仮面は何処
いつだって記憶の片隅で少女が笑っていた。
僕は、君を守るから、心配しなくていいよ。
○○○。
○○○・・・?
○・・・
アレ、
キミ、ダレダッケ?
* * * *
「・・わたし、は・・・・」
茜が罪を突き付けられたかの様に、固まる。
顔色は青く、桂の服の裾をつかんだままかたかたと震えていた。
「・・・こちらに居るのは、夕野 茜の恋人だそうだ。九条 利。だがお前はこいつを見てもなんら動じなかった。更に、まるで初めて出会ったかのような反応。お前は、夕野 茜じゃない。夕野 茜に成りすました誰かだ。」
三蔵の言葉に、茜は嗚咽を漏らす。
桂はただ、目を見開いて三蔵の言葉を聞いていた。
「・・・・一つ、話をしよう。」
三蔵が新しい煙草に火をつけ、そう呟く。
「・・仁。」
三蔵が名前を呼ぶと、一人の青年が桂の前に出た。そして、桂と同じ目線に合わせる。
桂は何も動じず、真っ直ぐ前を向いていた。三蔵はその様子を見て、煙を吐き出す。
「・・・お前、そいつが見えてるな?」
三蔵の言葉に九条は眉間に皺を寄せた。視線を空中に泳がせる。だが、九条には何も見えない。
「・・・そいつ、って?」
桂が真っ直ぐ前を向いたまま、そう呟いた。
「・・演技が下手くそだ。俺が村へ来てから2日間、仁にはお前についていて貰った。その際、絶対に・・不自然な程、お前とは視線が合わなかったそうだ。
一般人は、こういう反応するんだよ。」
三蔵の言葉に、仁は九条の元へと歩く。
九条は、仁が九条の目線に合わせた時に、ふ、と一瞬仁の方を向いた。
「人間は本来、みられている事に敏感だ。
それが第六感であれ、訓練した物であれ、、
特にこの5村の人間はな。更に、こいつらは恨みでも無い限り、本来こんなに人間に近寄らない。無関心だからな。
・・・仁、いいぞ、戻れ」
三蔵の言葉に仁は戻った。
「・・・更に、だ。こんな話がある。
お前らの言う、『御子』は、神が自分の生活を維持するために創り出したモンだ。5村にそれぞれ居る。御子の役割は、周りを導き、救う事ーーーなんて言や、聞こえが良いが。
大抵は、弱くなった神に襲われ、養分にされる。生贄だ。
その代償として、御子は、特別な人外の力を与えられる。俺は、眼だ。
御子に捧げられた人間は、次の御子が捧げられる前日に忘れられる。
それから、御子は双子だ。・・・何故かお前達は、三人だがな。
・・・なあ、坊主。前の御子の名前、言ってみろよ。覚えてっか?」
三蔵の言葉に、桂は思考する。
何を言ってんだ。
そんなの、覚えているに決まってる。
そんなのーーーー
桂は手を口に当てる。
誰だった?
御子下ろしに当たった、不運な子の名前は、
何だった?
そもそも、知り合いか?
「・・・・その前の、御子は?
お前の、母親は誰だ?」
三蔵の言葉に、桂は三蔵を睨む。
「あいつは、俺を捨てて消えた。知るか。」
茜は、相変わらずかたかたと桂の後ろで震えている。
三蔵は、ふ、と笑う。
「・・・分かるか。忘れられる、怖さが。
大切な人を、誰も覚えていない、怖さが。
なぁ、昼神 旭。」
三蔵の言葉に、茜は目を見開いた。
「・・・っあ、あたしは・・・」
やっとの事で言葉を紡ぎ出す。
「言いにくいなら言ってやるよ。
お前は7年前、入れ替わったんだ。そこの坊主に好かれていた、夕野 茜に。」




