職業【先導者】双斧を握る、敵を穿つ
フラムは思い出す。
それは作戦決行前、レッカとアントがスキルの性能を試していた。
「なぁ、カリナ」
「ん? どうしたの?」
「私は今、悩んでいる」
「……え?」
口を開けて、驚いた表情のまま固まったカリナを無視して話を続ける。
「あんたと一緒に地下で戦っただろう」
「そ、そうだね。一緒に武器を探しに行ったんだよね」
フラムの腰に携えられた手斧は、新たなものに変わっていた。
それは『屍の双斧』といい黒鉄で作られた重厚な手斧であった。
「あの時、私はあんたに追い抜かれたと感じた」
「僕が? フラムを?」
「あぁ、赤い鳥の羽根で突破してみせただろ? あんな戦い方を見せられたから、私は自信を失ったんだ」
「えっと、ごめん?」
「違う」
先を越されることはこれまでにも何度もあった。どれだけ考えてもなぜカリナのほうが上回るのかが分からない。
同じことをしているにも関わらず、差が生まれる理由が分かっていない。
それが許せなかった。才能の違いなのかもしれない、けれどもそれだけで埋まるような差ではない。
「どうしてそんなに強い?」
「うーん、それってどうしようもないと思うんだけどな……」
「どういうことだ、私にそこで見てろというのか」
「違う違う! フラムはどうして僕の土俵で戦おうとするのさ」
「……は?」
「フラムにはフラムの土俵があるでしょ? そこで戦えば僕だって負けるよ!」
そう言ってカリナは目をバツにした。
フラムはカリナがなにを行っているのか分からなかった。
それを察した彼女が続けて話す。
「フラムはパズルとかテストで僕と戦おうとしてるでしょ? それは僕の十八番なんだよ」
「あんたにも苦手な物があるのか」
「当たり前でしょ! ほら、僕字が汚いでしょ、他にも運動も苦手だし……ほら、翼だって全く動かないんだから!!」
草色アゲハの翼をだすと『ほら、見て! 動いていないでしょ!』と謎の主張をする。
カリナは自信に満ちた声色で話し出す。
「フラムには『統御生多相』と『始原同一化』、後は『魔覇転臨』も貸すよ!」
「え、だ、駄目だ? カリナの強みな無くなっちまう!」
「別にいいよ、アントと戦ってて僕にはこのスキルは合わないって気がついたし……それにフラムのほうが使いこなせると思うよ!」
「そうか……」
「だから自信つけてよ! もう自信を失ったなんて言わせないからね」
そう言ってウインクをする。
彼女は天才であり、そして心の熱いやつだ。フラムはそれを知っていたがために、直接悩んでいることを告げた。そしてそれは正しかった。
フラムの目の前に群がるプレイヤー。数の暴力は意味をなさないのを、彼らは知らなかった。
「道を開けろ!! 私は魔王だ!!!」
スキル取得
【魔覇君臨】
フラムは獲得したスキルを見て驚いた。すぐさま発動する。
黒いモヤが現れたと共に現れるのは魔物の数々。全三十五体が一斉に召喚された。
戦場がどよめく。それもそのはず、全てのモンスターが意思を持ったようにプレイヤーを襲い始めた。
カリナはモンスターの討伐に夢中になっているプレイヤーへと攻撃を仕掛けていく。
フラムは飛翔すると、ニーナのそばまで近寄った。
「逃げたんじゃないのか?」
「残念、あんたを倒す決心がついたんだ」
フラムは糸を巻き付けるように伸ばすが、当然剣で切られる。
その勢いのままニーナは剣を振る。剣は胴へめり込み、斬撃ダメージを与えたかと思われた。
フラムの体がどんどんと溶けていた。切られたはずの肉が、瞬時に塞がっていく。
剣がすり抜ける、フラムは避ける動作をせずに攻撃を無視した。ニーナの表情が曇る。フラムはすでに攻撃態勢に入っていた。
「『大斧割裂斬』!」
重い打撃がニーナの胴に入る。紙一重で体を守るがフラムは双斧である。
ニーナの体が吹き飛ぶと同時に、フラムは翼を広げて接近する。
地面へと叩きつけるように斧を振り下ろした。
「『重烈打震撃』!!」
直で攻撃を受けニーナはすでに満身創痍である。
魔導書を取り出す隙さえあれば、ニーナはまだ攻撃が出来る。『神契り』を使う猶予はなかったため、覚えている魔法の中で一番強いものを放つ。
「『大風魔撃』!」
フラムは暴風を直で受けた。
だが、ニーナとの距離は離れない。
「……!?」
ニーナは気がついた、自分とフラムを結ぶ蜘蛛の糸があることを。
そしてまだ彼女らには使っていないスキルが残っていたことを。
「【窮地適応】……それを待ってたぜぇ!!」
ニーナは『紙一重』を発動させたが、彼は諦めた。
悪魔のような笑みを浮かべたフラムの顔を見て、凍りつく。
(なんだこの魔族、イカれている……!!)
「『重双斧割裂斬』!!!」
全身が震えて、体中のエネルギーが斧へと伝わるのを感じた。
音が一瞬、消えた。
地面が割れて、地震が起きる。空間が引っ張られて、ニーナを強く地中へと押しつぶす。
ニーナは気がついたときには、体力が尽きていた。最後に見えたのは、フラムの不気味な笑みだ。
砂埃が立ち込め、爆音を轟かせて、辺りのプレイヤーは注視する。
そこに立っていたのは静かに斧を握った魔人。
魔人は他のプレイヤーを睨みつけ、手斧を振るった。
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