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116. 異端の翼は目を通す

3-2. エリオラ機関の活動資金と背後関係


 発足当時は創設者であるレガルド・フォン・ジルドレイが所有する資産を利用していたと見られる。

 しかしジルドレイが没したあとの資金源は不明である。前項で示したように莫大な活動費があると予測出来ているにも関わらず、現時点では一切の手がかりを得られていない。




3-3. 創設構想


 当該組織は現行魔法システムの発展、及び最適化を目的に掲げていた。

 現在もっとも多くの地域で普及・運用されている魔法技術はエリオラ・アービー著「天秤の書」で用いられた錬金術の基礎理論を転用したものである。しかしその後の技術転換は起こっておらず、現行の魔法システムは成熟期に入ったとの見解が通説である。

 この事からジルドレイは天秤の書の再研究を試みるべく、当該組織を設立したと思われる。




3-4. 現在の動向


 3-3で挙げたように、当該組織は現行の魔法システムの改善のみを目的としていた。

 しかし総責任者が変わった時期を境にあらゆる情報が改竄されており、明らかな人為的介入の痕跡が見られた。

 またこの時期はケレッツ・ロガン著「理想触媒におけるキャパシティの過記録膨張性について」の発表時期と重なっている。これは第2章で挙げた複数の事件との関連性を示唆するものである。

 特に2-3で記した事例については――



----



 宿に戻って紙束をめくっていると、不意にドアが開いた。

 俺はさり気なく資料を隠す。


「あれ? レイシスさん、もう帰っていたんですか?」

「そっちこそ早いな」


 外はまだ全然明るい。

 聞けば買ったお土産を置くために寄ったそうだ。

 ミーリヤとライエンは外で待っているらしい。



 ふと時計を確認する。

 今からだと少し遅めの昼食になるか。

 だいぶ集中していたせいで時間の感覚が飛んでいた。


「それよりも聞いて下さいよ! どうやら今夜、町でお祭りがあるらしいんです!」


 視線を上げてみれば、フレイヤが興奮気味に近寄って来ていた。


「たしか琴青きんせい祭、だったか」


 ルーシャと会った日に少し調べた物だ。

 いわゆる生誕祭。アイオライト領が成立した日を祝う祭事らしい。


「もしかして知ってたんですか?」

「一緒に回ろうって誘われたんだ」


「誘われた? どなたにです?」

「知り合ったばかりの人」

「えぇ……?」


 領主の娘です。とはちょっと言い辛い。

 当然ながらミルデリアとの会合は濁しておきたいし、誤魔化しながら説明するとややこしくなりそうだ。


「朝早く勝手に抜け出した日があっただろ? あの時色々あって、落とし物を渡したんだよ」


 ネコのくだりは……まあいいか。


「あ、地元の方なんですね。となると恩返しにエスコートでもしてくれるんでしょうか?」

「そんな感じだ」


 地元というか、地主というか。


「すごくいい方なんですね」


 気のせいだろうか。なぜか彼女が落ち込んでいるように見える。


「あの、わたしも連れて行ってもらうのはダメ……でしょうか?」


 すぐに返すことができなかった。

 ルーシャにはセレーナの話をすると約束してしまっている。

 それに俺の事も教えると言ってしまった。どちらもフレイヤの前だと話しにくい内容だ。



 ――いや、せっかくの機会だ。もう彼女に打ち明けるべきじゃないのか?

 臨海学校の際に『そのうち話す』なんて約束している。せめて軍に入っていたことぐらいは……。


 だがルーシャも一緒となれば、うっかり翼の話を漏らされる可能性だって……。



 色々考え込んでしまったが、時間はそこまで使っていない。せいぜい数秒程度だ。

 しかし間が空いたのは事実であり、彼女は鈍感な性格というわけでもない。

 俺が答えるのを躊躇ためらった事なんてとっくに見抜かれていた。


「無理を言ってしまってごめんなさい。……お祭り、楽しんで来てくださいね――!」

「フレイヤ!」


 急いで呼び止めようとしたが遅かった。

 彼女は走って出て行ってしまった。



 ほとんどの部分が抜け落ち、説明としてはおかしかったとしても、とにかくまずは説明するべきだった。

 隠し事が多いのだって今に始まったことじゃない。そんな事、とっくにフレイヤは知っているのだから。


「あークソ……」


 海で断りも入れず空気の分配――唇を重ねてしまった時も同じだ。

 嫌われたと思っていたが、結局俺の勘違いだった。

 あれだって最初から話し合っていればすぐに分かっていただろう。



 フレイヤの事が気になり、思わず窓際に寄る。


 もう歩き出している三人の姿が見えた。

 ここからだと後ろ姿しか見えず、彼女の表情はうかがえない。


「謝るべきはこっちの方だろうに。なにやってんだ俺は……」


 後悔したところでフレイヤはもういない。

 約束を反故にするわけにもいかないし、彼女と話せるのは早くとも今晩か。

 それが酷く、もどかしかった。

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