70. 問題児は意見を出す
「ではこれより、皆の意見を集めようと思う。誰でもいいから案を出してくれ」
そう言って教室中を見回しているのはライエンだ。
なんでも文化祭のクラス代表に選ばれたらしい。
もちろん対抗戦の方ではなく、別の出し物の方だ。
「はーい。お化け屋敷ー」
「ケーキショップとかどう?」
「ふむ、お化け屋敷にケーキショップと……」
その後も意見はどんどん出されていき、ライエンは急いでチョークを走らせていく。
「みんなやる気に満ちてんな」
「それはそうよ。文化祭は学校行事の中でも特に人気があるもの」
「去年は凄い人だかりでしたよねー」
どうやらミーリヤとフレイヤは、文化祭に参加した経験があるらしい。
「お二人は入学する前から、文化祭に来ていらしたんですか?」
アリシャが口にした疑問は、俺も今しがた考えていた事だ。
そういえば対抗戦は学外からも観客が来る、なんて言ってたな。
文化祭全体も同様ってことか。
「一回だけだけどね。学校の下見がてら家族で来たのよ」
「家族? フレイヤと護衛の使用人だけじゃないのか?」
「お父様も一緒だったんです。今年も来てくれるそうですよ」
それはもう、なんというか視察に近いんじゃないだろうか。
なんせ騎士団の団長だぞ。
そうやって彼女たちと話していると、黒板の方はもう大分意見が集まっていた。
どれもめんどくさそうな物ばかりだな。
ここは一つ、俺も意見を出しておくとしよう。
「休憩室ー」
「――――ジュースバーにミニゲーム屋台、休憩室……って待て。休憩室とはなんだ」
すると彼は突然振り向いた。
だが問題ない。
俺はすでに顔を伏せている。
「ロズウィリア、貴様か」
「スヤァ……」
「寝たフリをしても無駄だ!」
「…………なぜバレた」
「周りを見てみると良い」
俺は顔を上げて周囲を見る。
「ふむ」
ミーリヤにフレイヤ。
そしてアリシャまでもが、全員苦笑いしていた。
たしかにこれなら一目瞭然だ。
「ライエン、良い観察眼を持っているみたいだな。この調子でクラスも是非取りまとめてくれ」
「言われなくともやっている!」
まぁそうだろうな。
お前いつもクソ真面目だし。
さて、とりあえずこれで……
「それでロズウィリア、休憩室とは何をする出し物なんだ?」
……適当に流してもらう予定、だったが失敗したか。
これだから真面目なやつは困る。
「文化祭にご足労頂いたお客様のために、憩いの空間を提供するんだ」
「そうか、では消しておこう」
「おい」
文句を言おうとした頃には、すでに『休憩室』の文字が消されていた。
驚くべき判断の速さだ。
どうやら今日のライエンは、冗談にすら乗ってくれないらしい。
「とりあえずこんな所だろう。実現できそうな物はここに書き出した。明日までに希望の出し物を書いた上で、記入用紙を私に提出して欲しい」
彼は他にもいくつかの注意事項を説明すると、とくに引き延ばすことなく話し合いの終わりを告げた。
それを機に生徒たちも次々立ち上がっていく。
今日はもう解散か。
「うーん……。いっぱいあって悩みますね……」
「わたしは喫茶店にしようかしら」
「あら、ミーリヤさんもですか? わたくしも喫茶店に投票しようと考えていましたの」
「まぁ文化祭と言ったらこれよねー」
「やっぱりそうですわよね! わたくしも一度は――――」
意見を出し合う彼女達はとても楽しそうだ。
しかしあのアリシャが、ちゃんと楽しんでいるみたいで安心した。
そう遠くない未来、彼女には今のように過ごして欲しいものだ。




