表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記述主義者がペンを捨てるまで。  作者: ほんの未来
第7章:記述主義者と努力嫌いのための努力論。
128/559

107 「適性がない」を笑い飛ばす3

 いや、ホントにさ。死ぬのって素晴らしいよな。

 少なくとも、真っ当に死んだ人間を()(ざま)に言うやつは、人間の(クズ)だよな。倫理的にそうだろう?

 そして、死体は丁重に(とむら)ってもらえる。身綺麗(みぎれい)にしてくれるし、化粧だってしてくれる。純白の装束に、静かな(ベッド)まで。

 死人に口なし、沈黙は黄金にもたとえられる。もう言葉なんて、いらないだろ?

 しばらく逢えなかった人もあいさつに来て、本音で語ってくれる。

 弔った後も、神棚か仏壇かそれ以外かは知らないが、祭壇に手を合わせてくれる。

 墓だって、磨いてくれて、草むしりまでやってくれる。

 そりゃ、いつかは無縁仏になるかもしれんが、それまでの扱いとしちゃ上等だろう。

 有終の美。死は、かくも美しいものだ。


 それと比べて、なんでこうも生きづらいのだろうね?

余裕(スラック)』を失った社会で、追い詰め合いのデスゲーマー?

 時間がなくて、居場所もなくて、人手も足りなくて、物価は高くて、お金もなくて?

 要求や欲求や、義務や惰性に突き飛ばされるように日々を生きる。

 自分だけは空っぽで、どっかに解決策は転がってないかな。でも見つからなくて、すっかりすねてしまった。そして石ころ蹴り飛ばせば、当たった他者(ダレカ)は怒りを(さけ)んだ。

 手に入ったのは、安っぽい正義感と、荒れ狂う承認欲求、無遠慮な他人(ひと)の目ぐらいだ。

 追い詰めた側は無罪放免で、追い詰められたのは自己責任と相場は決まっていた。

 相場というのは皆で決めたルールのことだ。鏡を前に、自分たちのまぬけた(ツラ)がうつるだけの話だろ? いつもどおりさ、慣れりゃどうってことない?

 そしていつまでも慣れぬ痛みだけが、生存の証明になっていく。


 本当にそれでいいのだろうか?

 確かに、死ぬのは美しいかもしれない。

 しかし、それは圧倒的につまらないだろう?

 生きるのは、(おろ)かで、(みにく)くて、どうしようもなく幼稚な行いかもしれない。

 けれど、生きることは、楽しすぎてしょうがない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ