その夜
「して、どうであった?」
夜更け頃、私、マールバラ伯爵はトータス団長を呼びこう尋ねた。
議題は勿論、昼間の青年についてである。
「はっ、ホシノはそのまま冒険者ギルドに向かい、トラブルこそあったものの無事に登録できた、とのことです」
「ふうむ…」
本当に冒険者ギルドに登録していなかったのか、或いは別名義で登録してあるのか。これだけではまだ判断できない。
「また、影の感触として、監視に気づいている節があるとの報告がありました。いかがいたしますか?」
王国の影に劣るとはいえ、伯爵家の影に気づくとは…。
「怪しまれても困る。信用の証拠を見せるために下げよう」
「かしこまりました」
本当にどこから来た青年なのか。風来坊にしては奇妙な恰好をしている。あの服装、あまりにこの世のものではない。どこか、遠い国に我が国以上の技術力を持つ国があるのだろうか?
彼はそこからのスパイで、オリジナル魔法で我が国を侵略するつもりなのではないのか?
今ここで始末をつけるべきではないのか…?
「閣下?」
トータス団長の声で我に返った。上に立つものが人前で思考の海に沈んで周りが見えなくなるとは情けない。
自制しつつ、私はトータス団長に命令を出す
「影は使わないにしても、一般の衛兵がそれとなく見ることはできるだろう。怪しい者がいたら報告を上げるように徹底させよ」
「かしこまりました」
とりまこちらが実行できる対策はこれくらいだろう。影ですら気づいた以上、それとなく警備を厳重にするくらいしかできることはないだろう。
「正直、ここにいるのも少し困るが、何処かに旅立たれても困るな…」
思わず呟いた独り言に対し、トータス団長が声を上げる
「僭越ながら…キャサリン様曰く、悪人ではない、と申されておりました」
その発現に私は驚く。
我が娘は洞察力に優れている。無自覚なこともあるが優れている。
「屋敷に客人として招いたのもキャサリンの判断だったな」
「はい。報告の通り、当初私は疑い尋問する気でした。ですがキャサリン様の要請で客人として招きました」
なら彼だけならあまり酷い目に合わないのだろうか。いいや。彼が厄介ごとの種を抱えてないとも限らない。
「いずれにしろ、命令に変更はない。トータス、君も少し気にかけておいてほしい」
「かしこまりました」
トータス団長は返事の後部屋を出て行った。
私は椅子に深く沈み込むと、私はまた思考の海に沈むことにした。
オリジナル魔法を使える者をここに置いておかなくてよかったのか、彼がトラブルに巻き込まれているとしてそれは何なのか、私はどうするべきなのか…
思考を回しつつ夜は更に更けていった。
ありがとうございました。
これにて序章は終わりとなります。
次話以降も執筆を続けていきますのでしばらくお待ちください!




