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チーム【プロセス】狩りを始める

「『深淵大(アビス)魔冥珠(・オーバーレイン)』」


 アントが銃で魔法を放つが、それを上回る魔力。

 その魔法は一尺のステッキから放たれる。


「『天光大(ルミナス)魔嵐線網(・テンペストレイ)』」


 一直線に伸びる魔力はアントが避ける隙を与えない。

 適当な座標に瞬時に移動した彼に、今度は魔撃の往来が降り注ぐ。


「クソっ!」


 止まない魔法に、回避が間に合わない。

 巨狼に拳銃を握らせて魔撃での相殺をするが、魔力効率が悪い上に全てを捌ききれない。


「『褐色の魔法陣』」


 攻撃が一直線に伸びてきているのを良いことに、魔法陣を展開して巨狼に抑え込ませる。

 すると魔法は質量を帯びて固定された。


「ニーナ! 手を貸せ!」

「こっちの虎野郎を先に止めてくれ」


 淡々と話すニーナだが、額には汗が流れていた。

 振り下ろされる戦鎚を剣で受け流し、斬撃を打ち込む。

 スピードが早く攻撃は当たるが、シルフはそれを無視して戦鎚を叩きつける。


「ダメージなし……というよりHPが果てしない感触だ」

「それどっかで聞いたことあるなぁ!!」


 シルフが暴れる背後にはセレナがニーナを見つめていた。


(どうして戦わない。戦う系の職業じゃないのか? だとすればバッファー。虎の体力を削る瞬間に回復しているとすると、辻褄が合う)


 彼はアントにセレナへの攻撃を催促した。

 アントはニーナに気づかない、魔法が延々と放たれて、それどころではないのだ。ニーナは諦めて魔導書を握る。


「『大岩魔壁(アースウォール)』」

「ほう、私を狙うのですね。小賢しいこと」

「小賢しいのはどっちだ。焼き鳥にしてやる」


 セレナの種族はセイレーンであり、鳥と魚の性質を合わせ持っていた。

 彼女の背後に岩の壁が出来る。シルフが叩き壊そうと背後を向く。直後、魔力が光輝く。


「【神契り:虚大魔消撃(デトネートリリース)】」

「来たぜ、たぎってきた!!」


 シルフが振り向き戦鎚を両手で持つと、魔法へ攻撃を放つ。

 直後、全ての光が戦鎚の頂点へと集まる。魔力が一点に収束して、それはあろうことか発散を始める。


「クリティカルヒット!!!」

「……っ」


 無属性の魔力の線が、二人にダメージを与える前に拡散してしまう。

 ニーナは違和感を抱いていた。彼の攻撃力にムラがあることだ。

 先程の正面戦闘でこの攻撃を食らっていれば、ニーナは一度で倒されていたはずだ。それをしないのには理由があるはず。

 それに彼の『クリティカルヒット』の言葉、ゲームで言う『会心の一撃』ではないか。


「あんた、攻撃力がランダムになる職業だな」

「おぉ、よく分かったな! が、それでなにが変わる?」


 戦鎚がニーナを覆う。

 その一撃に臆することなく、彼はそっと手で戦鎚を撫でた。

 ピコッ! っと音がなる。


「ハズレっ!」


 シルフが戦鎚を振りかざした瞬間、目を疑う。

 そこにはアントがいた。銃口がこちらに向いている。


「『大岩魔打(アースショット)』」

「クソッ」


 顎に岩石が直撃する。

 まるで蚊に刺されたように顎を撫でると、おもむろに目線を逸らした。


「あっちにもアントがいる。化けたな?」

「化け猫だからな」


 ニーナは興味を無くして屋根を走り出すと、アントのそばまで駆ける。

 アントは現在進行中で魔法による猛攻を捌いていた。加勢を始めると、アントに声を掛ける。


「ほら、お前も化けろ」

「無茶言うな! 遊び人じゃないんだぞ!?」

「同じ獣人だろ? 確かあったはずだ、人に化けるスキルが」


 二人が魔法を捌いていると、プロセスの三人は目を回した。


「な、なぁ、どっちが猫なんだ?」

「そんなことどうでもいいでしょう。二人も手伝ってください」

「いえ、駄目です! シルフがニーナを、ソートがアントを対応したほうがいいです!」

「そうは言ってもなぁ」


 シルフは眉をしかめて立ち止まる。

 セレナの言いたいことは分かる。要は相性の問題だ。

 プロセスがもたもたとしていると、アントが睨みつけるとともに、スキルを放った。


「おい、あれっ!」

「え、煙幕……」

「私たちを馬鹿にしているのですか? ソート、再度魔法をお願いします!」

「撃っていいのですね……?」


 ソートが笑顔を浮かべると、髪をかきあげて魔力を集中させた。

 アントは煙幕の中で画面を操作していた。


「ほらこれだ、【狐狸変化(こりへんげ)】がある。それがいい」

「取得したばかりのスキルをすぐ扱うなんて簡単にできないのは知ってるだろ!? そもそも発動条件を探らないと――」

「ごちゃごちゃうるせぇ、さっさと取れ」


 ニーナは剣をアントに向けて振るう。その剣は首に向けて振るわれたが、直前で止まる。


「仲間になったわけじゃねぇ」

「っ、これが終われば次に倒すのはお前だ」

「あぁ、爪を研いで待っててやる」


 アントはポイントを消費してスキルを得た。

 スキルがどのような内容なのかは公開される、だが発動条件や細かな制限は分からない。

 今回も変化したいと願えども体は変わらないままだ。


「ほら探れ、色々あるだろ、狸か狐になりきるんだ」

「屈辱だ……」


 アントは試しに腕を上げて、手のひらを頭の上で立てた。耳に見立てたのだ。

 そして呟く。


「こ、コン」


 刹那、アントの体が煙に覆われる。

 煙が晴れたかと気づけば、そこに存在するのは剣をまじまじと眺めたニーナの姿である。


「クッ、何だそれ、お前ッ! ハハッ!」

「や、やめろ……笑うんじゃねぇ」

「あぁいいじゃねぇか! やっぱ美しいな、俺の姿」

「……なんでお前男のくせに女の格好してやがるんだ」

「男……? あぁ、そうだな、そういうことにしてんだわ」

「っ……え、マジなのか」

「ご想像におまかせする」


 煙幕が晴れると同時に、ニーナが走り出す。

 それにつられてアントも、慣れない剣を持って走る。

 二人はソートが魔法を放つ瞬間を見ていた。認識さえしていれば、回避など容易である。


「『灼熱大(インフェルノ)魔嵐域展(ガストグラウンド)』」


 ソートは満足げに戦場を見つめる。

 木っ端微塵に弾ける家々、焼ける空間、そこにいない二人。


「っ! うしろ――」

「【神契り:虚空大魔空(シェイクエンプティ)撃波(・キャノン)】」

「『灼熱大魔(ギガブラスト)炎球界(・インフェルノ)』」


 ニーナの魔法が空間に波を放ち、三人の心体へ直にダメージを与える。

 アントの魔法が波打つ戦場を駆け巡り、身体を焼き切る。

 プロセスへのダメージはシルフが受け持っていたが、彼への負担が大き過ぎた。

 内蔵をえぐられたと錯覚する、セレナは膝を地面に付けた。


「あーもう! 生意気ですね!!」

「焼き鳥一人前だ」

「ありゃ魚だろ? いい焼き加減だ」


 戦闘は佳境を迎える。

 静かに口角を上げて、剣を抜いた。


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