チーム【プロセス】猫と狼と対峙する
ソートは魔法で距離を稼いでいた。
目の前のニーナは頑なに魔法を撃たないのだ。
(魔法を使わないのはブラフ?)
シルフと対するニーナは剣を振り回していた。
その動きは初めて剣を握った初心者だ。愚鈍な動きをする彼にシルフは困惑していた。
「騙すために下手な真似をしてんだろ?」
「……」
シルフの目の前の敵が偽物のニーナであれば、ソートと敵を交代すれば良い。
だがそれこそが二人の作戦である可能性を否定しきれない。
彼らは目の前の敵を対処することにしていた。何より、セレナが先程から口を閉ざしているのだ。
「セレナ! 作戦はあるのか!」
「待ってください。まだ決定できない!」
バフを付与して、彼らがボロを出すのを虎視眈々と待つ。
アント達の大魔法を受けたプロセスの動きは鈍っており、今にも崩れそうだ。
素早さや攻撃力をいくら上げたところで、動きが鈍れば攻撃もできない。
「焦れったいですね」
ソートは大魔法の準備を行う。
目の前の敵はそれを無視して近づく。
剣が振るわれダメージを受けるが、そのダメージ量は極小だ。
(ダメージが低い、中身が銃だからですね。つまりこいつがアント!)
「ソート! そちらは本物です!!」
「なっ!」
セレナからの声を聞き、放とうとしていた魔法を抑える。『猫騙し』で避けられるようなミスは感化できない。もう大魔法を打つための魔力は残っていないからだ。
セレナは口角を上げた。
目の前にいるニーナが、胸の辺りを探ったのだ。アントが銃弾を探る動作であると推察した。
ニーナであればそんな動きはしないはず、そう推察して反射で叫んでしまう。
その叫びは、仇となる。
「クリティカル……っ!」
「【紙一重】」
渾身の一撃が防がれた。
シルフが距離をとるが、彼は自分の行く末を理解する。
「ソート!!」
「手元がおろそかだ」
ステッキを奪われて、巨狼に体を地面へと叩きつけられているのはソート。
銃口を向けられてシルフとセレナは思わず後ずさる。
彼の放つ魔法の威力を理解しているためだ。
セレナは自分を責める。選択を見誤ったせいだと。ソートは目の前が真っ白になる、ステッキが奪われて己がこんなにも脆弱なのかと。
しかしどれだけ待っても、魔法は放たれない。アントは体温を上げる、そして最悪が訪れる。
『第一フェーズ終了。第二フェーズへと移行します』
そして現れる。アントの背後に怪鳥が。
辺りが業火に覆われる。
地面が煙を上げて、建物が崩壊した。
「おいおいおいおい!!」
「クソッ! カリナ……」
アントの頭によぎるのは、彼女らと交わした約束である。
問題があればメッセージを。それに従ってメッセージを書き終えたアントが目線を上げると、ニーナが全速力で逃げているのが見えた。
「おおい!! ニーナ!? ニーナ!!!」
彼は一目散にこの場から離れる。恥も外聞もない。あるのは、生への執着のみである。
アントは自身の状況を理解して汗を流す。これが熱によるものなのか、冷や汗なのかは分からない。
「アントさん、でしたね!? 手を組んでくれませんか!」
「……! 騙すつもりなら言いふらす。偽善グループだってな」
「し、信じてください! ちょうど六人です! 六人いれば我々は強固になる!」
「……」
アントはセレナの言っていることが腑に落ちていない。それでも誘いに乗らない選択肢はないのだ。
それに階層ボスを倒せばポイントが貰えるのだ。アントは頷くが、それと同時に湧いた疑問を解消する。
「了解……だが、六人だと?」
「えぇ! 来ますよ、我々の仲間が!」
アントが気配を察して背後を振り返る。その気配はすでにアントを視認していた。
「ほう? 君も仲間であってる? それとも倒しちゃっていい敵かな!?」
「やめとけ、怒られるぞ」
「そっかそっか! ごめんねー?」
すでにアントの目の前で怪鳥の前で腕を組んでいる二人。
青髪の馬人と、黒髪の件。
「行こうかソロモン! 【歩兵指定】!!」
「メイトも来い。【歩兵行使】」
彼が振り上げた大剣は暗黒色。
それが怪鳥の足を切断した。頭部、翼に対して剣を振り下ろす。
「あー、だめだ。俺じゃ届かん」
「ちょっと! 諦めたらそこで終了でしょ!」
「メイト!! よく来てくれたね!!」
セレナがメイトを歓迎していた。
アントは固唾を飲む、『黒白戦線』が全員集結している。
「どうしてこんなタイミングで……」
「二人を牽制するために呼んだんですよ!」
「……負ける気がしないな」
自分が間一髪であったことを理解して、血の気が引いた。
彼は目を瞑って胸を撫で下ろす。
「【城兵指定】【僧兵指定】!!」
「上がってきたぜ!!」
「やるしか無いですね」
シルフとソートは立ち上がり武器を握っていた。
彼らへ回復の魔法を放つと、二人が目を見開いて感謝した。
そしてゲームが始まる。
「オープニングだよ!!」
セレナの髪が風を切った。




