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83. 異端の翼は状況を聞く

 最優先はフレイヤたちの安否だ。


 ルカも少し気になるが、次点で構わないだろう。

 ついさっきまで対抗戦の実況をしていたし、おそらく教師と一緒のはずだ。

 この学院の教師は化け物揃いだから安心できる。


 あとはテルラだが……。


「"あの、こういう時くらいふざけないで頂けると……"」

「"俺は至って真面目だが?"」

「"ではご主人さま。もしわたしが同じことを口にしたとして、本当に信用できますか?"」

「"…………"」


 ふむ。


 たしかにちょっと無理があったかもしれない。

 そこらへんの知らん奴に拾われた挙句、傷の手当までしてもらったなんてのはおかしいな。


 ケガもまあまあ重症だったし。


「"いや実は出血が多かっただけで、傷自体は浅かったみたいなんだよな"」

「"そんなハズは……"」


 ヘタに追及されたら面倒だ。


「"まあとにかくそういう事だ。危ないから隠れてるんだぞー"」

「"ご主人さまこそ余計なことはせず、急いで逃げてください"」

「"へーい"」

「"あの、ちゃんと話を――"」


 急いで《"魔導通信マギ・テレパス"》を切る。

 こういう時は、聞こえなかったフリをして話を切り上げるに尽きる。


「よし、テルラは大丈夫そうだ」

「それは良かったですわ」

「このまま予定通りフレイヤたちを探しに行こう」

「ええ」


 そうこうしている間に、校舎の入口にたどり着いていた。

 俺はアリシャと目を合わせると、勢いよく外に飛び出す。



 はずだった。


「あがぁっ!!」


 目の前から騎士団の人間と思われる男が吹っ飛んできた。

 それも凄まじい勢いで。


「――っと」


 素早く落下地点に回り込んで受け止める。


「大丈夫ですか?」

「うぐ……。キ、キミは……」

「ここの学生です。いま手当します」


 結構な数の傷だ。

 そう考えた俺は治癒魔法を使うべく、豊穣の書の詠唱を始めた。


 が、突然殺気を感じ顔を上げる。


「させませんわ!」


 アリシャが風の刃を放つと同時、右手を構えながら飛び出してきた敵の首が落ちた。


「おいおい……」


 別に人を殺すなとは言わないが、流石にあれはやり過ぎだ。

 一応ここは人の目があるんだぞ。


「アリシャ、殺すなら目立たない方法にしてくれ」


 俺はそう伝えながら騎士団員の治療を進める。


「……申し訳ございません、すっかり失念しておりました」


 彼女は耳を倒しながら目を落とすと、深く頭をさげてきた。


「まぁそう落ち込まないでくれ。先に処理してくれたことに関しては、むしろお礼を言いたいぐらいなんだ」


 しかしあの敵、中々動きが良かったな。

 見た目はただの私服だが、訓練を積んでいたのは間違いない。


 そうやって軽く考えながら魔法を使っていると、気づけば彼の傷は完全に塞がっていた。


「終わりました。身体に違和感などはありますか?」

「いや問題ない、ありがとう。守るべき相手に助けられるとは、騎士団の一員として恥ずかしい限りだ……」

「こちらはいつもお世話になっているんです。だから気にしないでください」


 さて、そろそろ本題に移ろう。


「ところで外はどうなっているんですか?」

「ひどいものだよ。民間人の退去はなんとか済ませれたんだが――」


 彼はその後も細かい状況を教えてくれた。


 まず騎士団が敵と交戦状態にあること。

 肝心の『敵』についてはにごされたが、まったく知らないということもなさそうなのが引っかかる。

 やはり最初からこうなる事を予期していたのだろうか?


 そしてフレイヤたちは既に保護されているということ。

 これに関しては、団長の娘について聞いてみただけですぐに答えが返って来た。


「――それともう一つ。キミたちはここで救助を待った方がいいかもしれない。もちろん僕がちゃんと守るよ」

「先ほどの話を聞く限り、包囲網の外まで逃げた方がいいのではないですか?」


 彼はもう学院の包囲が終わっていると言っていた。

 騎士団の別動隊と冒険者ギルドが協力しているとのことだ。


 であれば、ここに残るよりさっさと逃げる方が遥かに安全だろう。


「敵の狙撃がとてつもなくてね。悔しい事に、実は僕たちもかなり被害を受けているんだ……」


 たしかに腕利きの狙撃手がいるのは知っている。

 今さっき俺もやられたばかりだからな。


 でもあり得るのか?


「珍しいこともあるんですね。狙撃に手を焼くなんて事があるとは思いませんでした」


 エーリュスフィア騎士団の構成員は亜人がほとんどだ。

 彼らは人族と比べて感覚が鋭い。


 狙撃する際に発生する魔力に気づくことくらい、造作もないはず……。


「最初はちゃんと対処できていたんだ。でも途中から敵が魔法を変えて来てね」

「どういうことですか?」

「いつ攻撃されるのか、そしてどこから狙撃されているのか、突然分からなくなってしまったんだ」


 なんだと――?


「あの、どんな魔法を受けたのか詳しく教えて貰えませんか」

「魔法自体の形状はちいさな金属の塊……かな。しかも《"ディスマジック"》で防げない、不思議な魔法のようでね。完全にお手上げだよ」

「そう、ですか……」


 やはり間違いない。

 ()()はまだ報告書にすらまとめてない、試作段階の代物だ。


「――アリシャ、行くぞ」

「ですわね。しっかりと確認する必要がありますわ」


 そして実験データを集めるため、試作品を渡していたのは彼女しかいない。


「フィリア……。お前は今、そこにいるのか?」


 思わずそうつぶやいた俺は、両手を強く握りしめながら立ち上がった。


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