職業【遊び人】スライムの王になりました
スキル取得
【無呼吸耐性】【不動】【石の上にも三年】
スライムからダメージを受けなくなったので、その場でじっとしているだけでスキルを得られた。
手が空いたので、スライムの体をじっくりと眺めてみたり、顔をうずめてみたりしていた。するとこの三つのスキルを得た。
『無呼吸耐性』は呼吸を止めていても、数分であれば平気になれるようだ。
『不動』は動きを止めているときに、防御力と魔法防御力が大きく上がるらしい。「大きく上がる」とはどれ程までの効果なのかが気になる。
そして『石の上にも三年』は単純に防御力と魔法防御力を常に向上させる。やっと獲得したいスキルを得ることができたので満足だ。
「おぉ……」
スライムにダメージを与えていないので、どんどんとスライムが湧いており、カリナの周りにスライムが群がってきていた。
数にして20匹程度だがぴょこぴょこと跳ねながら彼女についてくる様は、まるでスライムの主になったよう。
スキル取得
【粘性之王】
「えっ……?」
思わず声が漏れていた。
前触れもなく流れだしたスキル取得音に、驚きが隠せない。
まさか思考を読んで? いや、そんなわけな無いだろう。
そんなことよりも、彼女は得たスキルの効果を見てみた。その内容は衝撃的だった。
【粘性之王】
スライムを意のままに操る。スライムの生死を操る。スライムを各層5体まで召喚可能。
「な、なにこれ」
気が付くと、目の前のスライムが跳ねずにじっとその場にとどまるようになっていた。
まるで彼女の命令を待っているようだ。自由に動いてもいいのに、と思った途端。
「お、おぉ!」
彼女の表面心理を読み取ったのか、スライムはバラバラに動き出した。
意のままに操るというのは、やはり自分の思うとおりに指令することができるということなのだろう。
しかし表面心理を読んでいるということは、運営側も表面心理を読むことができるということでは?
「ま、まぁそれは気にしない方針で……」
もしかしたら利用規約にも書かれていたが、いつの間にかすっ飛ばした可能性がある。そう言うことにしておこうと、カリナは考えるのをやめた。
このスキルは便利なものだ。なによりスライムの軍団を自ら作り出すことができる。
スライムの体力は少ないので、耐久性には問題がある。しかし、いないよりましだ。
「生死を操るってなんだろう?」
彼女は一匹をスライムを抱え上げると、そっと魂が抜けていくイメージを抱いた。
すると、スライムは一瞬にして光りの粒子となって消えていった。
「……」
彼女は自身の得たスキルが怖くなり、その場で立ち尽くしてしまった。
このスキルがあれば階層ボスと戦えるかもしれない。
彼女は頭を振り、感情をリセットさせる。心の中でスライムに集まってほしいと願うと、散ってしまったスライムが再び集まろうとこちらを向いた。
しかし、その瞬間。
「危ない!!」
「あぁーーー!!」
彼女の方へと向かってくるスライムが、鉄の剣によって一刀両断にされてしまう。
それに、最初に気が付いた男以外にも複数名のプレイヤーがスライムを討伐してしまっている。
せっかくのスライム軍団が……
そんなことを思い項垂れていると、目の前の男が話しかけてきた。皮の鎧に鉄の剣を握っている、笑顔がさわやかな金髪のイケメンだ。カリナからすれば、あまり印象は良くない。
しかし助けようと思って倒してくれたということは理解している。そこを責めるのは良くないだろう。
「君、大丈夫だったかい? ダメージは受けてない? これをあげるよ」
男は緑の液体が入っている小さいガラス瓶を彼女に渡してきた。おそらくポーションだろう。
「い、いえ。僕はダメージを受けてないので……」
「いいから、取っといてもいいんだよ!」
そう言ってさわやかな笑顔を向けてくる。
「そんなことより、階層ボスを倒すチームを組んでいてね。一緒に階層ボスのいる部屋に入ってボスを倒すと全員が次の階層に行けるんだ。どうだい? 君も一緒に来ないかい」
階層ボスと言う言葉を聞いてふむと唸る。
彼女のこれまでの苦労は階層ボスを倒したいと思っていたためだ。それに次の階層に行かないとスライム以外に対して強くならなければならない。友人の種族がスライムである可能性は限りなく低いのだ。
良すぎる条件に少し疑心暗鬼になったものの、今この提案を飲まなければ、ボスを倒せず今後一生二階層にすらいけなくなってしまう。それだけは絶対に避けなけれなならない。
彼女の軍勢を倒したことを『そんなこと』と言いくるめられてしまったが仕方ない。
「一瞬だけですよ」
カリナは彼の提案を飲むことにしたのだった。




