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111. 問題児は放り投げる

 幸い荷物を先に置いていたということはない。

 今回の遠征は短期間だったため、俺は手ぶらに近かったからな。


 ちなみにライエンも似たような感じだ。

 女性陣は事情が違うらしいが。


「さてと……」


 借りることが出来た部屋は五部屋のみだった。

 フレイヤとミーリヤは二人でひとつ。残りは個室。

 しかし俺の分だけ欠けてしまった。


「寝床、どうすっかなぁ……」


 思わずそう愚痴っていると、アリシャがそっと手を握って来た。


「ご心配は要りませんわ。わたくしの部屋で一緒に寝れば解決ですもの」

「あー確かに。悩む程のことでも無かったな」


 そういやアリシャがドラグシアに来てすぐの頃は、俺の部屋を使っていたな。


「んじゃあさっさと入るか。もう手続きは出来るのか?」

「あ、あぁ。可能ではあるが……」


 この中で一番状況を分かっていそうな相手。

 つまりライエンに聞いてみたのだが。


「――って待て!」


 どうも何かあるらしかった。


「やっぱりなんか問題があるのか」


 火事が起きたわけだし、そう簡単にチェックインという訳にも行かないか。


「問題があるに決まっているだろう!」

「そ、そうですよ!」


 ……ん? なんでここでフレイヤまで割り込んでくるんだ?


「ダメに決まってるわ」


 続くミーリヤに至っては、さも当然といった様子。

 残るはテルラだが……。


「まぁご主人さまですし……」


 なぜかジト目で見られていた。



 再度アリシャと顔を合わせるが、やはり俺たちには話が見えていない。

 あとから合流したせいで、情報の共有が出来ていない……というわけじゃないな。

 一緒にいたテルラにまで否定されている。


「なにが問題なんだ」


 完全にお手上げだ。直接聞くしか方法はない。


「少し考えれば分かる事だろう。同じ部屋に男女が二人きり、何も起こらないはずがない!」

「はずがありません!」


 うん。とりあえずお前ら、息が合ってる良いペアだと思うよ。


「あのなぁ、俺とアリシャは昔からの仲なんだぞ」


 もう長い付き合いだ。今さら同室になったところで意識なんてしない。


「だろ? アリシャ――」


 声を掛けたが返事はない。

 アリシャは俺の話なんか聞いておらず、うわの空でひとり言にふけっていた。


 しかも割と大きめの声で。


「レイシス様と二人っきり……。よくよく考えてみれば、確かに千載一遇のチャンスではありませんか……!」

「おい聞こえてんぞ」


 こうなった以上、結果はすでに見えている。


「や、やっぱりダメですっ! 徹底的に抗議します!!」

「わたしも同意見よ! やっぱりどう考えても危険だわ!」


 アリシャのせいで面倒な事になって来た。

 しかも今回に関しては、彼女のイタズラじゃなさそうなのがまた……。


 この様子だと指摘したところで、いつものように場を収めてくれそうにもない。


「あーもうめんどせえな! そんなに文句があるなら、お前らが勝手に決めてくれ!」


 部屋で寝れさえ出来れば何でも良くなってきた。


 ちなみに野宿という選択は取れない。

 なんせ治安のいい町だ。職質されるのは目に見えている。


 これ以上アイオライト家に貸しは作りたくない。それだけは勘弁して欲しい。


「普通に考えれば私の部屋がもっとも合理的だろう」


 問題を放り投げた矢先、まず声を挙げたのはライエンだった。

 しかも珍しく同意見だ。


 俺もライエンも男同士、加えて多数派の嗜好持ち。

 よって不純なイベントなど起こりようがない。


「決まったな。てことで早速宿に――」


 半ば逃げる様に一歩を踏み出す。


 だが……。


「異議あり!」

「異議ありです!」


 さすがは双子。それはもう息ピッタリ、声ピッタリだ。


 ……そろそろ頭が痛くなってきた。


「一体なにが問題だというのだ。この中だと男は私しかいないだろう」

「確かにその通りね。でもあなたとレイが一緒の部屋にいれば、絶対ケンカが起こるでしょう?」

「ですです!」


 わりと的を射た主張でちょっと驚いたのは秘密である。


「……だそうだが?」

「否定はできん」


 ということでライエンの案は却下と。


「ではわたしの部屋はどうでしょうか。いつも一緒に暮らしていますし、全く問題ないかと」


 今度はテルラか。

 これも的確な意見だと思う。


 寮での私室はさすがに分けてあるが、それでもひとつ屋根の下という事実に変わりはない。


「テルラさんもダメです!」

「ええそうね」


 どうやらまたもお気に召さないらしい。


「……クッソめんどくせー」

「なんか言ったかしら?」


 ミーリヤに物凄い形相で睨まれたため、適当に口笛を吹いて誤魔化す。


「そもそもレイの部屋が燃やされたのが悪いんでしょうが。ちゃんと自覚あるの?」

「いや、その主張はおかしくない?」


 言ってることがメチャクチだ。

 いくら俺でも初めて訪れた土地、初めて訪れた場所に迫る脅威を前もって察知、速やかに排除するのは不可能である。


 というか俺じゃなくても無理である。


「それで、テルラは何が問題なんだよ」

「今日は折角の旅行なのよ? いつもと同じなんてダメに決まってるじゃない」


 なんだその意味不明な理由は。


「と・に・か・く!」


 ミーリヤは無理やり話を切るように声を張り上げると、俺の肩を掴みグッと引き寄せてきた。


「そ、その……! まぁつまり……そういうことだから――!」


 今度は言い淀みながらそっぽを向き、限界まで顔を離していく。


 自分から近づいたり距離をとったり、忙しないやつだな。

 というかそんなに嫌なら手を退ければいいのに。


「わたし達と一緒の部屋しかないと思うのよ――っ!」


 俺はそのまま肩に力をこめられ、ズルズル宿へと連れ去られて行く。

 しかも背中はフレイヤが押してくるし、逃げ場なんてどこにもない。

 というか背後を取られるとは思いもしなかった。




 ちなみにこれは後で思いついたこと。

 アリシャに頭を下げて部屋を譲ってもらい、彼女がフレイヤたちの部屋にお邪魔すれば、万事解決だった気がしなくもない。

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