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第31話:向けられる悪意①

短めですが、何とか日付が変わる前に、一話投稿です。

 姿を表した連中は、警戒をしながらも、悠々と歩いてくる。

 歩き様からすれば、もう少し音がしそうなものだが、不自然なほど静かだ。

 それに何と言うのか、ヤツらの気配は異常に薄い。

 姿は見えているのに、注意を怠ると見失いかねないほど、存在感が希薄なのだ。


 やはり何らかの手段を用いて、隠蔽能力を高めているということだろう。

 少なくとも、ニンフの魔力感知能力や、精霊視の能力は把握していて、あらかじめ対策を練って来ているのは間違いない。


 もしかしたらニンフ達には、未だにヤツらの存在が認識出来ていないのでは無いだろうか?


 薄闇の中、工作員達はなおも歩を進め、オレ達の潜んでいる場所の、すぐ近くまで到達した。


 何やら、巨岩の周囲を捜索する構えだ。


 谷間の台座の時といい、今回といい、ヤツらは情報に精通していると見ていいだろう。

 この世界では、オレの前世での常識は通用しない部分が多い。

 オレのインフラビジョンしかり、ナイアデスの未来視しかり……。

 ヤツら自身なのか、それとも本国に居る何者か。

 知る者も今となっては居ないハズの盟約を嗅ぎ付け、内容を熟知している存在が居るのは間違いない。

 何らかのスキルで、知るべくも無い情報を知り、ウェルズ帝国に混乱をもたらそうとしているのだろう。

 絶対にヤツらを捕まえて、口を割らせてやらなくてはならない。


 ルスタ山の盟約の宝珠が安置された台座は、巨岩の頂点部分の窪みの中に有るという。

 ヤツらは周囲を警戒しながらも、探索を続行している。

 目深に被られた帽子で、その先端が僅かに尖った耳こそ見えないが、一家の子供を装っている地這族(ミニラウ)の男が、周囲の探索に見切りをつけ、いよいよ巨岩自体に意識を向けた。

 音を立てずに仲間の男女にハンドサインを送り、自身は巨岩への登攀(とはん)を決めた様子だ。


 さて、そろそろオレ達の出番だな。


「ソールさんの親戚の方々ですよね? こんなところで、いったい何をしてるんですか?」


「お〜、そこの帽子の(アン)ちゃん! あんた同族じゃん、どうして子供みたいな服着てんの? あ、そういう趣味?」


「そこの男! チェインメイルが、うるさくて叶わんぞ?」


 いきなり現れ、息ぴったりに突っ込むオレ達に、ギョッとした様子の工作員達。


「ちっ! だから言っただろうが?」

「仕方ないじゃない! また化け物どもに襲われでもしたら、今度こそミンチにされちゃうかも知れないでしょ!?」


「まぁまぁ、二人とも。帝国の犬でも、雇われ冒険者でも、待ち伏せされたら食い破るって決めてたじゃない? 山のニンフは僕のお陰で役立たずなんだから、三対三で丁度良いと思うけどな。」


「まぁな。じゃあ、半端エルフはオレが殺るか。 あ、ネコは殺すなよ? 後で思い知らせてやるからよ」


「あんた、好きね〜。そんなにケダモノ喰いばっかりしてると、獣臭がつくよ? まぁ、いいや。別に手足は要らないんでしょ?」


「ショック死とか、させるなよ? 男二人は殺すけど良いよな?」


「私は亜人の男なんて要らないわよ! だいたい、あんたね――」

「はい、ストップ、ストップ! さっさと殺るよ? あんまり長い間、()たないんだから! オレアデスなんて出てきた日にゃあ、終わりだっつ〜の!」


「ちっ! わぁ〜ったよ! おい半端エルフ、覚悟は良いな?」


「コントは終わりか? 勝手に、べらべら喋っておいて、覚悟とか知るかよ」


 温厚なオレも、さすがに頭に来た。


「カインズ! 小物相手に熱くなるなよ。オレは、サクッと同族君を捕まえとくな」

「じゃあ、アタシは女同士で。腕の一本は貰おうか。行くぞ?」


『カインズさん、どうやら私達の視覚や感知能力は全く通用しないようです。参戦したいのは山々ですが、これでは同士討ちになりかねません。』

山のニンフ、オレアデスから声が掛かるが、オレ達だけでも、恐らく問題は無いだろう。


「オレアデスさん、すぐ終わらせるから、待ってて下さい!」


「うわ! オレアデス覚醒してんのかよ! おい、ネコ拉致ってる場合じゃねえぞ? 時間かけんなよ!?」


 にわかに慌ただしく動き出した工作員達。


 のんびりとした様子で、敵に向かって歩くフィリシスとエルフリーデ。


 対照的な敵味方の動きを見ていたら、オレも何だか気持ちが落ち着いてきた。


 オレ自身は何と言われても良いが、エルフリーデを馬鹿にされたのは腹が立ったし、ハーフエルフを蔑む言動は、サナさんを貶められた気がして、いつになく頭に来ていたのだろう。


 さぁ、落ち着いてきたところで、さっさと口汚い連中を黙らせますかね。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 こんなクズみたいな連中に、あれだけ傍若無人な態度を取られれば、いつも冷静なカインズが怒るのも無理はない。


 アイツ、何だかんだ言って育ちが良いからな。


 しかし、卓越した隠密行動の割には、どうやら連中は、戦闘面では大したこと無さそうだ。


 レッドキャップの大群に泡食って逃げ出すくらいだから、カインズやエルフリーデを心配する必要も無いだろうけど。


 うちの甘ちゃん達の前で、見た目だけはガキんちょみたいな奴の首を飛ばしちまうのも悪くは無いが、それ見てゲロでも吐かれちゃたまんないからなぁ。


 ジャイアントリーチやら、レッドキャップを相手にすんのと違って、相手は魔物でも無いし、カインズは連中を捕まえて、目的やら背後関係やらを聞き出すつもりみたいだから、簡単に殺しちまうのはマズイんだろう。


 全く、とことん傭兵の流儀とは違うが、とっとと終わらせて、カインズに酒でも奢らせないと、やってらんないよ。


 しかし、こいつ。同族(ミニラウ)にしちゃ、ほんと遅い動きだな。


 しばらく遊んでやるつもりだったけど、気が変わった。



 もう、終わらしてやる。


お読み頂き誠にありがとうございます。


明日は、普通に一話投稿予定です。


ご意見、ご感想、評価、批評や誤字脱字、読みにくい点のご指摘などは大歓迎です。

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