった。


「・・っあ、昼神、旭、です。」

自己紹介をすると目の前の女の子がふわり、と笑った。

女の子の笑った顔は特に印象的で、自然と自分の気持ちも落ち着いた。

「あさひちゃん、ね?私は夕野 茜!よろしくね!」


それが、本当の自分と同じ顔を持つ双子の姉との、記憶上で初めての出会いだった。




* * * *


「旭ちゃん。またあの子達の所へ行くのかえ?」

「うん!ひみつきちだよ!いってくるね!」

「ああ。気を付けて行っておいで。転ばないようにね!」


旭には、見える範囲内に居ないのか、対話の相手は見えなかった。

だが「おばあちゃん」や桂、茜と同じ、「人間ではない何か」は見えていた。


更に、桂は脚力が、茜は言霊の力が人並み外れて居た。

「対話」の出来る自分と同じ気がして、嬉しかった。



「あさひー!今日はね、かくれおにしよ!」


茜の姿に旭は安堵する。

「えー、けいちゃんみつけたらすぐに高いとことんじゃうもん、あかねちゃんはかくれるのうまいもん」


口を尖らせる旭に、茜は幼い笑顔で笑う。


「だいじょうぶだよ、あさひは見つけられるでしょ?それに、けいなら私がなんとかするし。三人だから面白いの!」


そう答えた茜に、旭はそっかあ、と笑った。



旭の七年間の人生のうち、最も幸せらしい時間だった。



「茜!旭!」

二人を呼ぶ声に振り向くと、そこには桂が居た。やはり人並み外れた脚力で、木々を蹴りながら此方に向かって来て居た。


「けい!どうしたの?そんなに慌てて。」


いつもは大人を警戒してか、脚力を使わない桂が脚力を使っている事を不審に思ったのか、茜がそう桂に問うた。


桂は着地すると、肩で息をしていた。

だが急を要するのか、睨むようにして二人を見て、口を開いた。


「旭!お前・・・・





明日の祭りで御子下ろしされるんだって!?」







忘れて居た。

というのは建前で、ずっと続く気がして、かみさまが夢の続きを見せてくれる気がして、何より、言ったらきっとあれは嘘だったんだって信じれなくなるから、ずっと言わなかった。

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