職業【遊び人】新たな武器を鞘に収める
ゲームにログインすると、突然レッカに呼ばれた。
なんだろうと第二階層でのいつもの狩り場へと向かうと、そこではレッカが手を振って待っていた。
「お、お疲れ!!」
「レッカ、お疲れ様。どうしたの」
「ふふん! 実はねー……」
そう言ってレッカは背中から一本の刀を取り出した。
鞘に収まっている刀は刀身が長く、一メートルより少し短いくらい。
鞘は黒っぽく、柄の部分には紺の長い紐が巻かれていた。
「それって?」
「ついにできたよ!! カリナの武器!!」
「ほんとに! 待ってました!!」
レッカは刀をそのまま手渡した。
カリナは受け取ると、ゆっくりと引き抜く。刀と鞘がこすれる音がして罪悪感が湧いた。
刀は見た目以上に長く、腕を精一杯伸ばしても抜ききれないため、鞘を少し引いて抜く。
レッカが鞘を持ってくれた、刀をじっくりと眺める。
「お、おぉ……」
「太刀をイメージして作ってみたよ」
カリナは【鑑定】を使って見る。
刃の部分にはグリフォンのレア素材と鋼が使われていて、簡単には壊れない。
柄の部分は緑の布が巻かれていた。この布には草色アゲハの『翠光翅』が使われており、刀が軽く感じた。
「ありがとう、レッカ。今考えると無茶な要望をしたね」
「ううん、そんなことないよ! 私がね、カリナがもっと扱いやすい武器を作ろうと考えちゃって……結局イベント戦前に渡すことになっちゃったね」
「僕の為に尽力してくれたんだね、すごく嬉しいよ」
初めて持つのに、自然と手に馴染んだ。
カリナは素振りを何度か行う。始めは緊張してしまい体が固くなっていたが、これまでの剣での動きを体で再現する。
「その刀には『使用中のスキルの数だけ攻撃力と魔法攻撃力上昇』の効果を乗せたよ。これがなかなか珍しい効果でね、苦労したんだよ」
「苦労? なにをしたの?」
「お、それ聞いちゃう? 長くなっちゃうよ?」
「生産職に憧れてるんだ」
「じゃあ聞かなくちゃね!」
レッカが言うには、武器につける効果は属性の足し算だ。
例えば『トレーシングダガー』についている武器複製効果は、彼女の『複製』属性のスキルを足した効果である。
他にも『スライムの剣』についているスライムへの特攻作用は『スライム特攻』のスキルが必要だ。
今回の刀につけるべき効果は三つの効果を足したそうだ。
「まず『スキルの数だけ攻撃力と魔法攻撃力が上がるスキル』が必要だけど探しても無いから、『スライムの剣』についてる『スライムへの条件』と『一定の条件下で攻撃力と魔法攻撃力上昇』を分けるでしょ」
「うん、待って? もう分かんない」
「『スキルの数を数えるスキル』と『一定の条件下で攻撃力と魔法攻撃力上昇』を足せば上手くいくと考えたの。カリナの『七転び八起き』を参考に『数える』属性を探して、スキルショップでスキルを集めて、それぞれの効果の除いた『スキル』の属性を『数える』と足して、『スキルを数える』属性を作って足したんだ!」
「???」
カリナの頭は疑問符で溢れていた。
というよりも、これは知らないカードゲームの説明を聞いている時と同じだ。専門用語が多すぎてそもそも理解できない。
「とにかく生産には『属性』が必要なんだね……?」
「そうそう!! よく分かってるじゃん!」
「いや、全然だよ……」
レッカの動画を見たり、自分で鑑定を繰り返したりして詳しくなれたと自負していたが、とんだ勘違いのようだ。
いざ本職の錬金術師を前にすると、なにを言っているのかまるで分からない。
そんなカリナをおいて彼女はこの武器に掛けた情熱と思い出を楽しそうに語っていた。
カリナはレッカのこの表情が好きだ。これほどまでに熱を込めて作ってくれたことに感謝の気持ちが込み上げて止まない。
「それで、この子の名前は決めてあるの?」
「決めてあるよ、でもカリナが名付けたければそれにするけど……」
「いや、レッカが決めた名前がいいよ」
鞘を受け取りしまう。
レッカは柄の部分を見つめて寂しそうにしていた。
「『翠月刀』だよ、大事にしてね」
「もちろん」
翠月刀を腰にくくりつける。
剣をレッカに返した。今となってはこの剣も色々と感慨深いモノがある。
レッカの元に行けば、しっかりと再利用してもらえる。だから安心して眠ってほしい。そう心の中で唱えた。
「次は装備を揃えなきゃだね」
「え? この鎧じゃ駄目かな……?」
「流石にこれ以上の階層でスライムは出ないでしょ? それにアント以外みんな防具が整ってないね」
確かにフラムもレッカも防具屋で安価で売っている防具を装備していた。防御力はあるが、翠月刀で切れば簡単に真っ二つになりそうな装甲だ。
自分の鎧を見てみると、軽い金属でできたスライムの鎧には、すでに数多の傷が付いていた。
「どうしよう、レッカはどうするの?」
「うーん、せっかくなら作ってあげたいけど、イベントまで時間ないよね」
「例えば、ダンジョンを探して、武器獲得を目指すとか?」
「おぉ、それいいね! アントならばなにか知ってるでしょ」
そう言うとレッカは画面を操作しだした、メッセージを送っていた。
こうしてレッカとカリナは装備準備に本腰を入れ始めるのだった。




