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71. 問題児は二人でまわる

 文化祭。


 それは団体行動を学ぶ場であり、生徒たちが自己表現を行う一大イベント。


 ちなみにこういった事は俺も初めてだ。

 軍学校には娯楽を()ねた行事なんてなかった。



 いや、たまに開催される襲撃を想定した突発イベントがあったな。

 事前の通達もなく突然起こるし、あれはあれで結構面白かった。


「ところで対抗戦まで時間があるが、何か予定はあるのか?」


 文化祭はまだ始まったばかりだ。

 が、正直やることがない。


 フレイヤさえ構わないのなら、一緒に文化祭を楽しむのも悪くない。

 どうせこのままじゃ、一人で昼寝でもするだけだ。



 ミーリヤとライエンは対抗戦の最終調整をする、なんて言って何処かに行ってしまったし、アリシャは友達と過ごすらしい。


 ルカも忙しそうに走り回っていたし、時間を持て余しているのは俺とフレイヤぐらいだろう。



 クラスの出し物についても心配する必要はない。

 投票によりスイーツ喫茶に決まったわけだが、『成績が掛かっている』という理由で免除してもらったからだ。


 本当なら俺とペアを組んでいるフレイヤも手伝いをしなくてよかった。

 だが彼女いわく『ぜひやってみたい!』とのことで、結局参加する運びになったらしい。


「その、レイシスさんさえよろしければなんですが……」

「ん?」


 なぜかフレイヤがキョロキョロし始める。

 どうしてあんなに落ち着きが無いのだろうか。


「……わたしと一緒に見てまわりませんか?」

「そんな事だったのか?」


 初対面というわけでも無いのだし、気軽に聞いてくれて良かったんだが。


「全然構わないぞ。どうせ俺は暇人だ」

「――ありがとうございます! では行きましょう!」

「そうだな――――って!?」


 承諾するや否や、フレイヤは俺の手をつかんで駆けだした。

 今日の彼女はどうもおかしい気がするのは、はたして気のせいだろうか。



----



「レイシスさん! 買ってきましたよ!」


 戻って来たフレイヤが両手に持っているのはクレープだ。


「任せっきりで悪いな」

「いえいえ、最初に言い出したのはわたしですから」


 俺は彼女から受け取ると早速一口食べる。

 ただの出し物だとあなどっていたが、意外にも味は上品だ。

 作る方も、そして食べに来る方もいい所の出だからだろうか。


 ちなみに文化祭で提供されている物は全てタダである。

 それは学外の人間であっても変わらない。


 まさに貴族の力というやつだろう。

 俺も全力であやかる所存しょぞんだ。


「――あっ! 次はあちらに行きましょう!」

「へーい」


 フレイヤが次に向かったのは……スムージー屋台か。

 文化祭が始まってからずっと振り回されている気がするな。


「レイシスさんはどの味にします?」

「そうだな、この中だと……」


 屋台の上に張られているメニュー表を見上げ、ふと隣に掛けられている時計が目に入った。


「フレイヤ、もう手伝いの時間じゃないか?」


 彼女は俺が時計を見ている事に気づいたのか、同じく視線を上げる。


「……時間、ですね」


 というかうろ覚えだが、アレはもう過ぎてないだろうか。


 横に振り向いて顔を見れば、フレイヤはすでに青ざめていた。

 やっぱりか。


「すっかり忘れていました! すみません、急いで行ってきますー!」

「がんばれよ~」


 俺はヒラヒラと手を振って彼女を見送る。



 対抗戦まで昼寝でもしておくか。

 そんなことを考え始めた時だった。


 こんなにも人が居るというのに、一定のスペースが出来ている場所がある。

 しかも気のせいじゃなければ、俺の方に近づいて来てるような……。


「ふむ。フレイヤはちゃんと楽しんでいるようだな」

「団長、お言葉ですがもう戻られた方がよろしいかと。ここは人が多すぎます」

「手間を掛けさせてすまないな。彼と話したら来賓席に戻るとしよう」


 そう言って俺の前で立ち止まった二人の男。

 猫耳族の方は初めて見るが、もう片方は知っている。


 エーリュスフィア騎士団、団長。

 フレイヤたちの父親だ。

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