第二章の七
「ちょっ!」
「聞いてないのですよ!」
「いきなり女言葉になった理由は深くは聞かんが、そんな事を俺に言われても困る!」
私とマプル達のパーティーは、木々が乱立する山の中をひたすらに駆けていた。それこそ風の様にという表現が似合うほどに、狐の尻尾をなびかせ全力でかけて居た。
「まおう様! もっと早く走るのですよ!」
「う、うっさい! これが私の全力だ!」
「お前さんは独り言を言う余裕があるのか!?」
「独り言じゃないのですよ!」
そう、実際独り言じゃない。
ただフェブリが心の中で喋る余裕がないほどに、事態は切迫してしまっているだけ。
現在、私達が置かれている状況……それは。
「なんでこんな所にレッドドラゴンが出るんだよ! 今の私じゃ……というか、どう考えてもこの辺りの冒険者じゃ、あんなもん倒せるわけがない!」
レッドドラゴン。
竜種の頂点に位置する怪物。
今私達を全速力で追尾して来てくれているレッドドラゴンは、大きさからしてまだ子供のようだがそれでも十分な戦力を有しているだろう――もっとも、仮に成体が襲ってきているのならば、今の私達はすでにこの世界から消滅しているだろう。なんせ、成体のレッドドラゴンは以前の私でも倒すのに少し苦労したのだから。
「くそ……っ」
どうせこの辺りにいる竜ならば、飛行トカゲとかの雑魚だと思っていたのに、まさかあそこまで強力な個体が出てくるとは思いもしなかった。
「おい、止まれ!」
マプルの声が耳に届いた直後だった。
私の目に崖が見えたのは――思わずいい景色だと、的外れな事を考えてしまうほどの高い崖。
「おい、お前さん! 掴まれ!」
「え?」
背後から巻き起こる爆風。
体が凄まじい速度で、地面に剣を突き刺すマプルと、彼に捕まる彼の仲間たちの横を通り過ぎていく。
あ、死んだ。
自分の体が崖から吹きとばされたのだと理解したのは、死を覚悟してからだった。




