96 変わりたい、その前に2
さて、真なる絶望について考えてみよう。
たとえば。愛しい人の死なんてどうだろう?
深い哀しみに包まれ、世界が終わってしまったかのような絶望感。
でも、そうは言ってもだ。毎日毎日、お腹は空くし?
慌ただしい日常が、背景に融けていく。
気がつけば、大切な人がいない日々にも慣れてしまう。
愛別離苦は、本物の絶望たりえない。
だって君は、きっとまた前をむいて生きていけるだろ?
それでは他になにがある? 前をむけなくなってしまう絶望ってなんだ?
最たる絶望とは、次のようなものだ。
――変わりたい。
そう心底願った瞬間に、どうしようもなく変われない、そんな自分がいることだ。
そんな絶望に囚われてしまったら、もう君は一生うつむいて生きていくしかない。
そうなれば、自力で立ち直ることはできない。
そこから抜け出すためには、他者にぶん殴ってもらうほかない。
拳骨によるものか、感動によるものかは分からない。
それが嫌なら、予防しよう。変わる余地、『余裕』をたえず残しておく。
だから、「うごき」や「型」を身につけるまえに、まずはストレッチだ。
私たちを諦めさせる、カルトな教義をケラケラ笑い飛ばすことにしよう。
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